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July 26, 2019

「哲学的対話」と「道徳の授業」

『はじめての哲学的思考』(苫野一徳著)には、「哲学的対話」について言及した箇所がある。

これを参考にすれば、1つの道徳授業のモデルになるかもしれないと感じる内容だった。

哲学者の西研氏の提案する手順が示されている。

①体験に即して考える

②問題意識を出し合う

③事例を出し合う

④事例を分類し名前を付ける(キーワードを見つける)

⑤すべての事例の共通性を考える

⑥最初の問題意識や疑問点に答える

...この本では「恋愛」を例にしているが、「泣いた赤鬼(思いやり)」に変えて考えてみると、けっこう、道徳の授業パターンになる。

体験に即して考える

 導入でよく使うパターン。

 「人に親切にしたことはあるかな?」みたいな。

問題意識を出し合う

 「泣いた赤鬼」を読んで疑問点や気になる点を出し合う。

 「青鬼を失って赤鬼は後悔しているか?」

 「赤鬼を悲しませた青鬼の行為は、いいことなのか?

事例を出し合う

 自分たちの経験を基にして「思いやり」を言葉にして、より深く考えてみる。

 「相手が望んでいないなら、思いやりとは言えないのか」

 「自分がよいと思えば、相手の気持ちはどうでもよいのか」

 「相手に知らせないから喜んでもらえることもある」

 「あまり負担をかけられると、喜びよりも申し訳ない気持ちになる」

事例を分類し、キーワードで括ってみる

 「自己満足」「双方の満足」「相手の満足」

 「サプライズ」「自己犠牲」「ありがた迷惑」のように。 

すべての事例の共通性を考える

 「本当の思いやりは、された相手が感謝の気持ちをもつような行為だ」みたいな。

最初の問題意識や疑問点に答える

 「ということは、赤鬼を悲しませた青鬼は『思いやり』が足りないんじゃないか」

 「ということは、赤鬼は感謝してるはずだから、青鬼の行動は『思いやり』でいいんじゃないか」

 

...なお、苫野氏は「本質定義」「類似概念」「本質特徴」「発生的本質」を考えることが大事だと言う。

 難しいので、自分が言葉を理解できた範囲で「思いやり」を例に示してみる。

①「本質定義」

 「思いやりとは」を端的に言わせる。

②「類似概念」との違いを意識させる。

 「思いやりと友情はどう違うのか」のように。

③「本質特徴」。その特徴がないと「思いやり」とは呼べないという特徴を考えさせる。

・・・「相手が喜ぶ・相手が感謝する」が「「思いやり」の必須条件かな。

④「発生的本質」を考えさせる。

 なぜ人は「思いやり」をしたくなるのか。

 人はどのようにして、「思いやり」の気持ちを持つのか、など。

・・・「してもらった時のうれしい気持ち」「相手の喜ぶ顔を見た時のうれしい気持ち」といった答えが出るだろうか。

 

 「みんな違ってみんないい」では、言いっぱなしになってしまう。

 「相手を言い負かしてやろう」というスタンスでも建設的な対話にならない。

 それぞれの違いを乗り越えて何らかの着地点を見つけることが対話の意義だ。

 

 こんな授業も可能だと感じたのは、前調査官の横山利広先生の模擬授業が、結構、上記の流れに近かったからだ。

 子どもたちから出された意見をキーワードで示してグルーピングするような場面があった。

 そして、小学生なりに「そもそも○○とは~」「本当の○○とは何だ」みたいな問いかけを行っていた。

 従来の道徳の授業の流れに何ら裏付けがないのなら「哲学的対話」をモデルにしましたという理屈もアリなのかなと思う。

 

フランスの哲学者デカルトによると、物事の真偽を見極めるために必要なのは次の4つのステップだと言う。

(1)とにかく疑うこと

(2)徹底して細分化すること

(3)単純なものから複雑なものへと段階を追って考察すること

(4)漏れがないように見直すこと

 この4つのステップを踏んでもなお「確かである」と残ったものは、本物である。

『世界のトップスクールが実践する考えの磨き方』福原正大(大和書房)P37より

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