対比は奥が深い (7) 過去の実践研究例
① 『虻 』 (光村5年上);虻 嶋岡 晨
この詩から考えられる 「〜は〜より大きい」をたくさん書くことで、「現実の人間の小ささ」と、それと比べた「人間の精神 (生命)の大きさ」に気づかせた。対比を意識した始めての実践である。
② 『大造じいさんとガン』 (光村5年上)
1年目と2年目の違いや似ている所を見つけさせる中で、 年々計略を凝らす大造じいさんと、これに対抗する残雪とのかけひきを正しく解読しようと試みた。
③ 『3人の旅人』 (光村5年下)
3人目の旅人が真の幸せを見つけてくるという形は、3年目の戦いでじいさんの考え方が変わる 『大造じいさんとガン』 と同じ展開である。この場合は対比によって3番目のブラウンさんの旅を際立たせることより主題に迫らせることを試みた。
④『野ばら』(光村6年上)
作品の内容や構成を把握するため、そして、作品の主題や象徴性に迫るために 以下の発問の流れを組んだ。
1, この物語で対比されている言葉は何ですか。
2, 「老人と青年」 に関係する対比は何ですか。
3, 物語の筋にそった対比は何ですか。
4. この作品で1番大切な対比は何ですか。
発問4に対し「野ばらが咲くと枯れる」 「戦争と平和」 「生きると死ぬ」 などが 同じような意味を持つ対比でであるという反応があった。初発の感想では「よく分からない」が多かった作品であるが、「対比」を用いることにより、暗示性・象徴性に迫る深い読み(解釈)に取り組んだ。
⑤ 『やまなし』(光村6 年下)
1, 「十二月」の場面は「五月」とどんな違いがありますか。
2,「十二月」が平和だなあと感じる言葉はどれですか。
3, 「かわせみ」と「やまなし」 の違いは何ですか。
4, 「やまなし」 の主題は何ですか。
「五月」と比較することで「十二月」の特徴・イメージをつかむことが容易にできる。
逆に言うと、対比構造が明確なだけに、 主題も画一化してしまったが、 以下の作文を書く子もいた。
◆やまなしとかわせみの対比の勉強をしたりしてクラムボンよりも、 やまなし の方に関心を持つようになりました。 それは対比の勉強をした時に、 やまなし のよさをひき立たせるためにかわせみと対比させたことが分かったからです。 なぜ、作者はやまなしをひきたてようとしたかと疑問に思いました。これは 「やまなし」の「人のために生きる」という生き方を読者にもしてもらいたく て、わざわざ作者が対比をさせ、ひき立たせたのだと思うようになりました。
⑥ ;『一つの花』(光村4年上)
1, 「おまんじゅう キャラメルチョコレート」と対比されている言葉は何ですか。
2, この2つはどんな点で対比されていますか。
1, この箇所(1場面後段) で対比されている言葉は何ですか。
2,ゆみ子とお母さんはどんな点で対比されていますか。
1, ; 二場面で対比されている言葉は何と何ですか。
2, ゆみ子とお父さんに関係する対比は何ですか。
3, この中で一番大切な対比は何だと思いますか。
1 , 一・二場面と三場面ではどんな点が違いますか。
2,たくさんのコスモスに囲まれたゆみ子は、何を表していますか。
「対比」という用語を繰り返し使うことにより、1・2場面と3場面の対比で は最高30もの対比を見付ける子がいた。
そして「たくさんのコスモスに囲ま れたゆみ子」を「命を大事にして元気に生きているゆみ子」「たくさんの喜びに 包まれているゆみ子」 などと関連づけることができた。
◆,当時の研究のまとめ
①「対にする発問」はそれ自体では機能しない。対にした後、 どうするか」によってその適否が決まる。
② 文章の細部にまで意識させるには、 2文比較が良い。 例 「食べました」と「食べてしまいました」
③「同じ対比」 を検討させる発問には、 対比をより多く列挙させる機能と、 対比を類型化する機能とがある。
④ 「1番大切な対比」を選ぶ時には、 比較しながら (まとめる) という思考が 働く。
したがって対比をまとめる (抽象化)することが容易になる。
⑤ 「対比の効果を考える」ことを直接ねらった実践も、表現技法を学ぶ上で必要である。
⑥「対比」という用語を用いることは、発問のゆれ(言い換え)がなくなる。 他の作品の学習にも使える、 という利点がある。
⑦ 今後は、次のような広い視野で研究を深めていきたい。
ア,文章構成・段落構成の解読手段として、説明文教材にも適用する
イ,対義語・類義語など 「言語事項」の指導との関連を考える。
ウ, 「比較」 「類推」 などの基本的な思考方法を、 他の教科にも適用する。
※詳細な子供の意見は見つかっていません。研究論文の骨子だけ残っていました。
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