「アカデミックライテイング」というキーワード
英検から学校に届けられた「英語情報2019winter」に「アカデミック・ライテイングの内容と指導」の記載があり大変参考になった。
認知心理学から提案されている文章算出モデルが次の2つ。
(A)知識伝達モデル
(B)知識変形モデル
先に日本の作文指導が「行事作文と読書感想文というガラパゴス状態」にあるという記事を紹介したが、根っこが同じだ。
東洋経済オンライン1月11日配信記事。
https://toyokeizai.net/articles/-/259129
(A)は、一人称型・個人体験の表出で主観的
(B)は、問いに答える型ですすめる「問題解決型」
三人称で書き進められ、抽象概念を扱った客観的な文章
(A)は、自然に習得できる能力レベル・議論につながらない。
(B)は、習熟によって得られる高度なレベルの能力・複雑な取り組みのなかで発展していく能力
◆したがって、(A)から(B)に変異するには学校での指導が必要であるということなのです。
◆ライテイングそのもののプロセスによって得られる認知的な能力を養成する。
という記述にしびれた。
最後に日本の学校の授業で求められる「アカデミック・ライテイングの内容と指導」について10の概要を示している。
むろん、英語の指導内容だが、国語の作文の観点として受け止めることができる。
1)アカデミックな文章は、当該分野の書式の要件を満たし、その様式に従う。
2)そのなかで展開されている議論が明示的なものでなければならない。
3)論旨の展開が演繹的であることが望ましい。
文章のテーマと筆者の主張が冒頭部分にあらかじめはっきりと提示され
(topic setence、thesis statement)、文章を通じて、それが一貫してサポートされていること。
4)読み手が議論の展開を正しく把握できるように、書き手は文章の構成を考え、文章中に適切な「道票」 (therfore、however、thesis statement)、文章を通じて、それが一貫してサポートされていること。
5)独りよがりの主観的な書き方から脱却し、書かれた内容が客観性を持つようにする
6)文体に関しては、口語体を排し、フォーマルな文章を要件であるいくつかの様式に従う。
7)文法的に正しい文を書かねばならない。
8)等位接続詞(and、but、so)で結ばれた稚拙な印象を与える文を避け、縦続接続詞を中心に、愛唯施設や、副詞節、そして形容詞節などを多用し、より複雑な構文を使う工夫をする。
9)口語表現とは異なる洗練された抽象度の高い語彙を使用する。
10)スペリングは正しくしなければならない。
・・・分析批評の評論文が、いかに主観的な作文指導からの脱却に寄与していたかがよく分かる。
※一人称で書く内容に偏らない。
※敬体でなく、常体で書く。
この2点だけでも、フォーマルな文章に近づける。
国語の作文指導の脆弱さを「数学の証明教育」と「英語のアカデミックライテイング」で補うのではなく、数学の証明や英語のアカデミックライテイングの基礎となるような作文指導を国語科が担っていくべきだ。
「アカデミックライテイング入門 レポートの書き方」と題した文書がネットで見られる。大阪府立大学の制作資料だ。
はしがきを見ると、高校までの作文教育が「随筆系」であったため、課題レポートを書くにはどうすればいいかということで手引書を作成したという事だ。
参考文献に「理科系の作文技術」「日本語の作文技術」も含まれていて、安心する部分もあるが、新たな文献もあって自分の学びの狭さがよく分かった。
もう少し、「アカデミックライテイング」というキーワードで調べてみたい。
分析批評の評論文にチャレンジしてきた子ども達はまさに「アカデミックライテイングの指導を受けていた」ということを証明するためである。
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