「三年とうげ」(3年光村)
「転んだら三年しか生きられない」という三年峠で転んでショックを受けているおじいさんが
「1回転べば三年生きられる」と解釈したトルトリの助言により、
何度も転んで「めでたしめでたし」となるお話。
「お話のはじめとおわりでだれが、どのようにかわったを考えよう」というめあては学習の手引きの通りだ。
手引きに従って、おじいさんの行動を追っていくのはいいのだが、ある授業者は「気持ち」も尋ねた。
そんなこと手引きに書いてないのに、「気持ちの変化」をメインにしてしまったのである。
「登場人物の行動や様子を表す言葉に気を付けましょう」とあるのに、ほとんど条件反射のように「気持ち」を考えさせてしまうことが起きてしまうのだ。
今回は民話調の単純な話なので、登場人物の詳しい心情表現はあまりない。
たとえば
A:石につまづいて転んでしまった
B:病気になってしまった
の2つの「様子」の間には、次のような、おじいさんの行動が描かれていて、これが「気持ち」の根拠になる。
【石につまづいて転んでしまいました】
①真っ青になり、がたがたふるえました
②おばあさんにしがみつき、おいおいなきました。
③「ああ、どうしよう、どうしよう。」
④「あと三年しか生きられぬのじゃあ。」
⑤ごはんも食べずに、ふとんにもぐりこみ
【病気になってしまいました】
百歩譲れば、①~⑤のような行動表現から気持ちを想像する学習は進めやすい。
◆これらのおじいさんの行動から、心情を自分の言葉で表現させる
◆行動を根拠に心情を発表させる
は、可能だ。
しかし、「気持ち」より大事なのは、本文に書かれた「行動や様子を表す言葉」だ。
書いていない気持ちを言わせるのは、「しょせん想像を言わせているだけ」という自覚が教師には必要だろう
(それにしても、「悲しい」「不安」のような言葉で片づけていいのかなと迷ってしまう)。
ちなみに、私は介入させてもらって、「転んでしまいました」「病気になってしまいました」の「しまいました」は、どんな感じがするかを尋ねた。
すると、「悲しい感じがする」「なりたくないのに、なっちゃった感じがする」のような意見が出た。
「~しまいました」という表現は、失敗とか後悔とか、ネガティブな感情を誘発する。
そういう表現に着目するのが、国語の授業だと思う。
◆「がたがたふるえる」「おいおい泣く」のようなオノマトペ
◆「すっかり青くなり」の「すっかり」のような強調の副詞、
◆「しがみつき」のような、特別な動詞、
なども着目させたい。国語の授業なのだから。
授業の後半は、「トルトリ」が現れて、おじいさんがどう変わったかを考えさせていた。
ここは文章全部を読むと、ややこしいので、おじいさんのセリフだけ取り出すとよい。
おじいさんのセリフだけを抽出して、そこに含まれる気持ちを想像させると、変化がつかみやすい。
「どうすればなおるんじゃ」・・・・・・・・・・不安・焦り
「ばかな。わしにもっと早く死ねと言うのか」・・ 不信・怒り
「うん、なるほど。なるほど」・・・・・・・・・納得・安心
民話の構造である【はじめー中―おわり】あるいは【起承転結】を理解させると、話の展開を読み取ったり、物語創作の手助けになったりできる。
◆お話の最初と最後で大きく変わったのは「おじいさん」。
◆事件を解決したのは、中盤で登場した「トルトリ」。
起承転結で言うと、次のようになる。
【起】 主人公の登場
【承】 事件(ピンチ)発生
【転】 助言者の登場
【結】 事件の解決(めでたしめでたし)
※「助言者」と書いたのは、前道徳調査官の横山利弘氏の資料分析で問題解決の役割を担う人物を「助言者」と呼んでいることを利用した。
ある人物がトラブルを起こしたところに、助言者になる人物が現れて事件が解決するというのは、単発のアニメでも道徳資料でもよくあるパターンである。
「めでたしめでたし」の真逆の悲劇もある。これが「罰あたり・自業自得」系だ。助言者の忠告を聞かなかったから悪いことが起こる。
事件を起こした人物が主人公になる場合もあれば、事件を解決した人物が主人公になる場合もあるので、『三年とうげ』の主人公は、「おじいさん」「トルトリ」の両者が出ておかしくない。
トルトリの「助言」は、「知恵」と言ってもよいし「とんち」と言ってもよい。
よくある物語の事件解決の方法としては、次の3つが主流かな。
①「腕力」・・・鬼退治のような「退治」系。「力比べ」と言えるか。
②「勇気」
③「知恵」・・・こちらは「知恵比べ」と言えるか。
道徳資料の場合は「腕力」で問題を解決することはない。
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