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October 05, 2019

「わたしと小鳥と鈴と」の解釈

多くの先生方は分かっていると思うが、金子みすゞの詩は、決して単純なポジテイブではない。

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わたしが両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが、
飛べる小鳥はわたしのように、
地面(じべた)をはやくは走れない。

わたしがからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴はわたしのように、
たくさんなうたは知らないよ。

鈴と、小鳥と、それからわたし、
みんなちがって、みんないい。
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 道徳の教科書に付いているプリントは、自分の短所と長所を書いてみようという取り組みだった。

◆私は、走るのは苦手だけど、音楽は得意です。
◆私は、字は下手だけど、絵は得意です。
のように書き込ませていた。
 しかし、原詩の構造は違う。
 原詩の構造に従うなら

◆私は太郎君のように速く走れないけど、足の速い太郎君は私のようにピアノを弾けない。

となる。
 授業では安易に「短所と長所の対比」で理解させたがるが、本当の構造は「短所と短所の対比」。
 詳しく言うと「自分の短所と長所の対比」ではなく、「自分と他人の短所と短所の対比」。
 だから、相当にネガテイブなのだ。

 これは金子みすゞの境遇を調べたことがある人なら分かる。金子みすゞの詩をポジテイブでメルヘンチックに受けとめてしまったら、この詩を読み取ったことにはならない。

 道徳の授業だから「みんなちがってみんないい」の都合のよいフレーズだけ利用すればいいのか。
 道徳の授業だから「自分には短所もあるけど長所を大事にしよう」と結んでいいのか。

せめて

◆あなたは、いくらがんばっても他人にはなれないし、他人はいくらがんばってもあなたにはなれない。
 だから、他人をうらやましく思う必要なんてないし、あなたはあなたであることに自信を持ってほしい。

◆ある基準ではあなたは他人に劣るかもしれない。でも別の基準でみればあなたは他人に決して劣っていない。
 だから、他人をうらやましく思う必要なんてないし、自分は自分であることに自信を持ってほしい。

というまとめになるのではないだろうか。 
 ネットで検索すると、次のような感想があった。私も同感である。
 この詩の肝は「人のよさを決める価値基準は一つではない」ことだ。4年生に「基準」という意味を伝えられるかどうかは分からないが。

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「みんなちがって、みんないい」。本当は当たり前のことなのに、一つの基準で全ての価値を決めてしまいがちな現代において、この言葉は人々の心に鋭く優しく響きます。
 きっと、この言葉に救われる人も多いことでしょう。価値や基準は一つではないのだ、たとえ一つの基準で劣っていても、私の価値は失われないのだ、と思い出させてくれる言葉です。
https://www.motivation-up.com/word/036.html
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