知的創造の瞬間
NHK教育で、たまたま「浦沢直樹の漫勉」を観て感激した。実際にプロ作家が漫画を書き込む場面を丁寧に紹介していたからだ。
今回、自分が視聴した山下和美氏のペン先のドアップが、WEBサイトでも観ることができる。
「NHKさん、アップしてくれてどうもありがとう」と言いたいくらいだ。
http://www.nhk.or.jp/manben/yamashita/
◆密着撮影することによってとらえた 「漫画が生まれる瞬間」◆
まさに、この言葉がぴったり!
ペン先の音や作家の呼吸音だけが聞こえてくる動画。
浦沢氏が「これがお宝映像ですね」というようなコメントをしていた。
漫画に興味のある子どもにも衝撃的だろう。
しかも、毎回のゲストの動画がある。どれもすごい。実に贅沢なサイトだ。
無地の用紙に、何度も鉛筆線を重ね、その中から確定する線を決めていく。
せっかく描いたのに、ごっそり消して書き直す。
たくさんの下書き線にかぶせるようにペンを入れていく。
極めてアナログな知的生産の瞬間だ。
「書いては消す。書いては消す」
原稿用紙に向かって文字を書き連ねる作家もこんな感じだろうか。
今回の山下氏の特集で圧巻だったのは、サイト中央の「壮絶な挑戦『悪夢感』を出したい」という動画。
せっかくペンで仕上げたのに、イメージが合わなかったので、和紙で墨に描くことにする。墨で表現するそのテクニックにびっくり。しかも、番組では、この墨絵の出来がよかったので、コマ1枚で1ページにすることに変更し、さんざん苦労したその前の2コマを没にするシーンがあった。
資料画像を参考にするかどうかの会話もあった(番組とサイトでは、言葉が違う)。
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◆人の動きがかけなくてうまく(資料写真を)見ることもあるんですけれど、想像して描くことが多いですね。(山下)
スポーツのシーンなんかでも、写真をそのまま描くとわりとこじんまりしちゃう。(浦沢)
やっぱり、一回、その人の絵にしてみる。(山下)
写実になり過ぎると、その漫画家さんの絵じゃなくてもいいってなっちゃうんですよね。(浦沢)
◆今、山下さんは、何も見ないで描いていますけど、最近の若い漫画家さんたちだったら、猪の資料をばっちり見ながらだと思う。
この、見ないですいすいと行く感じっていうのは、皆さん刺激になると思う。
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・・・「写真をそのまま描くとこじんまりしてしまう」という指摘に納得。我々が文章をコピペなどしたら、当然「自分の文章じゃなくてもいいってなっちゃう」ということになる。肝に銘じたい。
ところで、漫画と言えば、昨年、同じくNHK教育の「100分de名著 火の鳥編」を少し見た。
普段、漫画は何気なく読み進めてしまうが、テレビがコマ割りごとに丁寧に映し出す場面で衝撃を受けた。
例えば、次のサイトの開始11分あたりからを、ぜひ見てほしい。
https://www.youtube.com/watch?v=NsTxJdEGEXk
ささいな1コマ込められた作者の深い思いを、これまで意識してこなかったことが恥ずかしいくらいだった。
漫画の奥深さ、表現力のすごさを実感した。これぞ日本の誇りだな。そして人工知能の及ばない人間の想像力・創造力のすごさだな。
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