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June 17, 2019

文科省が求める論理の技法~言い回し~

(1)小学生以下の論理の言い回し

 文科省のHPにある中教審の「新しい時代の初等中等教育の在り方について(諮問)」
 関係資料P24 「幼稚園教育要領の改訂(平成29年3月告示)」の「遊びを通しての総合的な指導」に「思考力、判断力、表現力等の基礎」の要素として、次の7項目が挙げられている。

①試行錯誤、工夫 
②予想、予測、比較、分類、確認 
③他の幼児の考えなどに触れ、新しい考えを生み出す喜びや楽しさ④言葉による表現、伝え合い
⑤振り返り、次への見通し
⑥自分なりの表現
⑦表現する喜び等

・・・しかし、こうして項目だけ挙げられても、何をどう指導したらよいかが分からない。
  かつて、奈須正裕氏の講演を聞いて以下のメモ書きをした。

◆「あれ?おかしいなあ」は、仮説との不一致を示す言い回し。
◆ 「ほら、やっぱり~」は、仮説との一致を示す言い回し。
◆「だってさあ」は、根拠や反論を示す言い回し。
◆ 「それじゃあ」は、代案を示す言い回し。

・・・このように、発する言葉と項目とを関連付けると指導も評価も分かりやすくなる。
  以下のように試しに書いてみたが全項目は埋まらなかった。
  「発する言葉」が思い浮かばないということは、指導の手が思い浮かばないということだが、文科省が伝えたい内容が具体的に理解できてないということでもある。

①試行錯誤、工夫
  「もし~してみたら、どうかな」 「いいこと考えた」「あれ、おかしいな」

②予想、予測、比較
  「たぶん~」「きっと~」「やっぱり」「絶対に~」「~はずだ」「~にちがいない」
  
②分類、確認
  「こっちの方が~」「分けてみると」

③他の考えなどに触れて新しい考え
 「なるほど」「たしかに」

④伝え合い 
  「ねえ聞いて」「ねえ教えて」「あのね」「だからさ」 

⑤次への見通し 
  「よおし今度は」「これからは」

 (2)小学生の論理の言い回し

 文科省資料の「言語活動の充実に関する指導事例集」では、中学年で「判断と根拠・結果と原因」や条件文、高学年で演繹法や帰納法の論理を用いて表現できるよう指導せよとある。
 一部、具体的な言い回しの明示があるが、明示されていない項目は指導が難しい。

 【低学年】
○判断と理由の関係を明確にして表現する。
○時系列(まず,次に,そして,など)で表現できる。

 【中学年】
○判断と根拠,結果と原因の関係を明確にして表現する。
○条件文(「もし○○ならば△△である」)で表現する。

 【高学年】
○演繹法や帰納法などの論理を用いて表現する。
○規則性やきまりなどを用いて表現する。 

・・・これも、「言い回し」と組み合わせてみる。

◆判断と理由(結果と原因)
 「○○だから△△」 「なぜならば」「ということは」

◆時系列
 「まず」「次に」「そして」

◆規則性やきまり
 「~のはずだ」「~だと言える」「きっと」「たぶん」

◆条件文
  「もし○○ならば△△である」

◆演繹法・帰納法
  「AならばB」「○○ということは△△」

  このように、子どもの言い回しの語彙によって、使わせたい話法=使わせたい思考法が規定される。
  ある時期、教師がきちんと教えていく必要があるのだ。

※「言い回し」というワードが適しているのかどうかは自信がありません。


 (3)光村国語の6年間の「言い回し」の系統

さて、光村図書の2020年度版の「国語」完全活用ガイドという4つの小冊子がある。
https://www.mitsumura-tosho.co.jp/2020s_kyokasho/kokugo/

①深い学びを実現する「読むこと」
②言葉の土台をつくる「一年生の学び」
③思考力を育む「情報」教材
④語彙力を高める「言葉の宝箱」

とあるが、一番読みごたえがあったのは最後の1冊で、光村の国語教科書の特設コーナーとしても「言葉の宝箱」のコーナーが面白い。

学年ごとに、「考えや気持ちを伝える言葉」が具体的に列挙されている。
①人物を表す言葉
②物や事がらの様子を表す言葉
③考え方を表す言葉
④気持ちを表す言葉

2年から6年の「考え方を表す言葉」を列挙してみる(がんばって打ち込んでみた)。
これは、先に列挙した「言い回し」と同じ意味合いであることが分かっていただけるだろうか。

