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August 28, 2022

「知的好奇心」を喚起する授業の条件

『知的好奇心』波多野誼余夫・稲垣佳世子著 中公新書1973初版。

 

自由な探索の過程で自分の能力に合わせて挑戦することが興味を維持し学習効果を高める・。

・・その一例として「磁石」の学習場面が挙げられています(P104~107)。

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 どういう性質の物が磁石につきやすいかがよくわからないうちに砂鉄や石(磁鉄鉱)を出して、「さあ、おもしろいですよ。これもすいつきますよ」といった導き方はあまり好ましくない。子どもにとっては、そのおもしろさがわかりにくい。彼のそのときに持つ「知識」に挑戦する対象として砂鉄が示されたのではないからだ。

 このようなときには、まず最初のうちは、子どもに自由に磁石をいじらせる。彼は自分のまわりの物に対して手あたり次第磁石をつけてためしてみようとするだろう。多くの場合、磁石にすいつくか否かに関して典型的な事物が試されるだろう。そうしているうち、木製の物はすいつかない、つくのは金っ気のあるもの、ピカピカ光る物らしい、という予想が形づくられるだろう。

 しばらくいろいろためしていて興味がやや低下したとみられるところで、彼らの予想に「挑戦する」事物を与えてみるのである。たとえば、メッキされたアルミニウム製の物と、メッキされた鉄製の物を準備したり、磁鉄鉱や砂鉄を用意したりする。あるいは、棒磁石、大小のU字型磁石、電磁石などを用意するのである。

 みかけはピカピカに光っていても、磁石につく物もあれば、つかない物もある。石や砂など磁石につくものか、と思っていたらすいついた。これらは、子どもを驚かせ、さらに探究することを動機づけるだろう。また磁石を近づければ、近づけるほどそれからはなれようとすることがある。スイッチを押すと磁石のようになるが、スイッチをはなすとそうでなくなる物がある・・・。これらはさらに事物のいろいろな側面を綿密に探索することを動機づけるかもしれない。」

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(1)自由試行させる(飽きるまでの体験させる)。

(2)予想させ、自我関与させる。

(3)固定概念を崩すような難しい課題に挑戦させる。

 

などのポイントが読み取れます。

 

◆磁石は、他の物にくらべ、環境の「応答性」を増幅する。子どもの反応に応じて、つまり、子どもが磁石を事物に近づけるのにしたがって、事物がすいついたり、すいつかなかったり、はっきり「応答」してくれるからだ。(P107)

◆子どもの疑問に、はじめからていねいに答えすぎない、ということだ。もちろん、子どもの疑問を無視したり、適当に答えてその場をやりすごしてしまうことは好ましくない。しかし、あまりに完全な答えを与えすぎるのも問題だ。むしろなるべくヒントを与えるなどして、まず子ども自身に自分で考えさせようとすることが大切である。(P108)

◆自由な雰囲気の中で、子ども同士の積極的な相互交渉を奨励することも大切である。(P108)

 

などの記述を元にすると、以下のポイントも読み取れます。

 

(4)「応答性」のよい教材を選ぶ。

(5)教えすぎない。

(6)子ども相互の関わり合い(集合知)を活かす。  

 

『教育トークライン』2019年1月号(東京教育研究所)で板倉弘幸氏が『知的好奇心』について触れ、向山洋一氏の次の言葉を紹介していました。

 

◆「知的好奇心は、今まで何気なく見過ごしてきたことに対する違和感から生じる」

 

 有田和正氏の「はてな帳」の発想に通じるし、向山先生がよく言われる「あれども見えず」に通じます。

 『本当は大切だけど、誰も教えてくれない授業デザイン41のこと』大前暁政著(明治図書)にも、「あれども見えず」を顕在化させる記載が、何か所か出てきます。

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◆授業は子供が素通りしてしまう情報に気づかせ、認識の飛躍を促すことが大切になるのです。子どもの知識の枠組みがさらに強化されるからこそ、知的に満足するのです・P077

◆このように、ある情報を見せても、すべての情報が見えているかどうかは別の話なのです。人は知らないものは見えず、重要でないと思っているものも見えないのです。/ どんな人でも、自分が重要だと思い込んでいる情報だけを選択して見ているのです。P138

◆初学者は、どうしても知識と経験が不足しているので、大切な情報を見逃したり、素通りしてしまったりすることがあります。つまり「心理的な盲点」があるのです。その心理的な盲点に気づかせるためにも、発問を用意しないといけません。/ これは、認識の飛躍を促すことでもあります。発問によって、自然には気づけない内容に気づかせ、問題を焦点化し、一段上の考え方ができるように導くのです。P167

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 大前氏は、「主体的な学習」には、次の順序が大事だと述べています。

①気づきや疑問、調べたいことを発表させる

②子ども同士の意見の食い違いに焦点化する。

③教師が発問する。

・・・この①②③は、

①「分かったこと・気づいたこと・思ったこと」の列挙

②対立点の明確化

③教師の発問による「あれども見えず」の顕在化

 

ということで、向山先生の授業の流れと同じなのだと理解できます。

 

「楽しい授業」は、エピソード記憶として長期化されやすいので学習効果が高いです。

「楽しい」は、単なる冗談や悪ふざけではなく、「知的な好奇心」をベースに考えたいところです。

 

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