「語彙力を鍛える(6) ~ワーキングメモリーが弱い子ども~
手元に「読み理解を促す語彙学習」の資料がある。
「実践障害児教育」2019年1月号・2月号「学習困難な子に効く ワーキングメモリー活用術」河村暁氏の論稿だ。
冒頭に「語彙はなぜ大事なのか」の章がある。
◆「今年の柿は 豊作で、安い価格で おいしいものが 出回っている」
子供に馴染みがない太字の単語を「実在しない非単語」に置き換えると、例えば次のようになる。
◆「のけさの柿は くみぬらで、安いそめらで おいしいものが どみらみもいる」
知らない単語に出会った子は、たとえ文字は読めても意味が分からないことを、このように非単語を用いた文例で示している。
河村氏は「ワーキングメモリーの言語領域が弱いと、語彙量が少なくなりがちである」と述べる。
①初めて聞く音を覚えられない
言語領域のワーキングメモリーが弱い子どもの中には、初めて聞く言葉を正しく認識できない子がいる。
「へいこうしへんけい」のような長い言葉を「へい・・」としか復唱できなかったり、「テレビ」を「てびれ」にように覚え間違えたりして、効率的な語彙学習が難しくなる。
②情報を処理しながら覚えられない。
文章を読むことは子どもの語彙の大きな供給源になっている。しかし言語領域のワーキングメモリーが弱い子どもは、言葉の意味を学ぶ学習(情報の処理)をしている間に言葉を忘れたり、言葉の意味を思い浮かべられなかったりして、効率的な学習が難しくなる。
定型発達の子は1年間におよそ7500語(1日に20語)の言葉を覚えていく。
語彙量が多い子は、読んだ内容を理解できるので読書量が増え、ますます語彙量が増える
一方、語彙量が少ない子は、読んでも理解できないので読書量が増えにくく、語彙量も増えない。各教科の「れき岩」「前方後円墳」「直方体」などの単語の意味を覚えにくい。
しかも、「読めない」「書けない」に比べて、語彙量が少ないことは発見されにくい。
・・・このように「語彙の少なさ」が抱える課題は多いのだ。
①その言葉を知っているかどうか・・「既知度」
②どういう意味か・・・・・・・・・「辞書的定義」
③どんな風に使うか・・・・・・・・「文脈的定義」
の3つの質問で子どもの語彙量を把握せよと述べているが、この①②③は語彙習得のステップである。
ステップ③までいかないと、語彙は自分のものとして活用できない。
部屋の整理をしていたら、息子の大学入試問題集が出てきた。
数学や物理の問題は、まさに「宇宙語」で書いてあるように思える。
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