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September 30, 2018

分析的な作文は、感情の高まりが必要

向山洋一氏の学級通信「すないぱあ」No16 1977年4月18日号に、跳び箱指導の作文がある。
 わずか4.5分の出来事を詳細に作文に表している。

◆先生が「今この飛び箱をとべなかった人、ここにならびなさい」とおっしゃいました。そうすると、下をむきながら、4人出てきてならびました。先生は4人を一回ずつ飛ばせました。4人は飛び箱の上にまたがってしまいました。先生はこんど、飛ぶ人のおしりをおしました。そうすると4人の人は飛べます。こんどは、飛び箱の上にすわって、とぶ形をしてぴょんとおりる事をくり返しました。またやることになりました。私は、目をぱっちりあけ、つばをゴクンとのみこんだ。「飛べた!!」心の中でさけんだ。他の2人も次々にとべました。その3人は、前出てきた時みたいに下をむかないで、もうちゃんと顔をあげ、どうどうと歩いています。私は、先生の方に顔をむけ、やっぱり先生の言ったとおりだなあと思いました。だけど1人とべなかったので、先生はその人を飛び箱にすわらせて飛ばせるのを2回ぐらいくり返しました。先生はうなずき、私はいいんだなと思ってその人を見つめました。「トン」ふみ台の音が強くひびきました。その人は飛べたのです。それもたった4~5分で飛ばせたのです。私はびっくりして、その人と、そして先生に拍手をしました。私は、先生がわたしたちをよい人間にしようとしているんだから、わたしもがんばらなくてはと心で思いました。


・・・始業式から10数日後に跳び箱を跳ばせることは理解できるが、始業式から10数日後にこれほどの描写の作文を何人も書かせることは想像をはるかに超えている。
  
 「すないぱあ」の子どもの作文が、文科省の資料「言語活動の充実 小学校版」の以下の部分とつながった。

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◆なお,論理と情緒とを対立する問題としてとらえられることがあるが,必ずしも適当ではない。
物事を直観的にとらえるのではなく,分析的にとらえることも情緒を豊かにしていく上で有効である。
例えば,単に「わぁー,すごい」という言葉だけで感情表現するのではなく,「何が」「どのように」「すばらしい」のかについて,具体的な表現を用いて相互に伝え合うことにより,より細やかな感性・情緒を実感できるようになる。
  このようなことから,感性・情緒に関する指導を行う際,

(1)様々な事象に触れさせたり体験させるようにすること,
(2)感性・情緒に関わる言葉を理解するようにすること,
(3)事象や体験等について,より豊かな表現,より論理的で的確な表現を通して互いに交流するようにすること

が大事である。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/gengo/1300858.htm
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・・・「事象や体験等について,より豊かな表現,より論理的で的確な表現を通して互いに交流するようにすること」が、向山学級の作文に見て取れる。
 彼ら彼女らの作文は、情緒的であるが、実に分析的であり、論理的だ。

 いや、感情の高まりがあったから詳細に書く意欲が沸き起こったのだと思う。

 詳細に書きたくなるような情動を起こした出来事だったからこそ、作文が分析的になった。何とか自分の感動を相手に伝えたいと思うからだ。

 さて、これまでの自分は国語科の論理的思考にばかりこだわって追究してきた。
 しかし、思わず書きたくなる情動(感情の高まり)がなければ、詳細な文章・分析的・論理的な文章を書かせるのは難しいのだということを改めて学んだ。
 内容選定の吟味を抜きに「思考力・判断力・表現力」を高める指導をしようなどと目論むのは甘い。
 具体的な場面設定こそが必要なのだ。

  かつて、どこかに書いた。
 「せんせい、あのね」というのも、話したくてたまらないことを先生に伝えるから作文の中身が豊かになる。無理やり作文を宿題にしたって、豊かな作文を書いてくるはずがないのだ。

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September 22, 2018

経産省「前に踏み出す力」

経済産業省が提唱している「社会人基礎力」は、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されている。

【前に踏み出す力(アクション)】
①主体性:物事に進んで取り組む力
②働きかけ力:他人に働きかけ巻き込む力
③実行力:目的を設定し確実に行動する力

【考え抜く力(シンキング)】
①課題発見力:現状を分析し目的や課題を明らかにする力
②計画力:課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
③創造力:新しい価値を生み出す力

【チームで働く力】
①発信力:自分の意見をわかりやすく伝える力
②傾聴力:相手の意見を丁寧に聴く力
③柔軟性:意見の違いや立場の違いを理解する力
④情況把握力:自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
⑤規律性:社会のルールや人との約束を守る力
⑤ストレスコントロール力:ストレスの発生源に対応する力

