台形の求め方は、既習の知識を総動員する。
今となっては古い話題だが、現行学習指導要領の改訂にあたっては、台形の求積の公式を教えないことが話題になった。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/cs/1321018.htm
〈新学習指導要領をめぐる誤解〉
Q5 新学習指導要領では、台形の面積を求める学習はしなくなるというのは本当でしょうか。
A 新しい学習指導要領においては、全員が共通に学習する内容としては、台形の面積の公式は示していません。
これは、「正方形、長方形、三角形、平行四辺形の面積の求め方」を身に付ければ、それ以外の台形のような形の面積も、これらの面積の求め方を活用して自分で工夫して求めることができるからです。
新しい学習指導要領は、まさにこうした自ら考える力を身に付けさせようとするものであり、単に公式を暗記するのはやめようということなのです。
公式を単にあてはめて計算するだけの学習はなくなりますが、三角形の面積などを組み合わせて自分で工夫して台形の面積の求め方を考えてみようとする学習は行われます。
・・・ただし、今の啓林館の5年の教科書には、公式も明示してあるし、面積も求め方も親切に例示してあって、自分たちで考えさせようと言う意欲を削いでいる。文科省の意図に反したような教科書になっている。
ところで、上記の文科省の言葉(台形は既習の知識を使って考えさせようというスタンス)は、向山氏の言葉と直結している。
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子ども達は、自分で考え出した満足感と、そして、自分でもできるという自信と、原理まで踏み込んだ理解とを得るのである。公式をまる暗記だけさせる授業はプロの授業ではない。それは、時間もかかり、満足感も充実感もなく、〈優等生〉や〈知っている者〉だけに思い上がりを残してしまうのである。
『斉藤喜博を追って』P37
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かつて、自分の力で台形を求めさせる授業は、「訓令」型の典型であるとまとめたことがある。
今の若い先生方は、「号令」型 「命令」型 「訓令」型と言っても分からないかもしれないな・・。
◆「~しなさい」だけの授業が「号令型」。
・・・「ごみを拾いなさい。」
◆趣意を説明し、行動させる授業が「命令」型。
・・・「教室をきれいにします。ごみを拾いなさい。」
◆趣意を説明し、やり方を任せる授業が「訓令」型。
・・・「教室をきれいにしよう。自分でやりたいことをやってごらん。」
多様な解法を考えさせる授業は、
拡散的思考を促すからすごいともいえるし、
解法を自由に思考させる「訓令」型だからすごいともいえる。
だから、台形の求め方を五通り以上で~という向山実践にすごく感激し、台形の求め方以外でも、算数以外でも、たくさんの答えを列挙させるような授業、たくさんの方法を考えさせる授業にあこがれてきた。
若い先生には、ちょっと高望みでハードルが高いかもしれない。
でも、1つの正解を求め、教え込むだけの授業では、子どもが退屈する。
「授業が面白い」と実感するには、多様な答え・多様な解法を列挙させる授業は外せない。
多様な発想を求める授業は、優等生以外が活躍する逆転現象にもつながっていく。思いあがった優等性を謙虚にさせるためにも大切なのである。
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