【2年】
① ~みたい ② ~のよう ③ ~ににた ④ ~と同じ ⑤ ~と違う  ⑥ ~にそっくり ⑦ ~くらいの ⑧同じところは~  ⑨ちがうところは~ ⑩ぼくだったら・わたしだったら

【3年】
① まるで~のよう ② ~と等しい ③ ~とことなる ④ ~と反対の ⑤ ~とぎゃく ⑥ ~のなかま ⑦理由は~ ⑧ 一方~は ⑨ 大きく分けると ⑩ ~にあてはまる ⑪たとえば~ ⑫このように

【4年】
①どちらかが~かというと ②~は、~を含む ③ ~の点では ④ ~に対しては ⑤もし~なら ⑥まとめると ⑦つまり~ ⑧例えば ⑨ たとえ~だとしても ⑩ ~による ⑪ ~かもしれない ⑫ ~のはずだ ⑬ ~にちがいない

【5年】
① ~の点から分類すると ② ~の点で比べると ③ ~といえる ④ ~と思われる ⑤ ~とはどういうことかというと ⑥原因として考えられるのは

【6年】
① ~とみられる ② 具体的には~ ③ 共通点は~ ③ 中でも、~ ④ 多くは、~ ⑤ ~の場合は ⑥ ここから~と言える
 
小冊子には次のようなアドバイスがある。

書くことの指導の際に、「考え方を表す言葉」を示せば、文章を展開させるヒントになりそう。

詳細にみると、「理由は~」が3年、「~といえる」が5年、「~と見られる」が6年など、指導レベルに合わないものもあるが、参考にはなる。
ちなみに「思考力を育む『情報』」のコーナーでも、具体的な表現方法(言い回し)の提示があることが上記の冊子から分かる。

【分ける】
◆ ~は、・・・のなかまです。
◆ ~は、三つのなかまに分けることができます。

【くらべる】
◆ ~と~をくらべてみると・・・。
◆ ~というところは同じですが、~というところがちがいます。

こういう言い回しを使いこなせるかどうかが論理的思考を促すための大きな力になる。
ただし、教科書に書いてあっても付録の扱いだから、きちんとやるかやらないかは担任に委ねられている。だから担任の責任は重い。

追記

それで思い出したんだけど①

「それで思い出した」という言葉を、以前、書き留めていた。
===============
「それで思い出した」という言葉は、イマジネーションと記憶を結び付けて一つの思考を他の思考へ導く能力ーー連想ーーという創造力を端的に表している。
 古代ギリシャ人はこれを重視した。プラトンはその著書の中でこれを盛んに論じ、アリストテレスは人間心理学の根本原理だと強調した。p

『創造力を生かす」アレックスオズボーン(創元社)昭和50年6版 P68
================

 「連想」は、イマジネーションと記憶を結び付けて1つの思考を他の思考へ導く能力だとある。まさにベタ褒めの表現だ。

それで思い出したんだけど②

 道徳の典型的な授業では、展開後段で資料に関連した自分の経験を想起させてどうすべきか、どうあるべきか、言わせたり書かせたりする。資料内の出来事を自分の生活と結び付けて意見を述べないと価値の一般化に繋がらないと指導を受けてきた。新しい道徳の授業に、展開前段と後段というのがあるのかどうかは分からなかったが。


それで思い出したんだけど③

 県の採用試験の論文は、提示されたある資料を読み取った事実と、自分の教育感を述べる2段構成が基本形。資料からどんな事例を思いつき自分の主張につなげるかが試されている。他地区の公立高校入試の記述問題も同じような型だと聞いたことがある。

◆事実と意見を分けて書く
◆人の意見と自分の意見を分けて書く

「それで思い出したんだけど」というフレーズの価値をしっかり意識していこう。

 レベル的には、小学校以前でも使えそうな言い回しだから、中学年では、ぜひ、使いこなせるようになってほしい。

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大学入試講演会で分かったこと!

