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March 30, 2021

教師は「ほめる」よりも、まずは「驚く」が大事。

2017年3月に行われた名古屋での谷和樹先生のセミナーで、教師は「ほめる」よりも、まずは「驚く(驚いてみせる)」というアドバイスがあった。
 

「驚かない教師は辞めた方がいい」

 

とどこかに書いていた記憶もあるが、探せなかった。

 

「教育トークライン」から「ほめる」と「驚く」の記載を抜き書きしていたが、正しい原典を明記していなかった。

 

◆黒板に書いておいたことをやってくれた子を褒める。
◆書いてないのにやってくれた子を褒める。
◆教師が給食当番を手伝い、準備が速くできたところで子供たちを褒める。
◆ノートに、次々に○を付けるながら、ほかの子たちにも聞こえるように、驚きながら教師が読んであげる。

 

「そうだね!よく気付いたね」

「え!そんなこと写っている?」

「びっくりした! そんなところも見ているんだ!」

・・・みんなと違う視点で書くと先生が驚いてくれる。どんなささいな意見も認めてくれる。

 このリアクションが、子供をますますやる気にさせる授業のマジックだ!

 大袈裟に驚く教師のパフォーマンスが大事で、教師は「役者であれ」と言われる所以でもある。

 ちなみに、褒め言葉の「さしすせそ」は、むしろ「驚き」に近い。

 

「さ」・・さすがだなあ。

「し」・・知らなかったなあ。

「す」・・すごい・すばらしい。

「せ」・・先生みたいだ。

「そ」・・そうなんだ。そういうことか。

 

ところで、かつてTOSSの検定模擬授業で、

「速い、速い子は賢い!」「すごい、天才!」
 

という褒め言葉が極めて機械的で心がこもっていないので落胆したことがある。
ほめ言葉を決まり文句のように言われても何も嬉しくない。
ワンパターンのほめ言葉では子どもには響かない。
大事なのは、そこに「驚き」や「感激」があるかどうかだ。

 

①よし ②すごい ③うまい ④さすが ④すばらしい ⑤完璧 

⑥上手 ⑦驚いた ⑧感激した ⑨素敵 ⑩最高 

⑪合格 ⑫惜しい ⑬あと少し 

・・・どれも「そんなのできて当たり前でしょ」と思った途端に、驚きと賞賛は吹っ飛んでいく。

心から「すごい」と思わないなら、「すごい」なんて言わないことだ。お世辞では子供は動かない。


 かつて、学校に送られた「英語情報 2017冬号(日本英語検定協会)」に「CLASSROOM ENGLISH!!!」の連載があり、大木優喜子氏がほめ言葉を紹介していた。
 Englishとしても大事だが、日本語でもこれくらいのバリエーションでほめていきたい。

 

(1) Good(良い)の他にも使える一言褒め言葉(Goodの類義語集)

①Very good! とても良い!
②Terrific! 大変良い。
③Fantastic! 素晴らしい!
④Well done よくできました!
⑤Great! とても良い。
⑥Wonderful 素晴らしい!
⑦Excellent! 優秀!
⑧Close 惜しい!
⑨Awesome! とても良い
⑩Supreme! 素晴らしい!
11 Perfect! 完璧!
12 Wow! わあすごい

 

(2) Good job(よくできました)の他にも使える表現

①Much better!      前より大変良くなりました。

②keep up the good work! その調子でがんばってください

③Thats great idea!    とても良いアイデアですね。

④I know you can do it!  あなたならできます

⑤Great teamwork!    とてもよいチームワークです

⑥Thats an interesting point 面白い点ですね

⑦Good try!       よい試みです。

⑧Great effort!     大変良い努力です。

⑨Thats a good guess!  良い推測です。
 

・・・ア、努力を褒める イ、結果を褒める ウ、成長を褒める 

エ、試みを褒める オ、発想を褒める カ、協力を褒める 

などが観点になるか。

 

(3)生徒の具体的な態度、能力を褒める表現

※生徒一人一人を褒める時には、具体的に何が良かったのかを示す。

①You make lots of effort to speak English in class!
あなたは授業で英語を話す努力をしています。


②Your writing skills have improved so much! 
あなたのライテイング能力はとても進歩しました。


③Im impressed by your speaking skills! 
私はあなたのスピーキング能力に感心しました。
 

(4)その他の生徒一人一人を褒める表現

①You work very hard! 
あなたはとても一生懸命勉強しています。


②You worked very hard in class today! 
あなたは今日の授業でとても一生懸命勉強しました。


③I love having you in my class! 
あなたが私のクラスの生徒でうれしいです。

 

・・・(3)はピンポイントの褒め方、(4)は総括した形の褒め方と言えるだろう。

「あなたは努力や成長をしています」という客観パターン
「私はあなたの努力や成長に感心しています」の主観表現のパターン

の2つのパターンがあることが分かる。

 

(5)クラス全体を褒める時の表現

※クラス全体を褒めることによって、生徒との間にチームワーク・統一性が生まれます。

①Thank you for sharing your ideas! 