 今回、注目したのは「前に踏み出す力」。
 以前は今の日本の若者は自信を持てないこと・子どもが正解志向になりがちであることに注目した。この傾向を考えると、間違えをおそれずに前に進む力が、とても大事だと考えたからだ。

 決まり切った解答なら答えられるが、自分で考えた意見や突拍子もないアイデアを言うのをためらう子がいるのは、今に始まったことではない。
しかし40年も前から、向山学級は「自分の意見に自信をもて」「人と違う意見を考えた自分に自信を持て」という指導を繰り返してきた。
 拡散的思考、あるいはラテラルシンキングの指導が向山実践の基盤にあるというのが、今の実感である。
向山学級が自由に意見を発表できたのは、そもそも「自由と平等」という向山先生の教育観・教育思想にあると考えている。

 『斎藤喜博を追って』の「子どもに自由と平等を!」の章を読むと、向山氏は新任のときから、この点に強い思いがあったことが分かる(P107~120)

(1)担任してすぐの頃、子ども達はおずおずとしか意見を言わなかった。

・・・そうか、向山学級でも、スタートは意見は言わないのだ!

(2)「何を言っても良い」という討論の段階から出発したのであるが、研究授業の頃には、テーマからはずれた発言は他の子にたしなめられるようになっていた。
 研究授業の時、子ども達はのびのびと、はきはきと、核心にせまった発言をしていた。

・・・研究授業がいつの時期か定かではないが、向山先生の指導によって、子どもたちは討論ができるようにまで成長した。しかし、年配の六年生担任が「三年生だから発言する。六年生になると発言しなくなる」と批判した。
 向山氏は「自分自身の力の無さを省みない不遜な発言」に憤ったが、新任ゆえに我慢したとある。。
 
 そして、この件に関する考察が次のように述べられる。
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 六年生になっても発言している子は、いわゆる〈優等生〉であった。逆に言えば、〈優等生〉以外の子が段々と発言しなくなるのであった。〈優等生〉以外は、学校生活を通して段々と発言しなくなる事実は、学校の教育活動の中に原因があることを示唆していた。〈優等生〉によりかかった授業・教育活動がその原因であるはずだった。
 教師が発問し、それに〈優等生〉が答えるという、貧弱な授業が目に浮かんできた。教材の本質を理解して、さまざまな角度から授業が展開できれば、そんなことはないはずであった。一人ひとりの子どものことをよく知っていれば、いろいろの考えをひき出せるはずであった。まちがいの中から真実につき進むという学問の基本をとらえており、それを組み立てる力量を持っていれば、そんなことはないはずであった。
 つまるところ、教材を分析していく力量、一人ひとりを具体的に見る力量、学問的な素養、授業を組み立てていく力量の不足が、貧弱な授業を生み出し、〈優等生〉中心の授業にしている原因であった。
(中略)教師が貧弱な授業をしているという原因とともに、もう一つ重大な原因があった。それは、学校の教育の構造として、長い間につちかわれてきた古い教育の形であった。誰しもが疑うことがないようなないような日々の教育の中に、実は〈優等生〉だけが脚光を浴びる構造が存在していたのだった。
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・・・何度読んでもしびれる箇所だ。〈優等生〉に依拠した貧弱な授業は、差別構造に依拠した授業でもあるのだということがよく分かる。

◆誰もが自由に発言できる授業
◆誰の発言も大事にされる授業

は「自由と平等」を具現化する授業観・教育観があってこそであた。そして「自由と平等」を追求した向山学級だからこそ、レベルの高い討論が成り立ったのだ。

 なお、「前に踏み出す力」に絞って考察したと書いたが、<優等生〉に依拠しない授業は、上記の【チームで働く力】に合致している。まさに集団教育力の作用なのだ。

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September 16, 2018

法則を知ると予測ができる!

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名古屋青年会議所8月フォーラム、「現代の魔法・理数で未来を切り拓け」に参加した。
瀧本哲史氏の名前に惹かれたからだ。

瀧本氏の子ども時代の素朴なエピソードが印象的だった。

◆月が欠けるのは雲がかかるからだと思っていた。
「観察してみたら」と言われて、何日も観察してみて、月の満ち欠けが周期的なものであることが分かった。
 法則を知ると予測ができる。法則を知らないと予測できない。

