
「失敗の技術」マルコム・グラッドウエル・勝間和代訳(講談社)
グラッドウエルの「天才!」も興味深く読んだので、期待値が大きかった。
特に第12章「失敗の技術」を読んだ。
サブタイトルは「なぜある人は緊張し、別の人はパニックになるのか?」
「顕在学習」と「潜在学習」というワードが出てくるが、これが、なかなか難しい。
◆顕在学習・・・意識的に注意を払うことで身につける学習(パターンを教えられることで、最初は慎重だが、パターンを覚えて早くできるようになる)。
◆潜在学習・・・意識的に注意を払わずに身につける学習(教わらなくても、知らないうちにパターンを学び、早くできるようになる)
最初に何かやり方を教わったときは、慎重に繰り返し習熟する「顕在学習」。
しかし、うまくできるようになると、いちいち考えなくてすむ「潜在学習」に移行する。
ということは、潜在学習は「自動化」のことかな?
◆人は何らかのストレスを受けると、顕在的なシステムが潜在的なシステムに取って代わることがある。それが”緊張して固くなる”ということなのだ。
(勝利を意識したテニスプレーヤーの)ノボトナがとつぜん崩れたのは、自分のショットを意識しはじめたからだ。
だからノボトナはいつもの滑らかな動きや自分のリズムを忘れた。(中略)まるで別人・・ゆっくりと慎重に考えながらプレイするビギナーのようだった。
が、ある意味ではビギナーに戻っていたとも言える。グラフとの勝負でノボトナが頼っていたのは、子ども時代、テニスを習いはじめたころに使っていた学習システムだったのである。
・・・このラストの「習いはじめたころに使っていた学習システム」とは、「顕在学習」のことなのだろうと理解できる。
◆いっぽう、パニックは緊張とはまったく事情が異なる。
◆パニックは、心理学者の言う知覚の縮小をもたらす。
◆人間は緊張すると考えすぎ、パニックを起こすと思考が停止する。緊張で固くなると本能を失い、パニックに陥ると本能に戻る。
・・・緊張とパニックは反応のベクトルがまったく違うようだ。
したがって、「緊張してパニックになった」という表現はおかしいということになる。
ただし、次の箇所は理解ができなかった。
◆パニックが”型にはまった失敗” であれば、緊張で固くなるのは”逆説的な失敗”だ。
ここを飛ばして、続きを読む。
スタンフォード大学クロード・ステイールが行った実験から導いた「ステレオタイプ脅威」についてだ。
◆学生のグループに標準テストを受けさせたのだが、その際、「このテストは知能を測定するものだ」と告げると、白人学生は黒人学生よりもずっとテストの成績が良かった。
ところが、「知能交差とは関係ない、単なる調査用の素材だ」として同じテストを受けさせると、両者の成績にほとんど差が出なかったのである。
ステイールたちは、そのような違いの原因を”ステレオタイプ脅威”と呼んだ。黒人の学生は、自分たちのグループに関するステレオタイプ脅威に直面する状況下に置かれると、プレッシャーを感じてテストの成績が落ちる(この場合、「自分たちは白人よりも知能が劣る」という画一的な考えや思い込みが黒人学生たちに浸透している状態にあり、その思い込みが脅威となって黒人学生のテストに対する緊張を招いてしまう)。
ステイールは、あるグループが否定的に捉えられる状況で、このステレオタイプ脅威を発見した。優秀な女性のグループに数学のテストを与え、「数学の能力を測定する」と伝えると、同等の能力を持った男性よりもずっと成績が劣る。だが「単なる調査」と告げて同じテストを与えると、男性と成績は変わらなかった。
(中略)もちろん、黒人は白人ほど成績が良くない、あるいは白人は黒人ほど高く飛べないというのは珍しい話ではない。問題は、プレッシャーを受けたがために生じたこの種の失敗を、私たちが一様にパニックと判断してきたことだ。
実力が発揮できないアスリートや学生がいたら、私たちは普通、なんと言って励ますだろうか?おそらく新米のパイロットやスキューバダイバーを励ますのと同じように励ましてしまう。
つまり「もっと努力し、もっと本気を出し、いっそう真剣にテストに取り組め」といった具合にだ。
だが、ステイールは言う。「黒人学生や女子学生がステレオタイプ脅威を受けた様子を見れば、私たちは、彼らが成績の悪かった原因を『パニック』のせいだ、とは思わないだろう」と。
「彼らに共通して見られるのは、慎重さ、そして、うまくやってやろうという気持ちなんです。
実際に学生たちに話を聞くと、ステレオタイプ脅威を感じているとき、彼らがこんなふうに自分に言い聞かせていることがわかる。『よし、慎重にいこう。しくじったりするもんか』と。
そして気持ちを落ち着けてからテストに臨みます。だけど、それでは標準テストではいい成績が取れない。慎重にやればやるほど、直感から離れ、素早い処理ができなくなる。自分はうまくやれたと思うし、うまくやろうとする。だけど、そうはいかないんです。」
彼らは、緊張によって固くなったのであって、パニックではない。(中略)
ノボーナが失敗したのは、その行為に秀でていたからだ。「自分がいかにうまくやれるか」を気にする人間だけが、プレッシャーやステレオタイプ脅威を感じる。失敗を防ぐための一般的な処方箋ーーもっと努力し、いっそう真剣にテストに取り組めーーはノボトナの問題をますます悪化させるだけだ。
(中略)我々は、成績の悪さが、ときには生来の能力ではなく、「観客が見ているから」という状態を反映したものであることを知っておく必要がある。」
・・・「ステレオタイプ脅威」と「緊張」「パニック」の関連が書かれている。
だが、心底理解できたとが言えない。
じっくり読んでみたし、こうして文字入力しているのだが、かなり難解なのだ。
というのも、そもそも緊張して失敗したテニスプレーヤーと、ステレオタイプ脅威で実力が発揮できなかった被験者たちとを同一視できないからだ(実際の書籍には、セスナで墜落事故を起こしたケネデイまで出てくる)。
あえて、自分勝手に再構成してみる。
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緊張して、あるいは極度のプレッシャーを受けて普段の実力を発揮できない人は、実力が足りないわけでも努力が足りないわけでもない。
「ステレオタイプ脅威」によって、普段の実力をが発揮できない人も、実力や努力が足りないわけではない。
ただ、緊張して「慎重にやろう」「いい結果を残そう」と言い聞かすことで、ふだんなら、体が勝手に動き出す「潜在学習レベル」でできることが、「顕在学習レベル」になってしまったのだ。
顕在学習レベルは、意識を働かせる分だけ処理に時間がかかる。スポーツの大会やテストなど瞬時の判断が求められる場面では有効に機能しないのだ。
緊張によって「顕在学習レベル」になってしまった状態は、パニックになって頭が真っ白になった「思考停止」状態とは別である。
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自信はないが、自分の解釈でよしとしよう!
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