6月9日(日)、朝日新聞主催の講演会「これからの大学入試はどう変わる?」に参加した。
 講師は鹿児島大学の渡辺弘氏。センター試験元出題者だそうだ。
 大学入試制度の改革は「覚える」から「考える」がキーワード。
しかし9割の保護者は改革の意味や意義を理解していないと言われた。

2030年までに半分の職業がなくなる。AIが得意なことを人間がやる必要はないということで、2つの要素を挙げられた。

①クリエイテイブに考える力
②交渉力・伝える力

このあたりは元文科大臣である下村博文氏の著書と同じだ。
②は通常コミュニケーション能力として表記される。
いくら論理的に正しくても相手が納得しなければ意味がないので説得する技術(話法)が求められる。

石炭から石油へと産業構造が変わることは過去にもあったが、職業の半分もなくなる自体は過去にない。
そうした時代に対応する人材の育成はまさに国家戦略なのだ。

よく誤解されるのが「暗記から考える」への移行に伴って「知識」が要らないと思われていること。
文科省は「知識」とともに「思考力・判断力・表現力」が必要と主張しており。知識が要らないとは一言も言ってないそうだ。

新しい大学入試共通テストの特徴を渡辺氏は何点か挙げられた。

【特徴1】 「分量が多い」

センター入試に比べてプレ入試の国語は5ページ増え、数学は8ページ増えた。天声人語を2分で読む速さでは、問題文を読むだけで試験時間が終わってしまう。
だから「制限時間内に早く正確に読む力が求められる」と結論づけたが、ここは違うと思う。

 丁寧に全文読んでいたら間に合わないことを自覚すべきだ。
テキストの必要な部分を素早く見抜き、余分な箇所は読まない覚悟が必要なのだ。
これは、椿原正和先生の主張だが、分量の多くなった大学入試にも活かせることが分かる。

【特徴2】 テキストと非連続型テキスト

参加された保護者は初耳だったかもしれない。本文と一緒に図表やグラフが提示され、複数資料を組み合わせて読み解かなくてはいけない。
このあたりは、学テ対策と全く変わらない。
学テに慣れた子どもなら今更驚かないが、学テ経験のない保護者は図表やグラフの多さにビックリしているだろう。

【特徴3】 各教科で社会的なテーマ・時事問題が取り上げられる

数学で「建築基準法」が出たり、英語でオバマ大統領の広島訪問が出たりしている。
問題文の中から重要な要素を見抜くことが大事だと渡辺氏はいわれた。
社会的なテーマが取り上げられるから「新聞を読もう」という主催者のPRにつながるのだが、渡辺氏は英語の話題の場面で次のように話している。

◆社会的な知識があれば、英文を流し読みするだけで解答できる。

これは、特徴1で自分が渡辺氏に異論を唱えたのと同じだ。テキストや資料が膨大でも先行知識があれば、全部読まなくても大丈夫だ。
「要所をピックアップする」「流し読みをする」というスタンスが大事なのだということが分かる。

 学テも、生徒会新聞を取り上げるような問題がある。社会的なテーマへの日頃からの関心の高さが、解答処理能力に大きな影響を与える。

【特徴4】 記述式問題

①与えられた条件にそって
②論理的な文章を
③所定の文字数で書く

字数が3番目であるのは、椿原先生の指導と同じだ。指定された条件で書き始めると、結果的に所定の字数になると分かっていれば、文字数を最初から気にしないで解答できる。
与えられた条件にきちんと対応させることを渡辺氏は「情報処理の力」と言っていた。「情報処理能力」ってそんなレベルの低いことを言うのかと少しがっかりしたが・・。

 正確な数値ではないが試行調査(プレテスト)の結果、80字から120字指定の国語の問題の完全正答率が0.7%で無回答率も高かったという。
 書くべき内容と書き方の指定の仕方が不親切だったとの指摘もあるようだが、椿原先生の学テ対策でも条件設定をしっかり確認させているから、大学入試にまで対応できることが分かる。