 みんなのアイデアを話してくれてありがとう。

(注「おたがい意見を出し合ってありがとう」という意味かな?)


②Everyone worked very hard today! 

今日はみんなとてもよくがんばりました。


・・・授業のまとめや帰りの会の最後のお話でみんなに伝えたいメッセージという感じ。

ただし、繰り返すが、形式的なほめ言葉になっては意味がない、

ありきたりの褒め言葉ではなく、その場に一番相応しいオリジナルな言葉かけをしていきたい。

 

過去のダイアリー「科学的に正しい『ほめ方』のルール」もオススメです。

http://take-t.cocolog-nifty.com/kasugai/2019/04/post-512263.html

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March 29, 2021

「教育技術」についての考察

(1)
行動科学マネジメントやABCモデルをベースにした『教える技術』石田淳(かんき出版)では、
「教える」とは、相手から”望ましい行動”を引き出す行為であるとされている。
・できていない行動をできるようにする。
・間違った行動を正しく行動へ変える。
「望ましい行動を身につけさせる行為」
「望ましい行動を実践させる行為」」
「間違った行動を正しい行動へ変える行為」
といった記述がある(P25.26より)。
(2)
野口芳宏先生が好んで使われたワードに「向上的変容」がある。
 向上的変容がないなら、授業の意味がないというわけで、野口氏の向上的変容は行動科学マネジメントに合致した考え方であったと言える。
(3)
向山洋一先生は『新訂 教育技術入門』(明治図書)の中で、教育技術について「少しごてごてしているが」と注釈をつけた上で、次のように定義している。(P33)
===========
教育技術とは何か
できるだけ少ない手間で、教えられる側に知識・技能などをねらいに沿って身につけるようにする習練によって身につけた教える側の行為
===========
・・・これまであまり意識してこなかった「できるだけ少ない手間で」という部分が今日は引っ掛かった。
◆教育技術を得ると技術のない段階に比べて、「少ない手間」でねらいが達成できるようになる。
・・・これを「教師がラクできる」と解釈することも可能だが、今の自分はそう思わない。
◆5分あればかなりできる。
◆全体に時間が早くなれば、別の活動を加えることができる。授業内容がますます濃くなっていく。
という部分とリンクするからだ。
(4)
これは、かつて岡本浩一氏の『上達の法則』(PHP新書)を自分流にまとめた次の3つの上達の効用と重なっている。
1:同一量を短時間でできるようになる。(時短)
2:同時間で多量にできるようになる。(増量)
3:精密・正確にできるようになる(精度のアップ)
『上達の法則」のサブタイトルは「効率のよい努力を科学する」。
向山先生の言う「できるだけ少ない手間で」と岡本氏の言う「効率のよい努力」は同じ意味であると理解できる。
教える側の指導技術が向上して「時短」「増量」「精度のアップ」が可能になれば、教わる側の個々の技術・技能も「時短」「増量」「精度のアップ」が期待できる。
※なお、
「上達の法則」には以下の効用も挙げられる。
4:他への応用が効くようになる(転用)
5:新たな視点を創造するようになる(独創性)

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市営プールにチェックに行く 〜次年度の水泳指導の素案〜

次年度のプールは実施する方向で考えることになった。
一般のプールはどうなっているのか知りたくて、週末、近くの市民プールに行ってみた(2キロほど泳ぎましたよ。)

①受付で氏名と連絡先を記入し、用紙を提出する。
②体温は自己申告なので検温はなかった、大丈夫か?
③入場者に比べて空いているロッカーが少なかったから、ロッカーは使用制限しているようだ。
④密になる小さな溜まり場のプールは使用禁止。
⑤プールの使用にルールに大きな変更点はなかった。一方通行で黙々と泳ぎ続けるから、他人と接触する機会がない。互いに距離をとって泳ぐからね。
⑥すいていたので、隣のレーンの人と接することもなかった。でも、コースロープがないと、接してしまうな。
⑦休憩は、互いに距離をとって。マスクをしていないんだから当然か。
⑧シャワーはすいていたから問題なかったが、学校のシャワーは間隔を取らないといけない。冷たいからとキャーキャー騒がれても困ります。
⑨ドライヤーを使ったら消毒するようにと、アルコールが置いてあったが、これは学校では関係なし。
⑩フェイスガードは不可だね。

