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January 01, 2018

推論の能力

 年末の特別支援教育の学習会で「LD」の中身について復習した。

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文部科学省の定義によると、学習障害とは、全般的な知的発達に遅れがないものの、
「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力のうちいずれかまたは複数のものの習得・使用に著しい困難を示す発達障害のこと。
医学的な分類では学習障害は主に

・読字障害(ディスレクシア)・・・読みの困難
・書字表出障害(ディスグラフィア)・・・書きの困難
・算数障害(ディスカリキュリア)・・・算数、推論の困難

の3つの種類に分けられる。
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 「算数障害」は計算だけでなく、物事を考え答えを導く推論の困難さも含んでいる。これまでも目にした箇所なのだが、問題意識に欠けていた。
 DSM-5における診断基準には次のように表記されている。

(6) 数学的推論の困難さ(例:定量的問題を解くために、数学的概念、数学的事実、または数学的方法を適用することが非常に困難である。

 「数学的推論」と「論理的推論」の違いもよく分かってはいないのだが、数学の時間に「証明問題」を行うのだから、全く違うというわけではないはずだ。
 というわけで、今後は「算数障害」の中の「数学的推論」の支援策も調べていこうと思う。

 さて、教育出版が出している「教育情報シリーズ」というファイルが前任校にあった。
かつてもブログで書き込んだことがあるのだが、そのNo121は「教師力アップへの道 文章題に強い子どもを育てる」という8ページの資料で、文章題の読み取りは国語の読解力とは別だと述べている。
 算数と国語の文章理解は別だという主張ではあるが、それでも参考になる点は多い。

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◆文章題の解決が思うように進められない子どもの原因を「国語の読解力がない」と、いとも簡単に断定する教師が少なくない。これは、ことの本質を曖昧にする判断である。算数・数学科の文章や文章題の表現ほど、美や感情の省略された単純で簡潔なものはない。
国語的な読解ではなく、文章題としての読み取り方を、下記のような事柄について発達段階に即して丁寧に指導していくことが重要である。
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・・・ 算数の文章問題の読み取りの力を、国語の力(論理的思考力)とは異質なものとして、「問題の理解」の指導過程について、次のような学習活動を提示している。
 以下の項目は、国語のテスト問題には必要な理解ではないかと思う。

①場面や情景の理解
 どのような場面かを捉えるように意識させる
②求答事項の確認
「何を聞いていますか?」「聞かれていることは何ですか?」
③既知事項の確認
「この問題から分かることは何ですか?」
④条件の理解(確認)
 文章の中に示された条件を見付けさせる。
「全部~するとしたら」「このままどうかするとしたら~」など。
⑤必要な既習事項の想起
 文章題は、そこに記述されている求答事項や既知事項、条件を明らかにしただけで解決できるとは限らない。(中略)問題文に記述されていない既習事項の活用しなければならない場合が多くなってくる。

・・・留意点として「②→③の順に行う」とある。
まず設問を確認せよという以下のアドバイスは受験国語でも大事なポイントだ。

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 多くの教師が②よりも③を先行して「この問題から分かることは何ですか?」としているが、これは大きな間違いである。
 このことは、一般的に考えて目的が分からないのに準備をすることができないことから容易に理解できる。
 求答事項を明らかにするために、この問題から分かることを取り出すのである。
 文章題の文中に、②③④などを記号化して指摘すると効果的である。 
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 ほかにも、常日ごろ気を付けたい指導事項の紹介があった(箇条書きで提示する)。

(1)文章題を分かっていることに言い換えてみる。
①文章題が複雑な構文で表現されているときは、簡単な構文に言い換えてみる。
②条件がいくつもある場合には、1つの場合、2つの場合と単純化してみる。
③小数や分数で表されているために分かりにくければ整数で表してみる。
④関係が見つけにくければ小さな数に置き換えてきまりを見つけやすくする。

(2)分かっていると仮定してみる。
解決の見通しが立てにくい場合や、演算決定ができない場合に、未知の部分を分かったものとして□やxなど記号や文字で表すと、解決の手がかりの得られることがある。

(3)演算決定するためには、次のような具体的な手立てを子どもにもたせる。
①キーワードに注目する。
②言葉の式や公式に当てはめる。
③数直線など図で問題の構造を捉える。
④数値を簡単にしてみる
⑤似た問題を思い出すなど。

・・・なお、以下の指摘は、数学がいかに「類推」思考を必要としているかがよく分かる。

①整数の四則計算のきまりは、小数や分数にも使えることを類推する。
②平行四辺形の求積は、長方形の求め方に帰着させると求められる。
台形は長方形・平行四辺形・三角形の求め方に帰着させると求められる。
③合同な三角形の描き方を類推すれば、拡大図や縮図の作図を考えることができる。
④複合図形の面積も、既習の長方形と正方形に分ければ解ける。
この発想を類推すれば、複合体積も直方体と立方体の組み合わせで考える。

 文章の読み取りには数学的思考が必要なのではという思いを強くした。

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