ノーベル賞・本庶佑氏「ばかげた挑戦が革新生む」
日本経済新聞に本庶佑氏のインタビュー記事がある。
「ノーベル賞・本庶佑氏「ばかげた挑戦が革新生む」
科学&新技術 2018/12/3 6:41日本経済新聞 電子版
https://id.nikkei.com/lounge/auth/password/proxy/post_response.seam?cid=1386056
本庶佑氏が、イノベーションを生むための政府や企業の役割、若手研究者の支援に向けた取り組みなどを語っている。一部抜粋する。
◆イノベーションとは何ですか。
「イノベーションとは結果だ。とんでもないと思うようなことから始まって、結果として世の中を大きく変える。アマゾンやフェイスブックが登場したとき『うまくいくわけがない』『どうやってもうけるんだ』とバカにされた。世界トップの企業になるなんて当時は誰も思わなかった。振り返ってみれば、あれがイノベーションだったと認識される」
・・・インタビュー冒頭のこの回答に本庶氏の思いのすべてが集約されていると思う。タイトルの「バカげた挑戦が革新生む」も見事な要約だ。
周囲がうまくいかないと思っていることこそ、イノベーション。誰もがうまくいくと思うなら、それは「想定内」に過ぎないからだ。
本庶氏は、このあと「月にロケットを上げるような、計画を立てて金をかければできることはイノベーションではない。金で解決することとイノベーションは次元が違う」と述べている。
計画が立てられること・予算が組めること・お金で解決できることは、しょせん「想定内」だから、イノベーションではないということなのだと思う。
◆イノベーション創出に向けて産業界に何が必要ですか。
「日本の大企業は政府がつぶさないようにてこ入れするため、新陳代謝が起こらないのは問題だ。米国のトップ企業は若く、新陳代謝が起こっている。森では大木がいつか朽ちて、下から芽が出て新しい木が生える。大木がいつまでもはびこっていたら下に光が届かず、若い芽が育たない」
・・・新陳代謝、新旧交代、「新しい葡萄酒は新しい革袋に」という新約聖書の言葉が思い出される。
旧態依然とした組織では新しい発想はスポイルされてしまう。
物事が180度変わる様を天動説から地動説への転回にたとえて「コペルニクス的転回」と言うが、まさに常識をひっくり返すような出来事がイノベーションだ。
「今の産業界はおいしい果実がいくつかできた段階から初めて金を出す。厚かましい」とインタビューの言葉は結ばれている。
冒頭で「イノベーションは結果だ」と言う一方で、いい結果が出てからしか金を出さない産業界に苦言を呈している。
サントリー創業者鳥井信治郎氏の有名な言葉「やってみなはれ」が思い出される。
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創業者鳥井信治郎は、どんな苦境に陥ちこんでも自身とその作品についての確信を捨てず、そして、たたかれてもたたかれてもいきいきとした破天荒の才覚を発揮しつづけた人であった。 それを最も端的に伝える言葉として彼がことあるごとに口にした日本語が『やってみなはれ』である。
冒険者としてのチャレンジング精神がサントリーのDNAとして創業100年以上経た今もなお、生きている。現状に甘んじることなく、異分野・新しいことへの挑戦を続ける。
ここに、「結果を怖れてやらないこと」を悪とし、「なさざること」を罪と問う社風に根ざした主な商品をご紹介します。(以下略)
https://www.suntory.co.jp/company/research/history/frontier.html
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・・・「フロンティア精神」をもじったであろう「フロンティア製品」という言葉が痛快である。
「結果を怖れてやらないこと」を悪とし、「なさざること」を罪と問う社風とは、驚くばかりだ。
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