優れた指導者は、GRITを見抜き、GRITを伸ばす。
『GIVE&TAKE』アダムグラント著(三笠書房)2014年。
1980年代、心理学者のベンジャミン・ブルームが行った調査によると一流のピアニストは、生まれながら才能に恵まれていたわけでもなく、一流のピアノ教師に習ったわけでもない。特徴的だったのは「思いやりのある、親切で、寛容な先生」に指導されたこと。
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超一流のピアニストは、ギバー(与える人)である教師によって音楽への関心に火がついたのである。
教師はレッスンが楽しくなるようにな方法をあれこれ工夫し、これがきかっけとなって猛練習をするようになり、専門的知識がついていったのだ。(中略)
同じパターンが世界的なテニスプレーヤーにも見られる。(中略)
最初のコーチは「優秀なコーチというわけではなかったが、子どものあつかい方がとてもうまく、テニスに関心をもち、練習をがんばろうという気にさせてくれた」ということだ。P174~176
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・・・なるほど、良心的な教師(本書では「与える人」=ギバーと呼んでいる)との出会いが、その人の一生を左右する。
教師の責任の重さを痛感させる一節だ。
さて、このあとの根性論が興味深い。
◆ずば抜けた才能を持っているかや、熱心に取り組んでいたかではなく、粘り強さが際立っているかどうかが将来性に大きく関わってくると言う。
◆心理学者のアンジェラ・ダックワーズは、これを「根性〜長期的な目標に向かって熱意を持って根気よく取り組むこと〜と呼んだ」とある。
◆ダックワースの研究では、知力や適性以上に、根性のある人びとが、関心、集中力、やる気によって、より高い業績を達成することがわかっている。P176/177
・・・これは、GRITのことだ。ここでは「根性」と訳されている。
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もちろん天賦の才能も重要だが、一定以上の能力を持った候補者がたくさんいたら、粘り強さは、その人がどこまで可能性を発揮できるかを予測する大きな要因になる。だから、ギバーは、根気のある人間に目をつけるのである。そして、じっくり時間をかけて、粘りのある人の背中を押すだけではなく、ギバーは根気のない人に根性そのものを植え付ける努力もする。(中略)
根性を養う秘訣の一つは、目のまえの仕事をより興味深く、やる気のあるものにすることだ。ブルームの調査によれば、才能のある音楽科やアスリートは皆最初、ギバーの教師から学んでいた。
こうした教師は子供好きで、正しいことをすると、褒めたり、ポジティブに賛同したり、ときにはあめ玉をあげたりしている。そして励ますことを常に忘れず、自分が専門とする分野と子供の指導に熱意を持っている。多くの場合子供とは家族や友人のように接する。このような教師の1番よいところは、子供が楽しくやりがいを感じながら、技能を学んでいけるようにしていることである。P 177、178
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GRITそのものは、個々の非認知能力の問題だ。
しかし、だからといって「個々の性分」で片づけてはいけない。
「与える人」=教師や指導者、コーチは、個々のGRITを見極めるとともに、GRITの足らない子には「植え付ける努力」をして、しっかり育んでいくようにと述べている。
GRITが足らないからと見捨ててはならないのだ。
これは、性格は努力次第で変えられるという「成長志向」による。
ドウエックの「しなやかなマインドセット」と重なる部分だ。今まで読んできた書物と重なるので、嬉しくてワクワクしてしまう。
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