« 語彙力を鍛える(2) | Main | 語彙力を鍛える(4) »

December 28, 2020

語彙力を鍛える(3) 言語コード論

『学力を育てる』志水宏吉著(岩波新書)2005年初版。

◆バーンステインの「言語コード論」が印象に残っている。

労働者階級の子どもが中産階級の子どもに比べて、学校で成功しにくい(よい学業成績をおさめにくい)理由を探る中で、彼が注目したのが「子どもたちの言語使用」である「言語コード」であった。
中産階級の家庭では、5W1Hが伝わる「精密コード」での会話がされる傾向が強い。
一方、労働者階級の家庭では、「メシ・フロ・寝る」のような単純な言葉(限定コード)で会話が成立することが多い。

==============
文化伝達の機関である学校では、授業を中心とするほとんどのコミュニケーションが精密コードでなされるため、それに習熟しているMC(ミドルクラス)の子どもたちは成功しやすく、逆に習熟していないWC(ワーキングクラス)の子どもたちは成功しにくくなる。
端的に言うならば、母親の話す言葉と先生の話す言葉とが近いWCの子どもたちはスッと自然に学校生活に入っていけるのに対して、その両者のギャップが生じやすいWCの子どもたちは、学校不適応・学力不振に陥りやすいというわけである。P101
================

・・・「論理的な表現」と「精密コード」が一緒だと思って読んでいたが、今は「語彙」と一緒かと思う。


============
クラスで喧嘩やトラブルがあったときに、あったことを筋道立てて説明できる子がいる一方で、言葉にならず、感情の赴くままの言動に走ってしまいがちの子がいる。バーンステインの「言語コード論」は、そうした現象の底流にあるものを析出しようとするものであった。P104
==============

・・・家庭の言語環境(保護者の言葉かけ)が学業成績に大きな差を生じさせるとしたら、日本の一般家庭はどうか?

日本の家族の会話は、子どもに合わせて易しい言い回しをすることが多い。
それが「限定コード」=「語彙習得の機会損失」になっているのではないか。

言葉足らずな表現を大人が安易に受け入れてしまうことについては、かつて次のように書いた。

===============
皆さんのお子さんは、言葉が足りないということはありませんか?
うちの息子は大学生ですが、テレビを見ながら、よく「水」と言います。
すると母親は「そうか、水が欲しいんだな」と水を用意してしまいます。
世間では旦那さんが「飯・フロ・寝る」しか言わないなんて話題になりますね。
これ、家族なら伝わりますが、社会では通じません。

給食の時に箸を忘れた子は、(本校では)職員室にスプーンを借りに来ます。

「先生、箸を忘れました」っていう子には、「だから何ですか?」と聞きます。

「スプーンを貸してください」と言う子には、「なぜですか?」と聞きます。

「何年何組の〇〇です」「箸を忘れました」「スプーンを貸してください」

この3つがそろわないと言葉足らずで相手に伝わらないのです。
これからは「伝え合う力」が求められます。
ご家庭でも「水がほしいんだね」みたいに子どもの言葉足らずの部分を先どりするのではなく、ちゃんと自分の言葉で説明する訓練をしていただきたいです。

=================

不十分な子どもの言葉を安易に受け入れる大人は、語彙力をスポイルしているのだ。

|

« 語彙力を鍛える(2) | Main | 語彙力を鍛える(4) »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« 語彙力を鍛える(2) | Main | 語彙力を鍛える(4) »