具体と抽象・・・エピソードと教訓
「イソップ童話集」は、「イソップ寓話集」です。岩波文庫は「イソップ寓話集」と書いてあります。
イソップ寓話には、いろんなお話があります。
◆アリときりぎりす◆うさぎとカメ◆北風と太陽◆おおかみ少
聞き慣れない言葉ですが、「寓話」とは、お話を通して教訓を伝える作品、「寓喩」を使ったお話のことです。
お話そのものが、ある教訓を伝えるための「比喩」 になっているという意味です。
「寓喩」世界大百科事典内の寓喩の言及【アレゴリー】より
すなわち,ある事物を,直接的に表現するのではなく,他の事物によって暗示的に表現する方法の意であるが,この表現方法によって創作された文学作品あるいは造形芸術作品を一般にアレゴリーと称する。寓意,寓喩,風喩ともいう。
アレゴリーとは、抽象的なことがらを具体化する表現の一つで、おもに絵画、詩文などの表現芸術の分野で駆使される。
意味としては比喩(ひゆ)に近いが日本語では寓意、もしくは寓意像と訳される。詩歌においては「諷喩」とほぼ同等の意味を持つ。
また、イソップ寓話に代表される置き換えられた象徴である。(Weblio より)
用語の定義にこだわると深みにはまるので、飛ばします。
宗教の説法などにも「例え話」がたくさんあります。
http://j-soken.jp/category/ask/ask_7/ask_7_6
・・・「○○の心がけを大事にせよ」と説かれてもピンとこないので、例え話や具体例をあげて、なるほど確かにそうだなと納得させるのが説法です。
話が上手な人は、例えがうまいのです。詐欺師も例え方がうまいのでまんまと騙されます。
兼好法師の「徒然草」も仁和寺の法師の段が「先達はあらまほしきことなり」で結んでいたりするように、「このような失敗談から我々は〇〇を学ばねばならない」と説かれた話が多いです。
道徳の授業も、事例を通して「徳目(指導内容)」を考えさせます。
「思いやりを大切にしよう」と唱和させるだけの授業は「道徳」とは言いません。
「正直が大事だね、思いやりが大事だね早合点はダメだね」
・・・イソップ寓話や日本昔話の読み方に慣れていれば、いろんなお話には、その奥に言いたいことや学べることが隠されているのだと十分理解できます(もちろんそのような奥のないお話もたくさんあります)。
◆よかったね、どうしてこんないい結末になったのかな?
◆あらあら残念な終わり方だったね、どうしてこんなひどい結末になったのかな?
を考えさせれば、それを「主題」と呼ぶか「教訓」と呼ぶか「自分なりの発見」と呼ぶかは別にして、作品から何かメッセージを読み取ることができます。
無理に教訓めいたものを読み取る必要もないし、教師が感じた教訓を押し付ける必要もありません。ただ、小さい頃から、「このお話から何を学べるか」という視点で本を読む習慣をつけておいて損はありません。
イソップ寓話の教訓は特定できますが、通常の物語作品の主題は1つとは限りません。
読者の人生経験なども関わってくるので、読者によって作品の受け止め方も違います。
一つの「正解」の周りには許容される解釈があり、それを鶴田清司氏は「周解」と呼びました。
そして、「周解」を超えて拡大解釈してしまうことを「曲解、誤解」と呼びました。
石原千秋氏は、学者が提唱する新たな解釈は、曲解に近いものが多いと言います。ありきたりの解釈では誰も注目しないからです。したがって、専門家である学者のトリッキーな曲解は解釈の域を逸脱しているかもしれないという冷静な判断は持っていたいです。
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