読解力を高める授業と、証明教育
新井紀子氏が提案した「読解力を高める授業」の実例は、
答えが「〇●〇●〇●」に一意になるように、オセロの並べ方を正確に実況中継しよう
という課題だ。
https://toyokeizai.net/articles/-/256115?page=3
この「一意」というところが重要で、多様な解答が出るような説明では困るのだ。
論理的思考(プログラミング的思考)の基本は、漏れなく・ダブりなくのMECE(ミーシー)と言われる。
Mutually (お互いに)
Exclusive (重複せず)
Collectively(全体に)
Exhausive(漏れがない)
向山先生の実践には、学校から自宅までの経路を書かせるものがあったと記憶している。自分も家庭訪問があった頃、高学年のクラスで自宅までの経路を書かせたことがある。まさに昭和の実践だが、順を追って正確に説明させる訓練になっていた。オセロの並べ方を説明させるのと、自宅までの経路を説明させるのは、意味や意義は同じだと思う。
さて、久しぶりに『数学的思考法』芳沢光雄(講談社現代新書)を開いてみて、「地図の説明」の重要性が書いてあって驚いた。p22~25
◆2004年2月に行われた千葉県立高校入試の国語で、地図を見ながらおじいさんに道案内するという記述問題が出題された。200字以内で作文する問題であったが。なんと受験生の半数が0点だったという。
・・・すでに15年前のデータではあるが、自分の言葉で説明させる向山実践が、いかに受験に有効であったかがよく分かる。
芳沢氏もずっと課題の大切さを提言されてきたとある。
◆「地図の説明」の重要性は、私の10年以上にわたる数学啓蒙活動のなかでも主張してきたことだ。「論理的思考力は地図の説明を練習させると育まれる」とか「(中略)最寄りの駅からこの試験会場までどのような道順で来たかを説明させると、受験者の論理的説明力が一発で見抜ける」などと、いろいろなところで発言してきた。地図の説明は国語だけの問題ではないのである。
・・・「地図の説明は国語だけの問題でない」とあって驚いた。逆に言うと、これが数学の問題だと考えたことがなかったからだ。
芳沢氏は、地図の説明は「数学の証明」につながると言う。そして、IT先進国インドと日本の差は、中学校時代の証明教育の差だと言う。
◆インドとはまったく対照的に、日本の中学校での証明教育の実情はまことに惨憺たる状況である。昭和40年代と比べると、現行(2002年度学習指導要領改訂)の中学校数学教科書の証明問題数は3分の1になってしまった。
挙句の果てに「証明の全文を中学生に書かせるのはかわいそうだし、試験に出しても点が取れない」などと、同情して、なんと「三角形」だの「平行」だのという単語だけを穴埋め式に書かせるという、まったく日本固有の異常な教育があちこちの中学校で行われているのである。
・・・新井紀子氏が、キーワード穴埋め式の読み取りでは、読解力が身につかないと主張している点と重なってくる。
また、大学受験のニュースで、記述式を取りやめた惨状とも重なってくる。
◆現行の大学入試センター試験の後継で2020年度に始まる大学入学共通テストを巡り、大学入試センター(東京)が数学で検討していた文章記述の問題導入を初年度は見送る方針を決めたことが分かった。昨年11月の試行調査では、文章で解答する問題1問を含む記述式の小問3問の正答率が低迷し、本番では3問とも数式のみを記述させる。
https://edu.chunichi.co.jp/pages/entryexam-newexam-20/
・・・記述式問題の導入は共通テストの目玉の一つで、「思考力・判断力・表現力」を評価するための手段であったのに見送りとなってしまった。数学が、マークシートや穴埋め型に慣れてしまった現状を変えるのは、かなり困難なのだ。
そんな状況だからこそ、小学校の段階から教科の枠を超えて「正確に説明させる」という課題に取り組ませ、証明問題を解く論理的思考力(プログラミング的思考力)の基盤を育んでいかねばならない。
今は見送りにはなった数学の記述問題だが、いずれは実施されるに決まっているのだ。うかうかしていられない。
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