朝読書をどう指導するか
黒柳徹子の「小さいときから考えてきたこと」(新潮文庫)を読んだ。
最近の自分の読書は教育書・ビジネス書が多かったので、久しぶりに軽めの読書だったが、自分の知らない世界に触れるという意味では有意義だった。
過日、中学校の国語の先生たちと会う機会があり、朝読書の話題になった。
そんな経緯もあり、このようなエッセイをたくさん読ませることを勧めたいと思った。
それは朝読書という短時間でそこそこキリがつかないようでは、授業中に続きが読みたくなって困るからでもある。
星新一のショートショートは今の中学生にも人気があるとのことだったが、まずはエッセイや短編で読書の基礎体力を付けさせたい。
最近は重松清も恩田陸も読んでいないけど、「これではいかん」という気になった。児童生徒に読ませたい作品をしっかり把握できるように読書の方向を調整したい。
黒柳徹子の「小さいときから~」は、ユニセフ親善大使として訪れた紛争地域での子どもたちの様子と自身の戦争中の体験とが重なる部分がある。
中学生にも読ませたいと思う章が多かった。
特に「黄色い花束」は、中学校定番の「字のないはがき」や「大人になれなかった弟たちに」よりも、生徒の心に響くかなとも思った。太平洋戦争だけではあまりに遠い過去だが、現在の紛争地域の話題があるので、戦争や紛争にリアリティがあるのだ。
少しだけ引用する。
◆私が子どものとき、何も知らないで、日の丸の旗を振って送り出した兵隊さんは帰ってこなかった。自由が丘の駅に行って、出征する兵隊さんに旗をふると、スルメの足を焼いたのを一本もらえた。私は、それが欲しくて、時間があると、行っては旗を振った。スルメなんて、あの頃、めったに食べられるものではなかった。知らなかったとはいえ、私は、あのとき、スルメが欲しくて送り出した兵隊さん達が帰って来なかったことを、今も申しわけなく、私の心の傷になっている。あどけなく手を振っている子ども達(竹田注 コソボの子ども達)を裏切っては、いけないのだと、私は子ども達が手を振るのを見るたびに思う。あの女の子から貰った黄色い花は、ノートに挟んで押し花にした、コソボの記念に。
・・・心の傷は、小さいときに生ずるものもあるが、大人になってから「知らなかったとはいえ、申し訳ないことをした」と生ずるものもある。
大人の入り口にあたる中学生にも、そんな「心の傷」の存在に共感してもらいたい。
「知らなくてもよかったことまで、知ってしまうのが大人なのだ」と言えば、ちょっと格好良すぎるかな。
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