というわけで、以下が仮の考察。
体育主任と相談して、年度当初に起案してもらうことになる。

①水泳指導に参加するかどうかは保護者に決めてもらう。
感染症の不安で参加させない子の自由は尊重したい。
事前に以下のような指導方針を伝えておく。

②これまでは学年3クラスで一緒に泳ぐこともあったが、2クラスが上限。

③更衣室の着替えはやシャワーは、時間差で密を防ぐ。

④マスクは外すので、大声は出さない、接触しない。

⑤コースロープを張って、一方通行。
自信のない子はプールサイドに近いレーンを使う。

⑥とにかく距離を保ち、呼気に注意。
子どもペアでの水泳訓練はしない。ビート板で練習する。

⑦自由遊びの時間は取らない。

⑧フェイスガードは不可。

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仕事を抱え込まないために、他者に依存する。

かねてから「外付けハードデイスク」という例え話が好きだった。

外付けハードデイスクに保存すれば、内蔵メモリに影響しない。
同じように、仕事の一部を他人に任せれば、残りの自分の仕事に集中できる。


自分はこれまで、何から何まで自分で抱え込むような仕事の仕方をしてきて、いつも内蔵メモリがオーバーしていた。

また「あれもやらねば、これもやらねば」と思うことで処理速度が停滞していた。

人に頼むより自分でやった方が早い、自分の要求水準が他人には伝わりにくいといった理由で、結局、他人に仕事を任せ切れなかったのだ。

しかし今年度は周りの先生、事務さん、用務員さんが頼りになるので、まるで外付けハードディスクで仕事をしているかのように安心してお任せできた。

おかげで、自分の内蔵メモリーに余裕があった。処理速度に遅れもなかった。

ちなみに、椿原先生の中部地区学習会を開催した際も、申し込みや入金確認作業、アンケートなどを若いお二人に100%お任せし、何のストレスもなく終えることができた。

無論、この「他者依存」に甘えてはいけない。

他者にお任せして空いた時間で自分のできることを充実させていかねばと思う。

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年度当初の授業だから、子供を押し切ることができる!

同じサークルの先生の実際の国語の授業(中学校)を見たことがある。
隣同士の男女ペアで交代読みをさせていた(暗唱チェックだったかも)。
当然のように生徒が男女で向かい合ってペアで学習させている姿に「押し切ることの強さ」を感じた。

ミニ漢字テストの答え合わせをさせる時、隣同士(の男女)と指示しているのに、前後(の男男、女女)で勝手にペアを組み、それを黙認(容認)してしまう先生がいる。
どっちでもいいならどっちでもいいが、男女ペアで指示に従っている一方で、勝手にそれを無視する行為を容認するのは、要するに「先生の指示は無視してよい」と教えているようなものだ。

先日のオンライン例会では、中学校でも漢字スキル指導の中で空書きをさせていると話していた。
「空書きをきちんとさせる」ことも同じで、きちんと押し切らないと、やる子はやって、やらない子はやったふりで誤魔化す。
そして、教師の指示がザルの目のように抜け落ちていく。

「やらせるなら、きちんとやらせる」

これは、最初が肝心で年度途中での軌道修正は難しい。

「自分の授業はこのやり方で行います」

年度当初なら、宣言が可能であり、アドバルーンも叩くことができる。

だから、最初の授業、最初の5分、第一声が大事であり、「何を宣言するか」が大事なのだ。

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「伝え方の技術」と「発問の原理原則」

Tutae

佐々木圭一『伝え方が9割』(ダイヤモンド社/2013年2月)から学ぶことは多かった。

好きな異性をデートに誘いたい場合、どちらがOKしてもらえるか。

 

A:「デートしてください」

B:「驚くほどうまいパスタの店があるのだけど、行かない?」
 

Bは、

①「デート」という漠然とした希望でなく、「イタリアンで食事」という具体的な自分の希望を明示している。

②おいしいパスタの店なら行ってもいいかなと相手の利益をアピールしている。

③「断る=フる」ではないから、逆に、相手は断りやすい。

④答えやすさ、イメージしやすさなど、相手意識が高い。

 

・・・佐々木氏は、「伝え方はセンスだけで決まる」という考え方を否定し、「伝え方には技術があり、共通のルールがある」という。

「教え方」も同じように「センスではなく、技術なのだ。共通にルール(原理原則)がある」とトレースして読んだ。

 

そこで、「発問の原理原則」と重ねてみた。

 

①行くか行かないか、「選択的」に問うている。

 

