国語の「登場人物」と「発問」を考える
現行の学習指導要領では「登場人物(人物像)」については、次のような指導内容になっています。
1・2年場面の様子や登場人物の行動など、内容の大体を捉えること。場面の様子に着目して、登場人物の行動を具体的に想像すること。
3.4年登場人物の行動や気持ちなどについて、叙述を基に捉えること登場人物の気持ちの変化や性格、情景について、場面の移り変わりと結びつけて具体的に想像すること
5.6年登場人物の心情などについて描写をもとに捉えること人物像や物語などの全体像を具体的に想像したり表現の効果を考えたりすること。
・・「捉える」とはどうすることか。「想像する」とは、どうすることか。
具体的には書いてないので、指導者によって授業は多種多様です。
この指導内容のまま「〜しよう」と板書したところで、子どもは何をしたらいいのか分かりません。
指導内容が曖昧なら、評価基準も曖昧なので、子供たちは達成感も得られません(教師も達成感がないでしょう)。
だから無内容な目当てを板書する必要はないのです。
◆どんな人物かを捉えるために「どんな人物ですか」
◆どんな気持ちかを捉えるために「どんな気持ちですか」
◆行動の意図を捉えるために「なぜ、そうしたのですか」
と直接問うても、なかなか深まりません。
だから発問の工夫が求められました。
聞きたいことを直接聞くなというのが「間接性の原理」です。
「どんな人物か、どんな気持ちか」を捉えるために、別の聞き方をしろということです。
登場人物の物理的・心理的に置かれた状況を理解するために求められたのが「知覚語で問え」です。「五感を問え」とも言います。
「何が見えています」「何色ですか」「どこにいますか」「○○はいくつありますか」「何が聞こえていますか」などを問うことによって、読者は、その作品世界に入り込み、登場人物になったつもりで仮想体験を始めます。
今なら、「VRのゴーグルをはめて、作品の世界に自分も入り込む」という言い方が分かりやすいかもしれません。
バーチャル体験、つまり「仮想自己」の「追体験」です。同化体験とも言います。
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絵から文へ、そして、文から絵へ。私が提唱する国語トレーニングでは、同じ内容のものごとを、絵と文の両方で表現できるようになることを目指します。絵から文、文から絵と操作することを、『媒体変化』と言います。媒体変化を実際にやってみると、その人が、何をどこまで認識できているかが、はっきりとわかります。絵を見て読み取れなかったものは、文章に変換できませんし、文を読んで理解できなかったことは絵に描けるわけもありませんからね。つまりは、理解力が磨かれていく。自分が何をわかり、理解できているのか。どこがわかっておらず、理解できていないのか。これをはっきり認識することは、何かを学ぶうえでの第一歩です。絵から文、または文から絵と置き換えていく作業とは、いわば『理解のプロセス』のレッスンです。提示された内容を小さく分解して、その一つひとつを読み解いていき、わからないところが出てきたらそこは入念に読み解き直し、すべての要素を『わかる』にしていくわけですから。
『ドラゴン桜2』桜木建二が教える 2020教育改革 絵から文、文から絵のトレーニングの効果とは?
https://www.asahi.com/edua/article/12329728
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・・・作品の内容を、絵にして示すには、曖昧な部分を確定しなくてはいけません。
絵を作成するための指示が、先に述べた「見えを問う、位置を問う、数を問う」などでした。
多くの方は「ドラゴン桜のアドバイスって、向山先生の発問のことだ!」と思われたことでしょう。
「見えを問う、位置を問う、数を問う・・・」
浜上薫先生が、「絵画的発問群」と名付けた通りです。
向山先生の発問は、バーチャル体験を促して、作品世界のイメージを確定させものだったのです。
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