AIの限界を「ゲシュタルト知覚」で解釈する
新井紀子氏は「今のAIは、問われた内容を論理的に認識しているわけではなく、統計的な処理をしているだけだ」と言われた。
AIは「質問は多分こんな意味だろう」「求めているのは多分こんなところだろう」と推測して回答を導いている。だから、全く頓珍漢な解答があったり、誤訳があったりする。
この話を聞いて、もう1つ思い出したのが、「ゲシュタルト知覚」。
光村図書の「国語教育相談室中学校」87号にあった脳科学者中野信子氏の論稿にあった内容だ。
「ゲシュタルト知覚」とは、より多くの情報を簡単に処理するために少ない情報をもとに、脳が補ってある認知をすること。
プラスで言えば、少ない情報から類推して効率的に情報処理できること。
マイナスで言えば、思い込みや早合点をおこすこと。
AIは、「ゲシュタルト知覚」のように、少ない情報から類推して解答を出そうとする。
中野氏は言う。
================
◆この機能は、人の思い込みや錯誤を招き、誰かの嘘に惑わされるという危うさをも併せもっている。これを回避すべく私たちの脳に備わっているのが、共感、想像、良心、抑制、長期的な展望などの思考をつかさどる「前頭葉」の働きだ。
ただ、その機能は、小学校高学年ぐらいから、三十歳ごろまでかけてようやく完成する。
前頭葉が発達していく時期には、その発達を促すような働きかけを行うことが肝要となる。その働きかけとはすなわち、多様な人々に共感したり、他者の心情を読み取ったり、意図を読み取ったりするなどということだ。文学とは、言語によって伝えられた人の思考の、解釈の仕方について議論を交わす領域である。
つまり文学こそ、まさに、前頭葉を鍛えるために大きな役割を果たす実学なのだ。
(中略)
前頭葉が未発達な中学校時代には、文学情報から意味を構築する経験を大いに重ねることが重要だ。そして、ゲシュタルト知覚のみにとらわれず、前頭葉を働かせて、この世界には虚構というものがあること、現実には幾通りにもの解釈があることを理解してほしい。
===============
・・・今のAIは、常識と非常識の区別が苦手だから、とんでもない類推を平然とすることがある。
想像と実体験と常識で情報不足を補う「前頭葉」の働きにこそ、人間の強みがあることが分かる(違っているかもしれません)。
なお、自分のイメージする「ゲシュタルト知覚」と、「レイヤー構造」は意味がよく似ている。
「レイヤー構造」の記事も合わせて読んでいただけるとうれしい。
「国語」カテゴリの記事
- 「どっちでもいい」のスタンスだけで大丈夫か?(2024.10.01)
- 都道府県の旅(カンジー博士)(2024.08.24)
- 何のために新聞を作らせるのか?(2024.08.23)
- テスト問題の意味を教えないと汎用的な技能が身につかない。(2024.08.22)
- 「対比思考」は情報処理能力(2024.08.06)
Comments