「コンピテンシー」の理解を深める(今さらですが)
文科省資料の「主体的・対話的で深い学びからの授業改善」を読む。
◆子どもたちに「生きる力」を育むために大切なのは「何を学ぶか」だけではなく「何ができるようになるか」
・・・「コンテンツ」から「コンピテンシー」と言われる部分だ。
「コンピテンシー」
=教科等を横断する汎用的なスキル
(例えば、問題解決、論理的思考、コミュニケーション、意欲など)
ということになるが、分かった気になっていたが不十分だった。
今回、自分の言葉でまとめてみたら、少しだけ理解が進んだ。
たとえば、校内研修を行った後の職員の感想
◆1年生の教材「じどう車くらべ」を構造的に考えてみて、すごくわかりやすかったです。1年生を担任したときに実践したいと思いました。
・・・ご本人を責めるわけではないが、これが、通常の教材研究の理解、つまり「コンテンツ」の理解だ。
◆1年生の教材「じどう車くらべ」を構造的に考えてみて、すごくわかりやすかったです。今の学年の説明文にも応用して実践したいと思いました。
となるのが、「汎用的な読解」、つまり「コンピテンシー」の理解だ。
私たちが常々主張する「基礎的読解力」は、言い換えれば「汎用的読解力」だ。分析批評のさまざまな分析スキルも、「汎用的なスキル」 だから、他作品の読みに応用できる。
ただし、教える側に「汎用性」の意識がなければ、教わった子どもも「他の作品への応用」を意識できない。
他の作品に応用できる汎用性を意識した授業展開
子どもに「他の作品にも応用してみよう」と思わせる授業展開
この「コンテンツからコンピテンシー」が、指導要領の骨子になっていることを、しっかり理解せねばならない。
市川伸一氏は、認知心理学の観点から「授業の振り返り」の内容について、次のような事例を書いている。
本時の振り返りで抑えさせたいことは、
①1平方メートルは、100センチかける100センチだから10000平方センチメートルだということが分かった
という「式と答え」=「必要知識」だけではなく、
②何を聞かれているか(定義に戻って)、ちゃんと考えると解けることが分かった。
③図にして表すと、解きやすいことが分かった。
・・・他の問題でも使える「汎用的な学習スキルの自覚」=「コンピテンシー」で振り返りの言葉を書かせたい。
本時の学びを言語化させるのが、授業ラストの振り返りのはずだが、そこまでの深い意図がなかなか浸透していないので、
◆「難しかった、楽しかった、頑張った」レベルの感想で許容するか、
◆そんな振り返りは意味がないから、最初から書かせていない
というのが多くの教室の現状だ。
昔から、「教材を教える」か「教材で教えるか」の議論はあった。「教材を通じて教科内容を教える」は、コンピテンシーの考え方である。
道徳授業の後段に行われる「価値の一般化」も、同じ意味だ。具体的な資料のエピソードから離れて自分事として思考させるのだから、コンピテンシーの考え方だ。
文科省初等中等教育局の白井俊氏の論文には、次の指摘がある。
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ここで注意しなければならないのは、コンピテンシーを重視すると言っても、そのことが、各教科等のコンテンツを軽視するものではないということである。
コンテンツを学習する過程において、コンピテンシーが育まれるのであるし、より高次のコンピテンシーを獲得することにより、さらに多くのコンテンツをより深く理解することが可能になる好循環が働くのである。したがって、コンピンテンシーを重視するとしても、コンテンツとコンピテンシーが二項対立で捉えられてはならないことについては、改めて留意が必要であり、一つ一つのコンテンツをしっかりと学習していくことの重要性が変わるものではない。大切なのは、コンテンツを学んだことで、どのような資質・能力が身についたかという学習の成果を意識することである。
「新しい学習指導要領を読み解くための視点」
http://www.saitama-city.ed.jp/04kanko/saitama/31/31/06-09.pdf
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以前、奈須正裕氏の講演で「コンテンツ・コンピテンシー」を聴いたのだが、なかなか腑に落ちなかった。
その日の資料とは違うが、奈須氏の講演資料を見ると、今は以前よりは理解できる。
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/wg2/0723/shiryou_05.pdf
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