語句と定義の往復
先週、名古屋で開催された産業教育シンポジウムと向山型社会セミナー。午前・午後の学びで充実した1日だった。
特に、今の自分の関心事が「ロジカル・ロジック」であったので、自分の問題意識に照らして再認識することも多かった。
〇外国を相手に、ものの売り買いをすることを貿易と言います。
◆「外国を相手に、ものの売り買いをすること」を何と言いますか?
→「貿易」と言います。
◆では逆に「貿易」とは何のことですか?
→「外国を相手に、ものの売り買いをすること」です。
・・そうだった、そうだった。
TOSSでは、いろんな教科の授業で、「言葉」→「意味」・「意味」→「言葉」と往復で言わせることが定番になっている。
最初に、この言葉の定義の往復活動を知った時は感激したのだった。
片側だけなら、文をそのまま読めば分かる。ここを逆から言わせるところが「あと一歩の詰め」で、この往復があるのとないのでは、キーワードの意味理解が全然違う。
しかも、この思考作業を授業で繰り返しておけば、別の定義に出会ったときに、自分で往復活動をさせて「ひとり学び」ができるのだ。
1年の国語の「じどう車くらべ(光村)」には、次の記載箇所がある。
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①クレーン車はおもいものをつり上げるしごとをしています。
②そのため、じょうぶなうでがのびたり、うごいたりするようにつくってあります。
③車たいがかたむかないように、しっかりしたあしがついています。
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①の文は、
【クレーン車】→【おもいものをつり上げるしごと】
なので、2方向の問いが成り立つ。
(A)クレーン車はどんなしごとをしていますか?
→おもいものをつり上げるしごとをしています。
(B)おもいものをつり上げるしごとをするクルマは何ですか?
→クレーン車です。
③の文は、
【車たいがかたむかない】←【しっかりしたあしがついている】
と逆向きの構造ではあるが、これも2方向の問いが成り立つ。
(A)車たいがかたむかないように、どんなつくりになっていますか?
→しっかりしたあしがついています。
(B)しっかりしたあしがついているのは、何のためですか?
→車たいがかたむかないようにするためです。
①②はセットにして、構造を成している。
【クレーン車はおもいものをつり上げるしごとをしている】
←【じょうぶなうでがのびたり、うごいたりするようにつくってある】
よって、これも2方向の問いが成り立つ。
(A)クレーン車はおもいものをつり上げるしごとをするために、どんなつくりになっていますか?
→じょうぶなうでがのびたり、うごいたりするようにつくってあります。
(B)じょうぶなうでがのびたり、うごいたりするようにつくってあるのは、何のためですか?
→おもいものをつり上げるしごとをするためです。
・・・このように双方向からの問いかけると、文末表現を原文から少し変える必要が出てくる。
その改変も含めて、言語感覚のトレーニング・論理的表現のトレーニングになるのだという思いを強くした。
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