渡辺氏は記述式の問題に対応できない原因の1つとして、リーデイングスキルテストの結果の低さに言及された。あの新井紀子氏のグループの研究結果だ。「問題文を正しく読み取れない」「教科書の記述が正しく読み取れない」では、とうてい入試問題を解けない。

◆読めない・書けない・ニュースを知らないが課題。
◆英語だけではなく国語の4技能(読む・話す・聞く・書く)が問われている。

これでは、大学入試に対応できないというのが渡辺氏の見解だ。

 大学入試対策を聞けば聞くほど小学校からの学テ対策がそのまま通用することが実感できるような講演会だった。

※過去の覚書より

東京書籍発行「小学校・中学校 教育情報 教室の窓 Vol.55」の難波博孝氏の論稿は参考になった。
https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/ten_download/2018/2018097...

大学入試が求めるもの(記述式)
①複数の種類の実用文を読ませること
②複数の文章を組み合わせて考えさせること
③大量の情報を処理させること
④最大で200字程度の文章を20分程度の短時間で書かせること
⑤多くの条件を踏まえた文章を書かせること
⑥誰かの立場で文章を書かせること

 そして、次の指摘は、まさにその通りだと思った。

◆実はこの方向性は、文科省がずっと追い求めてきたことであった。小学校・中学校関係者の方ならすぐわかるだろうが、今まで10年以上行われてきた全国学力・学習状況調査のB問題と共通テストのここまでの傾向はそっくりだからである。文科省は10年かけて、共通テストの基盤をつくってきたといえる。

長文に対応するスキルとして次の2点が挙げられる。
①ていねいに抜き出す作業が課せられている。
②よく読めば、解答が「常体で書くか敬体で書くか」は決まってくるし、「敬語表現」がいるかも決まってくる。

  だから、繊細で緻密で慎重な子が求められている。しかし、その一方で 

①分量が膨大だから全部のページを丁寧に読んでいたら間に合わない。
②選択問題など、深く考えなくても解ける問題がある。

  だから、迷わず大胆に決断できる子が求められている。

ところで、朝日新聞には「いちからわかるコーナー」という時事問題をわかりやすく解説している箇所があるそうだ。
QAによる進行、グラフや図表、イラストなどもあって、まさに学テや大学入試問題に出そうなパターンになっている。
そのことを利用した朝日新聞は、このコーナー専用の切り抜きノートまで作っていると知って、これもびっくりした。
http://manabu.asahi.com/ichikarawakaru/

①タイトルや見出しを意識させ、

② グラフや図表に対応する本文はどこか線を引かせ、

③ 自分はどう思うかを書かせる

 この流れだから、学テや大学入試に役立たないはずがない。
このノートを使うかどうかは別にして、こういう取り組みがあることは評価したい。

こうしたコーナーを読むだけでなく、こののようなレポートを自分で書かせ、連続テキスト非連続テキスト融合型の資料の読み方に慣れさせることも大切だと思う。


 最後に、この大学入試説明会で、再確認したワードが2つある。

①「セレンディピティ」

 渡辺氏の話の中には出てこなかったが、スクリーンには表示されていた。

セレンディピティ(英語: serendipity)とは、素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ることである。

・・・林修氏も、以前、次のように話していた。「セレンディピティ」のことなのだと納得した記憶がある。

◆辞書を引くとたまたま近くの言葉を調べて興味が広がることがある。電子辞書でピンポイントでワードを検索していると、こういう楽しみはない。だから自分は紙の辞書引きが好きだ。

 効率のよさを求め、関心のあるニュース・知りたいニュースだけを求めていては、視野が広がらない。
ネットで書籍を買うと関連本しか案内されないが、書店に行ってブラブラしていると思わぬ書物を見つけることがある。
ノーベル賞のような発見にもセレンディピティが関与した例は多い。セレンディピティを受け入れるだけの「余裕」がほしい。

 ②努力の見える化

 渡辺氏は新聞の切り貼りノートをできれば毎日続けるようにと勧めた。
スクラップしたノートがずらっと並ぶことで、日々の努力が「見える化」される。受験前日にその厚みを確認することで自信をもてるだろうと。
 渡辺氏の「ハードデイスクでは努力の量は実感できない」という言葉が腑に落ちた。

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