最初に実行するから価値がある~「コロンブスの卵」~
『コロンブスの卵』(Egg of Columbus)の逸話は、「誰にでもできる事であっても、最初に実行するのは至難であり、柔軟な発想力が必要だ」ということを示している。
「逆転の発想」という意味で今日使われており、「ファーストペンギン」に近い意味もある。。
我が国の「コロンブスの卵」の説話は、なんと戦前の1921年発行の第3期「尋常小学国語読本」第8巻 第19章に4年生用教材として登場し、1933年からの第4期にも第8巻 第22章に収録されていたそうだ(1941年からの第5期には削除されている)。
1928年版での記載内容は以下の通り。(一部、表記を変更)
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第十九 コロンブスの卵 (「尋常小学国語読本」より)
コロンブスがアメリカを発見して帰った時、イスパニヤ人の喜んだことは非常なものでした。
一日祝賀会の席上で、人々がかはるがはる立つて、コロンブスの成功を祝しますと、一人の男が「大洋を西へ西へと航海して、陸地に出あったのが、それ程の手がらだらうか」といつて冷笑しました。
之を聞いたコロンブスは、つと立つて、食卓の上の「うで卵」(ゆで卵)を取り、「諸君、こころみに此の卵を卓上に立ててごらんなさい」といひました。
人々は何の為にこんなことをいひ出したのかと思ひながら、やつて見ましたが、もとより立たうはずはございません。
此の時コロンブスは、こつんと卵のはしを食卓にうちつけ、何の苦もなく立てて申しました。
「諸君、これも人のした後では、何のざうさもない事でございませう」
http://takakis.la.coocan.jp/columbus.htm
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・・・今風に訳すと次のようになる。
新大陸発見後、コロンブスは祝賀パーティーを楽しんでいた。
すると彼の成功を妬む男が現れ、心ない言葉を吐きかける。
「たかが西へ進んで島を見つけただけじゃないか。そんな事は誰にでも出来る」
コロンブスは、テーブルの上のゆで卵を手に取って言った。
「誰か、この卵を立ててみて下さい」
挑戦してみるが、誰一人として卵を立てられない。
それを見たコロンブスはゆで卵をテーブルにぶつけ殻を凹ませて立たせた。
そして一言、
「言われてみれば、こんなことは誰にでも出来る。しかし、誰かが成した後では何の意味もない」と返した。
・・・誰にでもできる事であっても、言われてみれば当たり前のことであっても、それを最初に成功させるのは難しい。
コロンブスは卵を使い、それを証明してみせた。
誰だってファーストペンギンになれそうなものだが、やはり誰でもファーストペンギンになれるわけではない。
先のブログで本庶佑氏のインタビュー記事を引用した。
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アマゾンやフェイスブックが登場したとき『うまくいくわけがない』『どうやってもうけるんだ』とバカにされた。世界トップの企業になるなんて当時は誰も思わなかった。振り返ってみれば、あれがイノベーションだったと認識される」
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後からなら何とでも言える。だからこそ、最初にチャレンジすることが大事なのだ。
授業場面で考えてみると、次のイメージだ。
◆どんな答えだろうと、一番最初に発言した子は褒められる。
◆たくさんの答えを列挙できた子は褒められる。
◆他の子が及ばない発想をした子は褒められる。
褒められる基準が複数あるから、学級全体に多様性が生まれ、自由度が上がる。子ども達の個性が発揮される。
「みんな違って、みんないい」
「何を言っても許容される」
という学級風土があると、ますます多様性と自由度は高まっていく。
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