②「うまいパスタ」と味覚に訴えている。「知覚語で問う」という原理に則している。

 

③「うまいパスタ」「うまいパスタの店」は、具体的で「イメージ語」とも言える。


④「デート」という直接の目的を言わない「間接性の原理」

 

発問の原理原則には、そのほかに「数を問え」「位置を問え」など、まずは5Wが基本になっていて、「どんな」「なぜ」が抽象的だから答えにくいことを自覚せよと言われてきた。

 

出典はどこか何点かあたってみたが、まだ見つかりません。

でも、法則化初期の先生には、それは共通認識になっていましたね。

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March 13, 2021

セミナー参加で「錯覚」させる


長谷川博之先生の『成功する生徒指導の原則』の中に、「生徒指導は錯覚である」という名言がある。

==========
まずは「俺でもできるかもしれない」「私だってやれるかもしれない」と思わせる。
そして小さくてよいから、最初の一方踏み出させる。
それからは、1日の進歩を見取って褒め、励まし、理想の行動を強化していく。
最終的に錯覚を現実のものとする。
P10
===========

・・・セミナーに1日(数時間)参加しただけで、急に授業がうまくなり、急に生徒対応がうまくなるはずがない。
でも「錯覚」でいいから、「明日から頑張れそうだ」と思わせたい。
参加した先生には、少しでも希望を抱いて翌週を迎えさせたい。

大村はまで有名な「仏様の指」の話も、本人にとっては「自分でやったのだ」という自信が大切なのだと示唆している。
荷車の男が仏様のひと押しに気づかなくてもかまわないのだ。


とはいえ、片々の教育技術の中には、一度聞いた、すぐに実行できることもある。

「おへそのこちらに向けなさい」のような可視化できる指示、
「ゴミを10個拾いなさい」のような具体的な数を示した指示
「教室をきれいにしてごらん」のような、自主性を尊重した指示。

など。
一生かかっても習得できないような高度な教育技術もあれば
知ればその日から使える教育技術もある。

その日のうちに使いこなせる技術などは、所詮、些細なものかも知れない。
でも知ると知らないでは大違いだ。
できるスキルは多ければ多いほど自信になる。
錯覚でもいいから自信をもって教壇に立ってほしい。
おどおどしていては、授業を受ける子供たちも迷惑なのだ。

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March 01, 2021

「授業は組み立てが大事」という発想があるか

「教科書を教える」「教科書通りに授業をする」が正しいからと淡々と授業するのは間違っている。
心ある教師なら、授業を受ける子供たちの実態を踏まえて工夫する。
そのちょっとした工夫もしないで授業をすれば、うまくいかないのは当たり前だ。
工夫の筆頭が「授業の組み立て」で、1時間の(あるいは1単元の)授業の構成力・演出力は極めて重要なスキルだと位置付けている。


例えば「上」という漢字の書き順を問えば、一画目が縦か横かで分裂が起きて盛り上がる。

だからといって「上」だけ問うのはもったいない。

 

============

 さて、私の漢字指導の導入部分だが「川」「山」「上」と順番にやってきて意味をもつ。

 むろん「上」だけから入ってもいいのだが、反応がちがってくる。

「川」「山」をやることにより「空書き」に慣れ、「学習」に身も入ってきて、準備完了となるわけである。

 そして、本番の「上」に入る。

 このように「組み合わせ」というか「順序」が大切なわけである。

 これを「上」「川」「山」の順にやったら、何も面白くない。

 また「飛」「向」「上」の「組み合わせ」では何をやったか分からない。

 このように、授業では「組み合わせ」「順序」がものを言ってくる。

(『向山洋一教育要諦集』第2巻 第6章 授業の組み立て 158ページ)

================

「口に二画」の漢字に場合も、各自ノートに書かせれば、答えはたくさんあるから知的で面白い。
しかし、その後の発表のさせ方がポイントで、工夫がなければ「歓喜」の声は上がらない。
普段脚光の浴びない子がクラスで唯一の答えを発表するといった、場の演出もできない。
ただ挙手した子を順番に当てるだけでは、「宝をドブに捨てる行為」なのだ。

授業を組み立てる、授業を演出する

その組み立てや演出が教師の知恵の絞りどころ、腕の見せどころなのだという意識がなければ、おそらく得られるリアクションも薄い。
子どもが熱中するという成功体験がない先生は、工夫のない授業を続け、子供がますます沈んでいくという「負のループ」に入ってしまう。

教師が工夫する ー 子どもの反応が良い ー ますます教師が工夫する

という「正のループ」ができるよう、私たちは支援したい。

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