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May 02, 2020

情報リテラシー 「非常事態」を疑う発言が封じ込められていない

4月15日、西浦博氏(疫学理論の専門家)が発表したのは、次のシミュレーションである。

 「感染拡大の防止策を実施しなかった場合、重症患者が累計85万3000人になり、その49%(41万8000人)が死亡する」

今や「8割おじさん」とも言われる西浦氏は、当初から複雑な計算も示されたが数値の意味は自分にはよく分からなかった。
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①新型コロナウィルス感染症は、R0=2.5である。

②「人と人との接触」には「削減可」のものが75%、医療者と患者等「削減不可」のものが25%ある。

③2.5×0.75×(1-0.8)+2.5×0.25=1で、「削減可」の部分を80%削減すれば感染は収束する。

ここで、①②③を全体としてみたロジック自体は、結局のところR0=2.5×(1-0.6)=1.0という間違い様の無い事を言っているのであり、当然ながら合理的なものといえます。

問題は、①、②、③の個別の事項にあります。

R0J=1.7だと「55%削減」で収束

まず、①ですが、新型コロナウィルスは新しいウィルスであり確定的な事は言えませんが、WHOが公表しているところでは、そのR0は1.4~2.5とされており(参考)、R0=2.5は実は最も大きい(感染拡大速度が速い)推計です。
 さらに「ウィルスの性質」という意味で世界共通のR0を使うことは、純粋な計算の前提としては分かりますが、これを日本での対策の前提とした場合、例えば「日本人は欧米人にくらべて『ハグ』をしない」というような、日本社会においてはすでに社会的・文化的に削減されているものも「新たに削減するべき人と人の接触」に入ってしまうことになります。

日本での対策における削減率を考えるのであれば、「日本におけるR0(日本における対策前のRt)」を前提として計算すべきですが、この「日本におけるR0(R0J)」は4月1日に発表された「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解等(新型コロナウイルス感染症)」(参考)において、R0J=1.7と推定されています(この推計は他ならぬ西浦教授自身が行ったものと考えられます。この推計が誤っていたという事になると、シミュレーションの前提が全てひっくり返ってしまいます)。
従って「4月1日の日本の現状からの削減率」を考えるなら、①´R0J=1.7を前提として計算すべきで、①´②③で計算すると、
1.7×0.75×(1-0.55)+1.7×0.25=0.99
なので「4月1日の日本の現状からの削減率55%」で感染は収束することになります。漠然と感じたのは「確率の変数を変えれば、結果としての数値がいくらでも変動する」ということだ。

コロナ対策で人と人の接触「8割減少は折れてはいけない数字」は本当か?
2週間後に感染者がピークに達した後、減少に転じるというシミュレーションを検証


https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020041200003.html

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・・・数式はともかく(としてはいけないのだが)、国語の教師からすると、1点、素朴な引っ掛かりがあった。

「感染拡大の防止策を実施しなかった場合」

というそもそもの前提だ。

ウイルス感染が本格的になった3月から学校は休校になり、多くの国民がマスクを求めて奔走した。
大学の卒業式も中止となり、たくさんの宴会や会合がキャンセルになった。首長は、それぞれにメッセージを発し、みんな我慢してきた。わずかに気を抜いたのが春分の日の3連休だった。
4月15日以前のそうした措置は、このシュミレーションに加味されているのかが分からなかった。

A  今程度の自粛を続けた場合なのか。
B  最初から防止策を実施しなかった場合なのか。
C   今後全ての防止策を実施しなかった場合」なのか。

を明らかにしないでマスコミは「41万人以上に死者が出る」という最悪の数値を強調した。
確率変数を変えればいくらでも数値は変わる。あくまで最悪のシュミレーションで41万人だという補足はなかった。41万人死亡というショッキングな数値だけが一人歩きした。ちなみに、池田信夫氏は「シミュレーションではなくフィクション」と批判している。

後出しジャンケンで「今になってそんな事を言うな」と批判されるかもしれない。
しかし、実際には、41万人は大袈裟だと疑うことを許さない「同調圧力」がある。
ここに記すことさえ勇気がいったのだ。

ゼロリスク」の病だ。

ゼロになるまで「まだまだ油断してはならない」と警告し続けるなら、もう非常事態宣言はいつまで経っても解除されない。いつまでも休校にしないといけない。

医者は患者ゼロや医療崩壊ゼロを目指した対策を提言する。
政府は経済的な死者ゼロを目指した対策を考える。
双方が歩み寄らないと、日本は崩壊する。

「命か経済かの2択はない。当然、命だ」という人もいるが、経済でも人は死ぬ。
「学校再開は後回し。教育の遅れは後で取り戻せる」という人もいるが、教育力は将来の国力だ。

5月末まであと1か月。東京や大阪といった一番の危機的な都市以外で、早々と休校宣言を出す必要があったのかどうか。

こういう疑問自体が「不謹慎だ」と思われるかもしれない。
しかし、入手した複数の情報を、自分自身で咀嚼して、自分なりの判断をアウトプットすることが大事だと思う。
もちろん一方的な過剰報道に飛びつく態度も戒めねばならないが、思っていながら反対意見を発しない態度も、情報社会にはそぐわない。

 

※以下の参考HPは、自分の都合のいい情報だけを引用する「確証バイアス」の証拠になるかもしれませんね。

◆緊急事態宣言前夜? 「感染者数」速報で不安を煽るメディアが全く報じないデータと発言

https://news.yahoo.co.jp/byline/yanaihitofumi/20200406-00171775/

◆「新型コロナで42万人死ぬ」という西浦モデルは本当か

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60207

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