「イコールの力」=「言い換える力」=「paraphrase」
「日経アソシエ」5月号の齋藤孝氏の連載の見出しが刺激的だった。
「豊富な語彙と言い換える力が人を動かす武器になる」
◆いかに自分の意思を的確に伝え、なおかつ相手のモチベーションを高めるか。これを実現させるのが、豊富な語彙を駆使して言い換える力だ。
◆知っている言葉が少ないと、会話やニュースに対する読解力が落ちます。自分の意見や感情を的確に表現することもできません。
・・・語彙が大切なことは先にも書いたが、私はむしろ「言い換える力」に注目したい。これも先に書いた「イコール」とつながるからだ。
「言い換え」は2方向ある。
(1)簡潔に言い換える・抽象化する・要約する。
「かいつまんで言うと」「一言で言うと」「要するに」
(2)詳細に言い換える・具体化する・敷衍する。
「詳しく言うと」「分かりやすく言うと」「具体的に言うと」
「別の言い方をすると」
・・・「敷衍」は、あまりなじみのない言葉だが、辞書的には「趣旨をおし広げて説明すること。例などをあげて、くわしく説明すること。」である。
説明型のテスト問題には、「簡潔に言い換える」「詳細に言い換える」の双方向があり、この2つの表現の往復活動が、記述式の読解力(読解表現力)の基盤になっていると考えている。
しかし、「受験国語の神様」とも呼ばれた松本成二氏の『現代文の科学的研究 評論編』 (あずみの書房、1990年)に、「要約」と「敷衍」がセットであるように述べてあることに、ごく最近気づいた。
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文章法の原則(付7)
簡単な要約(summary)の原則
簡単な要約(summary)は、次の形が普通である。
主題(topic)+分析(anaiysis)
分析(anaiysis)は、敷衍(paraphrase)といっても同じであるが、詳しく説明すること。実例や比較や比喩が表れるのはその後の話である。
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英単語の理解が足りなくて、苦しい。
◆「主題」」+「分析」=「要約」
◆「分析」と「敷衍」は同義
という記述には驚いたが、
◆「分析・敷衍」と「実例・比喩」は別。
にも驚いた。
一般的な辞書の意味である「敷衍=例などをあげて、くわしく説明する」と一致しないからだ。
★ paraphrase
【自他動】
〔分かりやすく〕言い換える
・Let me paraphrase you. : 〔言い換えると〕つまりこういうことですね。
・Can you paraphrase that poem in normal spoken English? : その詩を普通の話し言葉の英語で言い換えてもらえますか。
【名】
1.〔語句などの易しい〕言い換え、置き換え
2.〔教育や研究用の原典の〕敷衍、解釈
3.《音楽》〔原曲の自由な〕改変、パラフレーズ
・・・ 「paraphrase」の概念は「詳細に言い換える・簡潔に言い換える」の両方を含んでいるということか。
「言い換える」を2つに分けた自分の規定が、勇み足だったということになる。
ただ「説明sなさい」と問いを発する場合、あるいは、「説明しなさい」という問いを読み取る場合には、それが、どっちの言い換えを求めているのかをしっかり把握すべきであろう。
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