対比は奥が深い (6)
「理解」の活動には、① 確かな読み(解読);② 豊かな読み(解釈)の2つの方向がある。
私は、「解読」 (確かな読み) から 「解釈」 (豊かな読み)へ迫る読解指導の手立ての研究について意識し、以下の理由から 「対比」に着目してみたいと考えてきた。
①「分析批評」等の授業実践の中で 「対比」 が有効だった事例がいくつか挙げられている。
②その一方、「対比」という言葉は、 国語科として明確に位置づいていない。逆にいうと、さまざまな意味で用いられている。(そのことを①〜⑤で示してきた)。
③私自身が「対比」を意識した実践の中でその有効性を感じることができた。その経験則としての有効性を理論的に整理し、掘り下げてみたい(1)先行研究、手元にある『国語科重要用語300 の基礎知識』 『文学教育基本用語辞典』には「対比」の項目はない。「分析批評」関連の書籍でも「対比」を分析用語に入れていないものも多い。
しかし、「対比」の考え方は、 「分析批評」の実践とは関係なくても、教材分析の段階で広く使われ、 構造図や、 矢印によって示されることが多い。
西郷竹彦氏は「対比」を「反復」 とともに強調の方法として小・中学校の段階 でしっか身につけさせたいと述べている (『文芸の授業 理論と方法』)。
深川明子氏は「対比」 を 「重要な分析の技法の1つ」 であるとともに「イメージ形成においてもきわめて有効である」と述べている(『イメージを育てる読み 』1987年初版)。深川氏は同書の中で 「対比の授業は今後もっときめ細かく研究が 積み重ねられる必要がある」と指摘してから30年以上が経つ。その後の「対比」の研究はどうであろうか。
(2);用語整理・ 概念規定一般的な「対比」の意味は、①比べること②比べて違いをはっきりさせることである。さらに心理学用語としては 、「違った性質(または量)のものを並べると、 その差異が著しくなる現象」の意味として用いられる。;読解指導で用いられる場合の 「対比」は、むしろ「比較」に近い。比較すれば相違点が出たり、類似点が出たりする。 どちらの読みとりも大切である。そこで、次のように整理してみた。
① - 1 比べることで違いをはっきり読みとる。(解読)
①-2 比べることで似ている点をはっきり読みとる。(解読)
②「対比」によって強調されるイメージや主題をつかむ(解釈)
③「対比」という効果的な表現技法を学ぶ。(表現効果)
(3)発問への具体化「対比」 には、対にする (対を見つける) 活動と、 二つを比べる(意味を考える)という活動がある。
これを発問の形で具体化してみる。
①対にする※Aと対比 される言葉はどれか。※対比される言葉はどれとどれか。
②~1 二つを比べる※AとBの違いはどこか。;※AとBの似ている点はどこか。
②~2 二つを比べ、対比の基準を問う。※AとBは、どんな点で対比されているのか。
※A-Bと同じ意味の対比はどれか。
②-3 二つを比べ、対比をまとめる
※ これらの対比をまとめると、 何と何と言えるか。
※この対比は何を表しているか。
※1番大切な対比はどれか。
②-4 二つを比べ、対比の効果を考える
※このような表現には、どんな効果があるか。
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