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November 04, 2020

「同心円的拡大」という発想

 「同心円的拡大」は、社会科におけるキーワードだが、「人とのつながりの拡大」という意味では道徳的でもある。
「わたしたちの道徳」に引用されたまどみちおの詩は、「同心円的拡大」とは、少し意味が異なるが、ぜひ意識したい着想である。

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朝がくると とび起きて
ぼくが作ったのでもない
水道で 顔をあらうと
ぼくが作ったのでもない
洋服を きて
ぼくが作ったのでもない
ごはんを むしゃむしゃたべる
それから ぼくが作ったのでもない
本やノートを
ぼくが作ったのでもない
ランドセルに つめて
せなかに しょって
さて ぼくが作ったのでもない
靴を はくと
たったか たったか でかけていく
ぼくが作ったのでもない
道路を

ぼくが作ったのでもない
学校へと
ああ なんのために

いまに おとなになったなら
ぼくだって ぼくだって
なにかを 作ることが できるように なるために
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 もう少し「同心円的拡大」に直結した詩があったと思うのだが、見つからなかったので、今回は「朝が来ると」の引用にとどめることにする。

 さて、『漫画 君たちはどう生きるか』の中で、主人公コぺル君が「人間分子の関係 網目の法則」と命名した発見がある。

これは「同心円的拡大」の拡大と同じ意味合いなのだと思う。

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僕は、粉ミルクが、オーストラリアから、赤ん坊の僕のところまで、とてもとても長いリレーをやってきたのだと思いました。
工場や汽車や汽船を作った人までいれると、何千人だか、何万人だか知れない、たくさんの人が、僕につながっているんだと思いました。
でも、そのうち僕の知っているのは、前のうちのそばにあった薬屋の主人だけで、あとはみんな僕の知らない人です。
むこうだって、僕のことなんか、知らないにきまっています。
(中略)
だから、僕の考えでは、人間分子は、みんな、見たことも会ったこともない大勢の人と、知らないうちに網のようにつながっているのだと思います。
 それで僕はこれを「人間分子の関係、網目の法則」ということにしました。
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 このコぺル君の手紙に対するおじさんの返答の一部は以下の通り(かなり長文なので、ぜひ原文にあたっていただきたい)

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君は「人間分子の関係、網目の法則」という名前より、もっといい名があったら言ってくれ、と手紙に書いたね。
僕はいい名前を一つ知っている。それは僕が考え出したのではなくて、いま、経済学や社会学で使っている名前なんだ。
実は、コぺル君、君が気がついた「人間分子の関係」というのは、学者たちが「生産関係」と呼んでいるものなんだよ。
(中略)
人間が人間同士、お互いに、好意をつくし、それを喜びとしているほど美しいことは、ほかにありはしない。
そして、それが本当に人間らしい人間関係だと、コぺル君、君はそう思わないかしら。
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 まどみちおの「朝がくると」の話者の感動は、この目に見えない人とつながる「生産関係」にある。
「同心円的拡大」と「生産関係」は、意味が異なるのかもしれないが、自分の中では同じなのである。

 研究の感動も「学び」と「学び」がリンクしたりスパークしたりするところにある。
 日頃の活動と、過去の読書からの学びがつながることで、学びは「強化」されたし、このような宝探しが止められないから「学び」は続くのである。

 
【参考文献】
「社会集団拡大法の論理」 - J-Stage
https://www.jstage.jst.go.jp/article/socialstudies/1982/4...

【追記】
 先週、4年生の研究授業で、愛知県の土地利用について授業があったが、「土地利用」と言われても、子どもたちは何をどう考えてよいのか戸惑っていた。
授業後、谷先生からの受け売りだと注釈をしながら次のような話をした。

◆4年生に「愛知県の土地利用」について子どもに考えさせたいなら、まずは復習として3年生の時に学習した「春日井市の土地利用」を確認させる時間があるとよかったのではないか。
商業地域・農業地域・工業地域の分布の特徴、山間部・平野部・河川・インターチェンジや駅付近にはどんな特徴があるかを確認した上で、その特徴が愛知県でも同じように言えるのかを検証していく。
こんな形なら「仮説検証」っぽく授業が流れたんじゃないかな?

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