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November 23, 2017

仮説化(条件文)のロジック

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 向山洋一氏の1980年の工業地帯の授業では「仮説化」が問題提起された。

◆「〜であれば工業地帯である。(になりやすい)。」
◆「工業地帯であれば、〜である。(見られる。)」という説をつくることができる。

 ただし、思い付きを並べるだけでは意味がないので、次の条件がつけ加えている。
①自分で調べて証明できると考えられるもの。
②本などを見てはならない。

・・・社会科の授業から遠ざかって忘れていたが、先週の向社セミナーで話題になって思い出した。

 この「仮説化(仮説検証)」の授業は、

 【ある条件】ならば 【主張Aである】という仮説に対して、その【根拠】を自分で探す形になっている。

 文科省発行の「言語活動の充実に関する指導事例集【小学校版】」。 
 第3章の「言語活動を充実させる指導と事例」の(1)に「児童の発達の段階に応じた指導の充実」の記述がある。
 これは非常に分かりやすい。 「つなぎ言葉」に関連する項目のみ抜粋すると以下のようになる。

【低学年】
○判断と理由の関係を明確にして表現する。
○時系列(例えば,まず,次に,そして,など)で表現できる。

【中学年】
○判断と根拠,結果と原因の関係を明確にして表現する。
○条件文( 例えば,「もし,○○ならば,△△である)で表現する。

【高学年】
○演繹法や帰納法などの論理を用いて表現する。
○規則性やきまりなどを用いて表現する。

 何気なく示されているが、中学年で「判断と根拠・結果と原因」「条件文(もし,○○ならば,△△である)」を指導せよとされている。
 しかし、因果関係や条件式の文を駆使して自説を主張させる指導は、中学年どころか中学生であってもなかなかできていない。
 自分の仮説を立証するための根拠を自分でさせる向山実践は、極めて高度でダイナミックな活動で、子どもの知性を鍛え上げていることが分かる。  

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語句と定義の往復

Teigi


 先週、名古屋で開催された産業教育シンポジウムと向山型社会セミナー。午前・午後の学びで充実した1日だった。
 特に、今の自分の関心事が「ロジカル・ロジック」であったので、自分の問題意識に照らして再認識することも多かった。

〇外国を相手に、ものの売り買いをすることを貿易と言います。
◆「外国を相手に、ものの売り買いをすること」を何と言いますか?
→「貿易」と言います。
◆では逆に「貿易」とは何のことですか?
→「外国を相手に、ものの売り買いをすること」です。

・・そうだった、そうだった。
 TOSSでは、いろんな教科の授業で、「言葉」→「意味」・「意味」→「言葉」と往復で言わせることが定番になっている。
 最初に、この言葉の定義の往復活動を知った時は感激したのだった。
 片側だけなら、文をそのまま読めば分かる。ここを逆から言わせるところが「あと一歩の詰め」で、この往復があるのとないのでは、キーワードの意味理解が全然違う。
 しかも、この思考作業を授業で繰り返しておけば、別の定義に出会ったときに、自分で往復活動をさせて「ひとり学び」ができるのだ。

 1年の国語の「じどう車くらべ(光村)」には、次の記載箇所がある。
================
①クレーン車はおもいものをつり上げるしごとをしています。
②そのため、じょうぶなうでがのびたり、うごいたりするようにつくってあります。
③車たいがかたむかないように、しっかりしたあしがついています。

================

①の文は、

【クレーン車】→【おもいものをつり上げるしごと】

なので、2方向の問いが成り立つ。

(A)クレーン車はどんなしごとをしていますか?
→おもいものをつり上げるしごとをしています。

(B)おもいものをつり上げるしごとをするクルマは何ですか?
→クレーン車です。

③の文は、

【車たいがかたむかない】←【しっかりしたあしがついている】

と逆向きの構造ではあるが、これも2方向の問いが成り立つ。

(A)車たいがかたむかないように、どんなつくりになっていますか?
→しっかりしたあしがついています。

(B)しっかりしたあしがついているのは、何のためですか?
→車たいがかたむかないようにするためです。

 ①②はセットにして、構造を成している。
クレーン車はおもいものをつり上げるしごとをしている】
←【じょうぶなうでがのびたり、うごいたりするようにつくってある】

よって、これも2方向の問いが成り立つ。

(A)クレーン車はおもいものをつり上げるしごとをするために、どんなつくりになっていますか?
→じょうぶなうでがのびたり、うごいたりするようにつくってあります。

(B)じょうぶなうでがのびたり、うごいたりするようにつくってあるのは、何のためですか?
→おもいものをつり上げるしごとをするためです。

・・・このように双方向からの問いかけると、文末表現を原文から少し変える必要が出てくる。
その改変も含めて、言語感覚のトレーニング・論理的表現のトレーニングになるのだという思いを強くした。

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November 22, 2017

「だから何?」と「それはなぜ?」

Kiso


 先週のサークル例会で「正しい言い回し」といった模擬授業の練習をした。
 今週は、PTA約10人と給食試食を行い、最後に少し時間が余ったので、例会の復習代わりにお話をさせてもらった。

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 皆さんのお子さんは、言葉が足りないということはありませんか?
 うちの息子は大学生ですが、テレビを見ながら、よく「水」と言います。すると母親は「そうか、水が欲しいんだな」と水を用意してしまいます。世間では旦那さんが「飯・フロ・寝る」しか言わないなんて話題になりますね。これ、家族なら伝わりますが、社会では通じません。
 
 給食の時に箸を忘れた子は、職員室にスプーンを借りに来ます。
「先生、箸を忘れました」っていう子には、 「だから何ですか?」と聞きます。
 「スプーンを貸してください」と言う子には、 「なぜですか?」と聞きます。

(1) 名前を言って
(2) 「箸を忘れました」
(3) 「スプーンを貸してください」

 この3つがそろわないと言葉足らずで相手に伝わらないのです。
 これからは「伝え合う力」が求められます。
 ご家庭でも「水がほしいんだね」みたいに子どもの言葉足らずの部分を先どりするのではなく、ちゃんと自分の言葉で説明する訓練をしていただきたいです。
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November 15, 2017

論理的思考の基本構造

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論理的思考の基本的な構造図なるものを考えてみた。
とはいえ、オリジナルのわけはなく、いろんな文献を加味して、シンプルな構造を選んでみたに過ぎない。

(1)まず、全くの「論理的でない」パターンは、言葉で表さない子である。
この場合は、根拠も主張もない。

(2)次は、根拠と主張の片方しかない、言葉足らずの子である。
①根拠はあるが主張がない子・・「それで、どうしたいのか」が言えない子。
②主張はあるが根拠がない子・・「どうしてそう思ったのか」が言えない子。

(3)さらには、根拠と主張はあるのだが、筋が通らない子。
つまり、そもそもの前提条件が一般常識から逸脱している子。

そう考えると、以下の「フィンランドメソッド」の5つの力は、よくできている。


①「発想力」・・・「言いたいこと」を思いつかなければ、は始まらない。
②「論理力」・・・「言いたいこと」に筋が通っていなければ、誰にも通じない。
③「表現力」・・・「言いたいこと」は、言い方が悪ければ伝わらない。
④「批判的思考力」
・・・相手の言い分にも一理あることを認めるところからコミュニケーションが始まる。
⑤「コミュニケーション力」
・・・4つの力を駆使して困難な状況でも意思疎通を図る。


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