対比は奥が深い②
平成25年の学力調査Aで、対比を扱った問題があった。( )内は選択問題である。
◆とっぷりと後ろ暮れゐし焚火かな 松本たかし
〇 日がすっかりしずんで周りが暗くなっている様子が目にうかぶね。
〇 そうね。そのことが「とっぷりと」という言葉に表れているね。ここでは、焚火とその周りの景色とを、(対比して・分類して) いるように思うわ。
〇 そう考えてみると、焚火の周りの景色によって、(焚火の明るさ・夜の暗やみ)がいっそう強調されて、その様子がはっきりと想像されるね。
文科省が「対比」という用語を選択させている。
ここで使われている「対比」は強調をもたらす表現方法の工夫だ。
最後の選択は少し意地悪だが、切れ字の「かな」があって「焚火」が強調されている俳句なので、対比によって強調されるのも「焚火の明るさ」である。
このような作品分析が展開される授業をしていないと、答えが導けない。(記号選択問題だから、分からなくても何とかなるが)。
しかも、6年4月の調査である。
6年生になるまでに、「この俳句は、○○と△△とを対比している」という言い方が教室で飛び交うことが前提になっている調査問題だ。
5年までに、「対比」の用語を使って子供が自分の解釈を展開すする学級が、どれほどあるだろうか。
TOSSの国語の授業が、文科省の求める本流の授業なのだということが、よーく分かる。
「対比」は、比較する作業であり、比較によって得られる強調効果である。
何と何が対比されているか対比によって何が強調されているか。
この「何」の部分が、文中の言葉である場合と、文中にない言葉の場合がある。
文中の言葉を根拠にして、文中にない言葉を引き出すのが「対比」とも言える。文中にない言葉を引き出す際に必要なのが「抽象化の力」と「語彙力」だ。
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