国語の「抜き出し問題」
市の夏期研修で、中学校の教科書教材である『盆土産』の模擬授業が行われた。
少年がどんな気持ちで「えびフライ」とつぶやいているのか読みとる課題で、文章中から心境が分かる箇所を抜き出す作業が行われた。
読解力が「抜き出す力」だけなら、鍛えるのは容易だし、正解に迷うことも少ない。「国語の答えは文中にあるから安心せよ」と言い切れる。
ただ、実際は「文中にある言葉」だけでは、問いに対応できない。今回の模擬授業で言うと「少年のつぶやきは、期待と不安の2つの気持ちが入り混じっている」とまとめる場合だ。
大人なら「期待」と「不安」というキーワードが自然に出てくるが、どちらも文中にないワードだ。どうして「期待」「不安」というワードが出てきたのかと聞かれても答えづらい。
文章中に出てこない「期待と不安」を、当然の正解として提示してしまうと、
「これだから、国語は分からない」
「文章中に答えはあるって言うけど、おかしいじゃん」
ということになる。国語嫌いの要因の1つは「なぜそのワードが出てくるのか分からない」ところにある。受験国語のテクニックの1つに、よく出る抽象語(主題語)を覚え込んでしまうことがある。
主人公の心境に合うワードを選択肢から選べという設問なら「期待」「不安」に近い概念を選べばいい。
適切な二文字熟語を2つ書けと言われたら、「二文字熟語」というヒントに合わせて捻出すればいい。
数学の図形問題でパッと補助線が浮かんでくるのが鍛錬の成果であるように、国語の読解問題で、文中にない適切なワードがパッと浮かんでくるのが鍛錬の成果だ(あえて才能とは言わない)。
さて、井関義久氏や鶴田清司氏は、読解力を、「解読」と「解釈」に分けた(と記憶している)。
◆客観的に答えが確定できる読みが「解読」
◆主観的な見解を伴う読みが「解釈」
この定義に沿って考えると、
◆つぶやく際の心境を文中の言葉から抜き出すのが「解読」
◆文中にない「期待と不安」という言葉で括るのが「解釈」
にあたる。
解釈問題は主観性が強いので、選択肢で出題される場合が多い。
選択肢なら何とかなるから国語嫌いの子も納得させられるだろう。選択肢を吟味する中で、端的なキーワードの感覚が磨かれると言ってもよい。
まずは、抜き出し問題に徹底して慣れること。解釈問題を捨てても、解読問題と選択問題だけで、かなりの点数がとれる。
ただし、そもそも授業者が子どもに「解読」を求めているか、「解釈」を求めているか、その自覚はもって欲しい。
※ちなみに「盆土産」の今回の模擬授業場面は、TOSSランドにも実践があった。
http://www.tos-land.net/teaching_plan/contents/28197
・・・村上氏も模範解答例の中で「これは、土産の中身が正体不明なため、期待と不安の入り交じった気持ちであることを表している」と書いている。
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