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February 24, 2020

「PISA型読解力は何を示唆するか」

「PISA型読解力は何を示唆するか」は、「現代教育科学」2006年9月号の特集テーマ。
最初のPISAショックが起きて、文科省の「読解力向上に関する指導資料」が出たことを受けた特集であった。
2019年末は、14年前と同じ議論をグルグルしているのだろうか。
ここまでの情報を整理してみる。

(1)2005年12月文部科学省より出された「読解力向上プログラム。「はじめに」で次のように書いてある。

◆なお、PISA調査の「読解力」とは、「Reading Literacy」の訳であるが、わが国の国語教育等で従来用いられてきた「読解」ないしは「読解力」という語の意味するところとは大きく異なるので、本プログラムでは単に「読解力」とはせずに、あえてPISA型「読解力」と表記することとした。
①数学的リテラシー
②科学的リテラシー 
③読解力リテラシー
であるべきところを、「読解力」としてしまった。
本来「Reading Literacy」と書くべきところを「PISA型読解力」と表記したと言いながら、冊子のタイトルは「読解力向上プログラム」。
ここに初動のミスがあると思う。
2019年になってもマスコミは「PISA型読解力」と書かずに、「読解力」と表記して騒ぐ。
問うているのは「Reading Literacy」なのだという前提が共有されない。
「PISA型」という注釈をつけても、いつしか「読解力」に置き換わってしまう。
◆リテラシーとは、特定分野の事象や情報を正しく理解・分析・整理した上で、自分の言葉で表現したり、判断したりする能力を指す
(「総合教育技術」2020年2月号の教育ジャーナルより)

 PISA調査の「Reading Literacy」は、従来の日本の読解力とは大きく異なることを理解した上での議論を期待したい。
(2)「Reading Literacy」に沿った具体的な対応が、学力テストB問題であり、2020年の大学入試記述問題であった。
 センター試験に代わって2020年度から行われる大学入学共通テスト(国語)は、これまで行われてきた全国学力調査問題と傾向が酷似していた。
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「大学入試が求めるもの」
①複数の種類の実用文を読ませる  
②複数の文章を組み合わせて考えさせる
③大量の情報を処理させる
④最大200字程度の文章を20分程度の短時間で書かせる
⑤多くの条件を踏まえた文章を書かせる
⑥誰かの立場で文章を書かせる

難波博孝氏(広島大学大学院教授)
東京書籍発行「教室の窓 Vol.55」
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この点について難波氏は次のように指摘していた。

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実はこの方向性は、文科省がずっと追い求めてきたことであった。小学校・中学校関係者の方ならすぐわかるだろうが、今まで10年以上行われてきた全国学力・学習状況調査のB問題と共通テストのここまで傾向はそっくりだからである。文科省は10年かけて、共通テストの基盤をつくってきたといえる。
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 2018年11月、朝日新聞に掲載されたコメントも、同様の趣旨だ。

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文部科学省はこれまでも高校までに教える内容を決める学習指導要領で「思考力、判断力、表現力」を身につけるよう学校に求めてきた。
だが、高校では大学入試に向けた勉強に重点が置かれがちだ。
そこで大学入試も、より学習指導要領の内容に合わせるよう大きく変えることにした。
                            
朝日新聞 進学特集「20年度入試から共通テスト」2018/11/5朝刊
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授業を変えるためにゴールを決めた。入試を変えるというウルトラCを決行したのだ。
同様の指摘は「全国的な学力調査に関する専門家会議」の委員である田中博之氏も述べている。
冒頭の「現代教育教育」の特集でも執筆されている方だ。

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(2017年の大学入試試行調査は)全国学力・学習状況調査の問題と、とてもよく似ています。これは偶然ではなく、意図的に合わせているのです。つまり、記述力が全国学力・学習状況調査から大学入試まで一貫して問われる必須の学力になる、という画期的な出来事が起きようとしています。だからこそ、小中学校では一層B問題的な学力観を重視すべきなのです。  
「総合教育技術」2019.11月号 P43
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・・・「記述力が全国学力・学習状況調査から大学入試まで一貫して問われる必須の学力になる、という画期的な出来事が起きようとしています」が実現はずだった。土壇場になって、大学入試にまでつながる「PISA型読解力」が、無期延期になって混乱してしまったが、我々の問題意識まで延期するわけにはいかない。
学力テストを、無理矢理やらされているテストと捉えているようでは、PISA型読解力が身につくわけがない。
学力テストで問われているような内容を授業の中で行わない限り、PISA型読解力向上は望めないし、国際的な場で日本の生徒は活躍できない。

(3)直近の文科省のPISA読解力の見解は?

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 読解力についていえば、前回までは、「読解力」の定義は、書かれたテキスト(本や新聞など出所や校正・校閲がしっかりした書きもの)の中から「情報を探し出す」「字句の意味を理解する」「統合し、推論を創出する」「内容と形式について熟考する。」等でありました。つまり「従来型」の範囲内での「読解力」を問うものだったといえるでしょう。
 今回からは、オンライン上の様々なデジタルテキスト(ブログ、投稿文、宣伝サイト、メール文)など、文責が誰にあるのか、出所が定かであるのか、校正・校閲がしっかりなされているのかなどが一見明確ではない文書について、「質と信ぴょう性を評価したり」「矛盾を見つけ対処したりする」ことも求めており、問題自体もその7割がPC使用型調査のために開発された新規ものとなっています。つまり、前回までの「読解力」の調査からは大きく変化しているということです。
 OECDの責任者であるシュライヒャー局長も、現代社会においてデジタルの世界で求められる読解力に焦点を当てたこと、「フェイクニュース」が広がる世界での読解力がより重要な能力になっていることを明確に言及しており、今回のPISA調査は、これまでの「読解力」の範囲に加え「情報活用能力」をも求めていることは明らかだと思います。

初中教育ニュ-ス(初等中等教育局メ-ルマガジン)第373号(令和元年12月24日臨時号)
【矢野 文部科学省大臣官房審議官(初中教育担当) 特別寄稿】PISA調査2018とGIGAスクール構想
https://www.mext.go.jp/magazine/backnumber/1422844_00003....
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この審議官の言葉が一次資料なら、求められる読解力は
1 「情報を探し出す」
2 「字句の意味を理解する」
3 「統合し、推論を創出する」
4 「内容と形式について熟考する」
5 「質と信ぴょう性を評価する」
6 「矛盾を見つけ対処する」

となる。これを、

◆これまでの「読解力」に「情報活用能力」を加えたもの
◆新たな読解力(読解力と情報活用能力のハイブリッド型)

と呼んでいる。
これがまさに新学習指導要領の先の課題ということになるだろうか。
しかし、デジタルニュースの信ぴょう性を検討するスキルは、今後ますます「Reading Literacy」だ。
ハイブリッドなどと新たなワードを用いなくても、元々の「Reading Literacy」が一層重視されてきたのだとも理解できる。

ということで、「Reading Literacy」をオーソドックスにしなかった初動ミスではないかという思いが増している。

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