物語の「題名」の分類は作文指導にもつながる 〜「ベストセラーコード」④〜
「タイトルの価値」という項目から抜粋して整理する。P204から212
元が洋書なので「A」と「The」の冠詞の違いの指摘などは、日本では不要であるが、それだけ新鮮であった。
(1)タイトルが「物語の展開する場所」
「コールドマウンテン」「シャッタシャッターアイランド」など。
◆著者がタイトルで場所を指定すれば、読者はその環境ならではのストーリを期待することになる。そうでなければそのタイトルをつけた意味がない。
◆タイトルとストーリーがうまく噛み合えば、タイトルの場所はストーリーを推し進める役目役割を果たす。小説を読み終える頃には、読者はその場所に愛着を感じるようになっているだろう。
(2)タイトルが「出来事」
「アクシデント」「ワンデイ」「キス」など
◆その出来事がプロットの中心になるだけではなく、物語の根本に関わる深い意味を持っているのでは、と思うだろう。
◆おそらく、その瞬間、その日、そのキス、その事故を境に、全てが変わってしまうのだろう。登場人物はそうした状況に対応したり、逆らったり、順応したりすることが運命づけられる。
(3)タイトルが「物体」
①何か特定の言葉が加わる場合
:「ドラゴンテイアーズ」は、ただの涙ではなく「ドラゴン」の涙
:「悪しき遺産」はどこかの遺産ではなく、「ブーリン家」の遺産
:「ダヴィンチ・コード」はただのコードではなく、「ダヴィンチ」のコード
②平易な言葉を2つ並べて関係を示し、読者に疑問を抱かせる場合
「サーカス像に水を」「琥珀の中のトンボ」など
◆象は水が飲めない状況なのか、なかにトンボが入った琥珀って何、と疑問が湧いてくるだろう。
③タイトルが単語1つ
「ゴールドフィンチ」「法律事務所」「ザサークル」など
◆冠詞は、「A」よりも「The」の方が圧倒的に多い。
◆タイトルの名詞が珍しいものだったり、何か特性されるものだったりする場合には、一般的なものであることを示す「A」をつけることで、普遍性や比喩的な意味合いを付加することができる。
④「A」も「The」もないタイトル
◆個別化を避けることで、テーマを比喩的に表現している。しかし「The」で始まるタイトルが最も広角的であることは間違いない。
(4)タイトルが人物
◆「ゴーンガール」のようなタイトルを見れば、読者の関心は自然と恋したい者としての登場人物に向かうだろう。
◆私たちが集めたベストセラーの5分の1は、登場人物を示すタイトルになっていた。
といっても、主役の名前そのものがタイトルになっているものはあまりない。(中略)
こうしたタイトルが示しているのは、その小説が、物語を最後まで引っ張る力を持つ、1人の登場人物を描いたものであるということだ。読者は、物語の原動力となるその人物の内面を知ることになる。
◆小説が勃興した18世紀から19世紀にかけては、人の名前をタイトルにした作品が多かった。これに対して今は何らかの言葉が出されていることが多い。
「ジェイコブを守るため」「フランクを愛して」「アレックスを殺せ」
これらのタイトルは、主人公の描写以上のものを示唆している。主人公の名前はプロットを構成する基本要素と結びつき、2つが一緒になって物語を作っている。
◆しかし主人公の名前をつけたタイトルより、その役割や地位を示したものの方がはるかに多い。
「アルケミスト(錬金術師)」「ゴーストライター」
タイトルはうまく選択できれば、行為主体性を前面に押し出し、それによって物語の中のアクションやドラマを際立たせ、さらに物語の構造、焦点、推進力、魅力を伝えることができるということになる。
・・・などなど。
題名が「人」「時」「場所」「主題」「クライマックス」に絡むことは、およそ理解できていた。ベストセラーとなるような作品は、読む前から読者を引き込むための仕掛けを「題名」に込める。
「題名」一つで、その本を読むか読まないかが決まることもあるのだから、題名の価値は大きい。
それは、作文活動(表現活動)でも同じことで、「夏休みの思い出」「楽しかった運動会」「『ごんぎつね』を読んで」のような平凡な題名をつけて満足させてはならない。
冒頭に書いた「A」「The」の違いで言えば、日本語の場合は
「あの日の出来事」
「ある一日」
「その日が来るまで」
「この日を待っていた」
のような指示語の使い方によっては、読者を惹きつけるのではないだろうか。
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