PISA型読解力とクリテイカルシンキング
ロジカルシンキングと併せてクリティカルシンキングについては、ずっと関心を持ってきた。
PISA調査での読解力(リーディング・リテラシー)との関連で、批判的読み(クリティカル・リーディング)の重要性が話題になったからだが、元々は、宇佐美先生の著作に刺激を受けたことが発端だ。松本俊樹先生が今でも会うたびに話題にしてくださるが、法則化の初期に国語の説明文を批判的に検討したものだ。
「論理的思考力を育てる!批判的読み(クリティカル・リーディング)の授業づくり」(明治図書)という本を2年前に買ったはずだが、「積ん読」の末に、行方不明になってしまった。
ネットで改めて前書きを読む。なるほど、そうであった。
この前書きだけで、いたく感心したのだ。
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批判的読み―この読み方を取り入れることは、説明的文章の授業を改革していくための鍵である。本書では、その意義と内容、そしてそれを取り入れた授業づくりのポイントを具体的、実践的に記した。限られた紙幅の中での不十分さはあるが、研究、実践面での議論が進展することを願って、可能な範囲で体系的、構造的にも示したつもりである。
批判的読みは、PISA調査における読解力(リーディング・リテラシー)として注目されることになったクリティカル・リーディングでもある。批判的ということばは、日本語のニュアンスとしてはマイナスイメージがあるが、この読みは粗探しをするためのものではない。文句をつけることを奨励する読みでもない。納得できることはよしとし、腑に落ちないことはそのまま受け入れることはしない読み、文章(=筆者のものの見方や考え方)に対する自分の意見をしっかりともつ読みである。これは、高度情報社会には必須の読みの力であり、自己を確立していくためにも是非身に付けておきたい力である。
これまで説明的文章領域では、こうした読み方が、研究者や一部の実践家を除いては、なかなか広まらなかった。それでも、先のPISA調査の影響を受けて、ここ十年くらいでずいぶんと様子が違ってきているのも事実である。
折しも、平成二九年版の学習指導要領が告示され、国語科の「内容」の〔知識及び技能〕の項目の中に「話や文章に含まれている情報の扱い方に関する」事項が位置付いた。そこでは「事柄の順序」「原因と結果」「具体と抽象」等の論理的思考力を使って「情報と情報との関係」を理解することが要請されている。説明的文章の学習指導はその担い手として、いっそう重要となった。
また、中学校第三学年の「読むこと」領域の内容には「イ 文章を批判的に読みながら、文章に表れているものの見方や考え方について考えること。」と明示された。義務教育最終学年に、批判的読みが位置付いたということは、小・中学校の九年間をかけて批判的読みの授業を積極的に展開し、こうした読みの力を身に付けさせるように、というメッセージである。
筆者に立ち向かい、自分の考えをつくっていく批判的読み。そうした批判的読みを楽しむ説明的文章の授業が、多くの教室で行われるように願っている。本書が、そのための一助となれば幸いである。
https://www.meijitosho.co.jp/detail/4-18-234728-3
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・・・併せて「立ち読み」コーナーを読むと、1971年に倉沢栄吉が、以下の点が重要だと指摘したことが紹介されている。
(テキストの意味それ自体に担いがあるのではなく)その意味が、どういう人から、何のために送られてきたか
・・・書かれた内容を鵜呑みにしない「自立した読者」であるべきだと。これが批判的な読みのスタンスだ。宇佐美氏は「喧嘩読み」とも書いている。
なるほど、ネットによる著者不明の情報が溢れる現代こそ、倉澤の指摘は重みを増している。著者もそのことを強調している。
ただ、PISA型読解力=リーディング・リテラシーと、「クリティカル・リーディング」の異同となると、これまた、明快な解説が見当たらず、私は結局保留してしまったいた。
いろいろあって後回しになっていたので、改めて自分なりのアプローチで整理したい。
PISA型読解力に対応する指導をするには、どんな要素が必要かを検討するためだ。
PISA型読解力対策の事例の中に、フェイクニュースがないかを、しっかり見極めるためでもある。
著者吉川氏の以下のインタビュー記事を読んで、改めて疑問に思うのは
◆では、「クリテイカルシンキング」と、「リテラシー」はどう異なるのか
ということだ。
https://www.meijitosho.co.jp/eduzine/interview/?id=20180018
以下の学術論文を読むと、その違いは結構ややこしいのだ。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sjpr/60/2/60_163/_pdf/-char/en
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