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July 17, 2019

哲学的思考を育てる

   自分は「哲学」を真剣に学んでこなかった。

   だから哲学入門のような本に目を通すと、「思考方法」イコール「哲学の本質」のようなことが書いてあって戸惑ってしまう。

「生きるとは」「友情とは」「平和とは」「愛とは」

といった、ものの本質を求めること(本質感取)が哲学だとある。

  ということは、国語で文学作品の主題を考えることも「哲学」なのだということが分かる。ただし、かつては主題を1つに絞り込むような指導がされ批判を受けた。正解志向は哲学とは相容れない。
  哲学的に意見交流することこそ、まさに「主体的で対話的で深い学び」だと思うのだが、主題指導そのものが国語科の指導内容から外されてしまったのは、なんとも奇妙である。

  「1+1はいくつですか」と聞けば、誰しも1つの正解を言うことができる。AIも解答可能だ。
  しかし「1+1は幸せですか」と聞かれたらどうだろう。それぞれの価値観があるから、どう答えても自由だ。
  小川仁志氏はこのような問いを「哲学的な問い」と呼んでいる。
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 哲学とは自分の言葉で物事の意味(=概念)を確定していくという作業ですから、それはまさに概念の創造だといっても過言ではないと思うのです。
    小川仁志「超・知的生産術」PHP
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  「話者は幸せか」を問うTOSS実践もある。答えが決まらないから、話し合いが盛り上がる。
  「大切な」といった価値判断を問う指示も同じである。向山氏は次のように書いている。

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 大切なことば二つの対比も、子どもによってさまざまであろう。ある子は「駅」と「カンナ」を選ぶ。ある子は「母」と「わたし」を選ぶ。ある子は「ふるさと」と「母」を選ぶ。ある子は「待っていてくれた」と「過ぎていった」を、対比として選ぶ。これはどれでもいい。
    『“楽しい国語”授業の法則』向山洋一(学芸みらい社)P29
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◆正解があるわけではないし、正解を求めて議論しているわけでもない。
◆結論ではなく思考の過程が重視され、自分なりの論を表明できれば、どれも認められる。
◆模範的な解答より、むしろ人と違うオリジナルな発想が評価される。

というように、「正解志向」とは真逆の方向に「哲学的思考」があることが分かる。

  日本では、大学生にならないと「哲学」を学ばないが、欧米は早い段階で哲学的な問いをぶつけられる。

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『ちいさな哲学者たち』(原題・JUST A BEGINNING)という2010年製作のフランスのドキュメンタリー映画があります。3~4歳の幼稚園児が哲学の授業を受ける様子を、2年間にわたって密着撮影したものです。
 「愛ってなに?」
 「自由ってどういうこと?」
 「大人はなんでもできるの?」
  幼稚園児たちが哲学的な「正解のない問題」について自分たちの頭で考え、話し合いをするのです。相手の言葉に耳を傾け、それに刺激を受けることによって、さらに自分の頭で考える力を高めていく。
  これは一例にすぎませんが、いま日本人が海外に出ていったときに相対するのは、このような教育を受けてきた人たちだということは知っておかなければなりません。
  これからの時代、グローバルな国際社会でリーダーシップを発揮して活躍し、世界の人に認められるためには、哲学的思考法が必要不可欠です。日本の学校のテストのように暗記で対応できる、正解のある問題に解答する力ではなく、正解のない問題について「自分の頭で考える力」を身につけることが求められるということです。そして、よりよい世界をつくっていくのです。
  自分の頭で考える力を養うために私が最も効果的だと思うものこそ、哲学を通じた学びなのです。
   「世界のエリートはなぜ3歳から哲学を学ぶか」      
https://toyokeizai.net/articles/-/66750
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一方、道徳の授業はどうだろうか

「思いやりって何?」
 「友情って何?」
と正解を絞らず、本質を考えさせるのなら、まさに哲学的だと思うのだが、道徳の指導要領でも、哲学というワードを見たことがない。
お茶の水大学附属小学校が、「てつがく」という教科をつくっている。学ぶならここからか。
http://www.toyokan.co.jp/book/03/b432609.html

参考文献
 「はじめての哲学的思考」苫野一徳(ちくまプライマリー新書)
 参考WEB
http://www.phenomenology-japan.com/honntai.htm

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