« 10年で結果を出す天野浩氏の展望 | Main | 創造力の重要性はいつから話題になっているか? »

October 28, 2018

文学で培う健全な批判精神

87


光村図書の「国語教育相談室 中学校」87号に、上記タイトル脳科学者中野信子氏の論考がある。
http://www.mitsumura-tosho.co.jp/material/pdf/kyokasho/c_kokugo/kohoshi_c_kokugo_all.pdf

「ゲシュタルト知覚」を持ち出すところが中野氏である。
「ゲシュタルト知覚」とは、よくも悪くも少ない情報を脳が補ってある認知をしてしまうこと。
プラスで言えば、少ない情報から類推して効率的に情報処理できること。
マイナスで言えば、思い込みや早合点をおこすこと。

中野氏は言う。

◆この機能は、人の思い込みや錯誤を招き、誰かの嘘に惑わされるという危うさをも併せもっている。これを回避すべく私たちの脳に備わっているのが、共感、想像、良心、抑制、長期的な展望などの思考をつかさどる「前頭葉」の働きだ。
(中略)
前頭葉が発達していく時期には、その発達を促すような働きかけを行うことが肝要となる。その働きかけとはすなわち、多様な人々に共感したり、他者の心情を読み取ったり、意図を読み取ったりするなどということだ。文学とは、言語によって伝えられた人の思考の、解釈の仕方について議論を交わす領域である。つまり文学こそ、まさに、前頭葉を鍛えるために大きな役割を果たす実学なのだ。
(中略)
前頭葉が未発達な中学校時代には、文学情報から意味を構築する経験を大いに重ねることが重要だ。そして、ゲシュタルト知覚のみにとらわれず、前頭葉を働かせて、この世界には虚構というものがあること、現実には幾通りにもの解釈があることを理解してほしい。

・・・あまりにポイントが多すぎて、ほぼ全文引用してしまいたいくらいだ。ぜひ、じっくり原文を読んでいただきたい。
 印象に残ったのは、先日読んだ『脳を創る読書』酒井邦嘉(実業日本社)と重なるところがあったからだ。
ここは引用でなく、自分のまとめで示す(矢印記号が上手く出ないと思う)。

◆脳への入力の情報は、活字→音声→映像と増えていく。したがって、想像で補わねばならない情報量は、逆に、映像→音声→活字と増えていく。
活字の場合は行間を読むような想像力が必要になる。読みようによっては多様な解釈も起きてくる。p16〜20

 文学は「ゲシュタルト知覚」を用いて認知されるという中野氏の論考と重ねると、ストンと落ちた。
  映像や音声に比べて、活字は情報量が乏しく想像で補わねば全体像が把握できない。それは必ずしも短所とばかりは言えず、とりわけ文学作品を味わう上では、そこが魅力にもなっている。
 あいまいだから嫌いではなく、あいまいだからこそ面白いと思える子どもを育成できるよう、想像で情報不足を補うことの楽しさを伝えていきたい。

No

|

« 10年で結果を出す天野浩氏の展望 | Main | 創造力の重要性はいつから話題になっているか? »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 文学で培う健全な批判精神:

« 10年で結果を出す天野浩氏の展望 | Main | 創造力の重要性はいつから話題になっているか? »