「艦長は血の出るほど舌を噛む」~リーダーの自制心~
「艦長は血の出るほど舌を噛む」
(The captain bites his tongue until it bleeds)
という言葉があるそうだ。
これだけでは意味が分からなかった。
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これは海軍用語なのだが、船長が自分の部下に舵を握らせておくことは、非常に危うい。
しかし、船長が自分で舵をとると部下が育たない。
そこでジーッとこらえると血がタラタラ出てくるという話である。
リーダーというのは下からクリエイトされるアイデアを、悪意で潰すということはもちろんあるだろうが、善意で介入しすぎて潰していくというのが案外多いので、これを戒めているのである。
野中郁次郎 「創造する組織の研究」講談社 P31
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実際にやらせてみない限り、本人は永遠にできるようにはならない。
部下が四苦八苦してからといって、代わりに全部やってしまっては、本人のためにならないのだ。
野中氏は以下のようにリーダー論を語る。
◆要するにリーダーというのはイノベーションを支援はするが口は出すなという意味合いである。
このワードで検索していたら、「冷暖自知」という禅の言葉に出会った。
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またアメリカの3M(スリーエム)社で、社内でよく使われる言葉に
“The captain bites his tongue until it bleeds”
(艦長は血の出るまで舌を噛む)というのがあるそうだ。
これは米国海軍で生まれた言葉だそうで、馴れない部下はへたくそでなかなか思うように舵が切れないので、艦長はつい口を出して教えたくなる。しかしここで教えたのでは部下のためにならない。ほんとに操舵法を身につけるには、失敗をしながら学んでゆくしかない。そう思って艦長は口をつぐんでジッとがまんしているという状態を言ったものだそうで、若い社員のミスやもたつきを、舌を噛んでジッとがまんして黙って見まもり、自ら体得することを気長に待つのが最良の社員教育だというのだそうである。
まさに冷暖自知、「証の得否は、修せんものおのづからしらんこと、用水の人の、冷暖をみづからわきまふるがごとし」(『正法眼蔵・弁道話』)という禅の教育と軌を一にするものである。
「冷暖は身体で覚える」
http://www.jtvan.co.jp/howa/Sato/houwa018.html
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「冷暖自知」とは、真の悟りは自分で感得するものであるということを、水の冷暖を自分で手を入れてみて知ることにたとえていう語。
「冷暖自知」でさらに検索して、以下の指摘には納得した。
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◆人から聞いただけの借り物の知識でなく、自分自身の体験を何よりも大切にするように。
それが本物の知識なのだと「単にそのことについての情報を知っている」という意味での「情報」は、「知識」とは質的にまったく別ものと言っていい。
◆「情報」と「知識」の違いは、僅かなようでまったく別次元の事柄なのでよくよく気を付けておかなくてはいけない。
現代社会では頭に所有する「情報」を指して「知識」と呼ぶことがあるが、それはかなり危うい混同といえる。
【禅語】 冷暖自知 - 体験してはじめてわかること -
https://www.zen-essay.com/entry/2016/09/25/231514
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だから「教えるな」ということではない。
知らないことは教えねばならないし、できないことは少しずつクリアさせていかねばならない。
「艦長は血の出るほど舌を噛む」はアメリカ海軍の用語。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」は、連合艦隊司令長官山本五十六の言葉。
野中氏は、組織論を語るのに軍事組織を研究している。組織員の命が懸かっているのでいるので、勝つ組織としてたえず自己革新しながら進化しているからだと言う。
また、逆に日本軍の敗北から「失敗の本質」を抽出している。読まねばならない本がまた増えた。
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