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January 04, 2021

「語彙力を鍛える」(7) 言葉にこだわる

品のない論争の場合は、悪意のある同義語を駆使して、イメージダウンを図る。これを「攻撃用語」と呼ぶ。
例えば、昨年12月30日の中日新聞の社説。

今年大統領選が行われた米国では現職大統領が自国民を威圧、分断し、投票結果にも難癖をつけて覆そうとしています。

・・・「威圧、分断」はトランプ陣営だけの問題なのか、「難癖」とあるが全ての投票結果に不正はないと確定したのか、そう思うと、明らかに攻撃用語を駆使しているなと思う。

追求する野党議員に対し、安倍氏はこう強弁し続けました。これらがすべて虚偽だったわけです。
(中略)安倍氏が首相任期在任中、国会審議の中で行った虚偽答弁は百十八回に上ります。

・・・安倍氏本人は「結果として、答弁の中には、事実に反するものがあった」と述べている。
「事実に反する答弁」と「虚偽答弁」は意味が違う。「虚偽答弁」は意図的なものだ
相手を貶めるために「虚偽答弁」という表記を使い、フラットな「答弁」を。悪意ある「強弁」に置き換えて「傲慢さ」を印象付けた。
私は冷静に読んでいるが、この社説を読んで「安倍氏はとんでもない」と思う人もいるわけだ。

言葉にはフラットなものと、感情を加味したものがある。
野球の試合の「勝利」がフラットなら、「快勝」「大勝」「楽勝」「辛勝」は感情が入っている。
「勝利」の反対語は「敗北」。「敗北」と言った時点で感情が含まれている気もするが、「惨敗」「惜敗」「大敗」などが感情の入った表現だ。スポーツ新聞の見出しは、語彙の宝庫である。

前にも書いたが「言いました」は、場面に応じて様々に言い換えることができる。
言い換えることで、その場に応じた感情を加味することができる。
だから「要約・大意・ストーリー」にこだわると、些細な言葉の違いにこめた感情がスポイルされる。

若い頃、「何が書かれているか(内容読み)」と「どう書かれているか(表現読み)」の双方の指導が必要だと教わってきた。
時々そのことを思い出して、内容に偏りがちな自分の読み方を戒めている。

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