文科省のPISA読解力の見解は?
読解力についていえば、前回までは、「読解力」の定義は、書かれたテキスト(本や新聞など出所や校正・校閲がしっかりした書きもの)の中から「情報を探し出す」「字句の意味を理解する」「統合し、推論を創出する」「内容と形式について熟考する。」等でありました。つまり「従来型」の範囲内での「読解力」を問うものだったといえるでしょう。
今回からは、オンライン上の様々なデジタルテキスト(ブログ、投稿文、宣伝サイト、メール文)など、文責が誰にあるのか、出所が定かであるのか、校正・校閲がしっかりなされているのかなどが一見明確ではない文書について、「質と信ぴょう性を評価したり」「矛盾を見つけ対処したりする」ことも求めており、問題自体もその7割がPC使用型調査のために開発された新規ものとなっています。つまり、前回までの「読解力」の調査からは大きく変化しているということです。
OECDの責任者であるシュライヒャー局長も、現代社会においてデジタルの世界で求められる読解力に焦点を当てたこと、「フェイクニュース」が広がる世界での読解力がより重要な能力になっていることを明確に言及しており、今回のPISA調査は、これまでの「読解力」の範囲に加え「情報活用能」をも求めていることは明らかだと思います。
初中教育ニュ-ス(初等中等教育局メ-ルマガジン)第373号(令和元年12月24日臨時号)
【矢野 文部科学省大臣官房審議官(初中教育担当) 特別寄稿】PISA調査2018とGIGAスクール構想
https://www.mext.go.jp/magazine/backnumber/1422844_00003.htm
この審議官の言葉が一次資料なら、求められる読解力は
1 「情報を探し出す」
2 「字句の意味を理解する」
3 「統合し、推論を創出する」
4 「内容と形式について熟考する」
5 「質と信ぴょう性を評価する」
6 「矛盾を見つけ対処する」
で、これは、
◆これまでの「読解力」に「情報活用能力」を加えたもの◆
ということになる。これを後段で
◆新たな読解力(読解力と情報活用能力のハイブリッド型)◆
と呼んでいる。これがまさに新学習指導要領の先の課題ということになるだろうか。
なお補足の形で、従来の物語の読みを否定せず、並行して指導すべきだと述べている。
=========
1 PISAは全世界で同時に調査を行うため、文化に依存する価値観や筆者の気持ちなどは問わない。
2 PISAの読解力や書く力を議論するときには、日本の国語科の伝統的な読解力と区別する必要がある。
3 「ごんぎつね」の気持ちを丁寧に読解する活動をPISA読解力低下の「処方箋」として流したのは、的を射たものとは言い難い。
4 「読解力」に加え「情報活用能力」という「新たな課題」がOECDから各国に投げかけられている。
============
これからは、「読解力」と「情報活用能力」なのだと何度も出てくる。
日本の伝統的な読解力と区別しろという指摘も重い。
矢野氏の私見とあるものの、文科省の見解と見てよいだろう。文科省のHPなのだから。
「国語」カテゴリの記事
- 問いに正対した解答が大事!(2023.02.08)
- 「三年とうげ」(3年光村) 教師の一人読み(2022.12.21)
- 「三年とうげ」(3年光村)(2022.12.05)
- 楽しい授業は、疑問が次々浮かぶ(2022.12.06)
- 「プラタナスの木」(光村国語4年)(2022.12.06)
Comments