・・・この「法則」が、データであり科学であるし、知識である。何の根拠もなく自分の勘に頼るだけの予測ではあてにならないのだ。

 あわせて初耳で驚いたのが、ナイチンゲールの話。
 白衣の天使ナイチンゲールは、情緒的に評価されるのではなく、科学的に評価されるという話。

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ナイチンゲールは、イギリス政府によって看護師団のリーダーとしてクリミア戦争(ロシアとトルコの間の戦争で、イギリスはフランスとともにトルコに味方してロシアと戦った)に派遣されると野戦病院で骨身を削って看護活動に励み、病院内の衛生状況を改善することで傷病兵の死亡率を劇的に引き下げました。

彼女は統計に関する知識を存分に使ってイギリス軍の戦死者・傷病者に関する膨大なデータを分析し、彼らの多くが戦闘で受けた傷そのものではなく、傷を負った後の治療や病院の衛生状態が十分でないことが原因で死亡したことを明らかにしたのです。

彼女が取りまとめた報告は、統計になじみのうすい国会議員や役人にも分かりやすいように、当時としては珍しかったグラフを用いて、視覚に訴えるプレゼンテーションを工夫しました。今も「鶏のとさか」と呼ばれる円グラフの一種はこの過程で彼女によって考え出されたものです。
(中略)
このような活躍が認められ、ナイチンゲールは1859年に女性として初めて王立統計協会(the Royal Statistical Society)の女性会員に選ばれ、その16年後には米国統計学会の名誉会員にもなっています。

「白衣の天使」ナイチンゲール-祖国イギリスでは統計学の先駆者として今も人々の記憶に刻まれています。

http://www.stat.go.jp/teacher/c2epi3.html
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・・・「ナイチンゲールは統計学の先駆者」というのも、「法則を知ると予測ができる」とつながる事例であった。


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不測の状態を想定する

 夏休みに名古屋市教育センターで講演会があった。
 講師は西成活裕氏。
 テーマは「仕事の渋滞、解消の法則 西成流、仕事の効率をあげるコツ」。
 渋滞学でテレビで見たことのある方だった。

 車の渋滞と仕事の停滞は同じだと言う。
 車間距離を詰め過ぎると何かのアクシデントの際にあっというまに渋滞が発生する。車間距離に余裕があるとアクシデントが吸収されるので渋滞が起こりにくい。

 仕事も余裕なく取り組んでいると、急に何か入ったときにたちどころに停滞が起こる。
 だから日頃から不測の状態を想定して7割くらいで余力を残して取り組んでおくとよいとのことだった。

 「思い通りが強いとストレスになる」という以前聞いたスクールカウンセラーの方の話と重なるものがあった。

 経験を重ねるほど、想定外に強くなれそうなものだが、ひょっとすると、周りが気を使ってくれるので、自分の思い通りに行くことが多くて、感覚が麻痺しているかもしれない。
 歳を重なるほど、裸の王様になりやすいので、いつも謙虚さを忘れずにいたい。

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学力調査から大学入試

「大学入試改革で 小学校・中学校はどう変わるのか?」

東京書籍発行「小学校・中学校 教育情報 教室の窓 Vol.55」の難波博孝氏の論稿は参考になった。
https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/ten_download/2018/2018097...

大学入試が求めるもの(記述式)
①複数の種類の実用文を読ませること
②複数の文章を組み合わせて考えさせること
③大量の情報を処理させること
④最大で200字程度の文章を20分程度の短時間で書かせること
⑤多くの条件を踏まえた文章を書かせること
⑥誰かの立場で文章を書かせること

 そして、次の指摘は、まさにその通りだと思った。

◆実はこの方向性は、文科省がずっと追い求めてきたことであった。小学校・中学校関係者の方ならすぐわかるだろうが、今まで10年以上行われてきた全国学力・学習状況調査のB問題と共通テストのここまでの傾向はそっくりだからである。文科省は10年かけて、共通テストの基盤をつくってきたといえる。

・・・ただし、少なくとも自分の回りでは、B問題に対する意識や大学入試改革に対する意識は低い。
 特に愛知県は過去問指導の圧力がないから、多くの教職員は学力調査の結果なんて何とも思っていない。
 学力調査は、6年生4月実施だから、6年生担任は調査結果に責任を持つ気はないし、1年前の5年生担任にその責任を背負う意識はない。
 他学年の教師は、調査問題を確かめるとか自分でやってみるとか、結果を考察しようという意識もない。
 したがって、文科省が求める学力・大学入試は求める学力に合わせて授業改善しようという意識もかなり低い。

 一方、保護者の関心は小中学校の学力調査については低いかもしれないが、大学入試については関心が高い。
 今行っている授業改善が、お子さんの大学受験に直結するのだとアピールしたら、その先生は頼りにされると思う。
 その程度の世の中のニュースには関心はもってほしい。

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