文学批評による批判的思考力の育成
文学批評による批判的思考力の育成は、現在世界の教育界で主流となりつつあります。
・・・国際バカロレアの文学教師である小林真大氏は、国際バカロレアが文学研究を重視する理由を次のように述べている。
国際バカロレア機構が発行した「指導の手引き」には、文学を学ぶことで「自立的に考え、独自性に富んだ、批判的かつ明晰な思考の発達を促す」ことができると明確に述べられています。このように、世界最先端の教育制度においても、文学批評は生徒の批判的思考力を伸ばす上で極めて重要な位置に置かれていることがわかります。 『文学のトリセツ』(五月書房新社)P 29
・・・そして、どのように文学を学べば批判的思考力が身に付くかについて、次のように述べている。
国際バカロレアは、生徒が批判的思考力を伸ばすためのカギとして、教師が文学作品を「異なる複数の批判的な見解」を通して体系的に教えることが不可欠であると述べています。実際、国際バカロレアを受講している現役の高校生は、多種多様な角度から文学テクストを論じることによって、批判的思考力のスキルを培う努力を続けています。P 29
・・・小林氏が示した「指導の手引き」と同じかどうか分からないが、「言語A:文学」指導の手引き」が検索してヒットした。
https://www.ibo.org/globalassets/publications/dp-language-a-literature-jp.pdf
「言語A:文学」と「知の理論」
文学の学習は、「知の理論」(TOK)の土台を形成する「問い」と「振り返り」に取り組むための多くの機会を提供しています。「言語A:文学」コースでは、文学作品を読む上 で、複数の異なるアプローチを取り上げます。また、言語についての綿密な分析はもちろ ん、文学を通じて示されるさまざまな異なるものの見方への理解、そしてそれらが生徒自身の文化(生徒自身の文化が複数ある場合も含めて)とどのように関わるかを理解することにも取り組みます。これらの活動はいずれも、生徒が知識の探究や、批判的思考、およ び振り返りに関わることを要求します。
批判的アプローチ
文学作品を独自に批評する力を身につけるためには、文学を学ぶ上での方法論についてある程度の知識が必要です。批判的なものの見方を教えることは、このコースに欠かせない要素です。作品の読解の可能性についての幅広い理解を生徒に促すため、与えられたテクストに対し、異なる複数の批判的な見解を強調する場合があります。
・・・小林氏は、次のようにも述べている。
◆今の日本の国語教育において、とりわけ問題に対して1つの正解を求めるような受験重視の授業では(中略)、批判的思考力が磨かれる機会はほとんどないと言って良いでしょう。25ページ
・・・「たった一つの教師の解釈」を正解とするのではなく、「自分の解釈を尊重し、多様な解釈の中から自分で選ぶ」ことを大事にするのが、
①国際バカロレアの求める文学批評の学力であり、
②PISAの求める読解力であり
③新学習指導要領国語の目指す学力である
ということか。
昨年の「中央公論」12月号「国語の大論争」の特集では、三森ゆりか氏の言葉が印象的だった。高校で「論理国語」と「文学国語」に分ける状況に対し、両者を融合する「分析批評」を評価するような見解だったからだ。
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残念ながら日本では文学や哲学を役に立たないものとして扱う傾向があります。また、日本では「文学を論理的に読み解く」という捉え方自体がないようです。私にしてみれば、文学と論理とを別ものとして分けてしまう方がおかしいと思うのですが、例えば、文学の中の登場人物の誰それさんは、こう考えた。それはなぜか。なぜなら・・という分析をすれば、それはまさしく論理です。つまり、文学であろうが詩であろうが契約書であろうが、すべて論理がなければ文章そのものも成り立ちません。論理とは言葉を秩序立てて組み合わせて作り上げるものですから
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・・・同特集の中で、金田一秀穂氏も「論理を突き詰めれば文学になるし、文学を突き詰めれば論理になる。だから国語を『論理国語』と『文学国語』の二つに線引きできるわけがない」と述べている。
これまでは『論理国語』と『文学国語』が分かれたことを、好意的に受け止めてきたのだが、国際バカロレアの「文学批評」の授業を知ると、世界から取り残されてしまったのかと真逆の感想を持つようになった。
「批判的思考力」を育てるつもりがないから「文学国語」の領域を残したのか?
そこは指導要領を読み込んでみよう。
※ おまけ
「文学のトリセツ」・・・この本では、「印象批評」「構造批評」などは、序盤の序盤。
その後、たくさんの「批評」のスタイルがあった。
脱構築批評・精神分析批評・マルクス主義批評・フェミニズム批評・ポストコロニアル批評・カルチュアルスタディーズ・障害学批評・エコクリテイシズム批評・人文情報学批評
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