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December 27, 2022

「教師が教える授業」から「子どもが学ぶ授業」へシフトするか

 来年の日本教育技術学会に誰に来てほしいかというアンケートで私は、奈須正裕氏(上智大学)を挙げた。

 その奈須氏が提出したワーキンググループ 資料2を読むと、なるほど「令和の日本型学校教育」のあり方がよく分かる。

教科書・教材・ソフトウェアの在り方ワーキンググループ(第6回)配布資料:文部科学省

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/089/siryo/mext_00008.html

 春日井市立高森台中学校の例も挙げてある。

  JAET春日井大会での堀田先生、高橋先生、佐藤先生の見解と重なるので、今はよく分かる。

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3-2 端末とクラウドを日常的に活用した授業づくり

続いて、愛知県春日井市立高森台中学校長の水谷委員より、端末とクラウドを日常的に 活用した授業づくりについて報告がなされた。

ICT の導入により、教師からの指示や説明は最小限となり、子どもの活動時間、扱うデ ータ量、コミュニケーションが増加し、また活動は複線化して、子どもに多くを委ねるこ とができるようになった。教師が教える授業から子どもが学ぶ授業への変化である。

具体的には、まず、授業に必要な情報をクラウドを介して提供することで、子どもたち は単元の見通しをもって学べるようになる。

すると、各自で「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」を進められるようになる が、その際、チャット等も含めたクラウドコミュニケーションツールの制限のない活用により、子ども同士、また教師と子どもの間で、いつでも自在に「途中共有」「途中参照」 「他者参照」をすることができ、これが個々人の学習の促進や自発的な対話・協働による 思考の深まり、適時での教師からの励ましや助言等を可能とする。

このような経験を積むことで、一つ一つの活動が短時間でできるようになってきた。 また、一人ひとりが自分にあった方法を選択して学べるようになっていく。

学習状況は、子どもの手で随時クラウドにアップされる。教師はもとより子ども自身も 学習状況を的確に把握することで、さまざまな気づきを得ることができ、学習の自己調整 につながっている。

さらに、子どもたちは授業での経験を日常の活動やコミュニケーションにも活用し、学 級委員や生徒会の活動も活発になってきた。

このように、端末・クラウド活用による授業づくりに際しては、クラウドコミュニケ ーションツールの制限のない活用により、さまざまな情報共有や学習状況の可視化が可能 になったこと、またそれにより、教師と子どもの情報活用能力が向上したことが大きい。

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・・・今年の春、奈須氏の著書を読み、東洋館出版のオンラインセミナーで奈須氏と合田哲雄氏の対談を視聴したときはピンと来なかった。

 結局、自分の中にバイアスがあって「ICTが溶け込む一斉授業」でいいのだという思いから抜け出せなかった。

 奈須氏の著書では、山形県天堂中部小学校の実践「単元内自由進度学習」が取り上げられており、そのオリジナルは1980年代に愛知県東浦町立緒川小学校で開発された、とある。

 この緒川小学校には私も大学時代、昭和60年に視察したことがある。しかし緒川小の実践は県下で全く波及することはなかった。だから自分の中で「自由進度学習」のような取り組みは、特別な学校の実践であって自分には縁のないものという思いが強かった。

 半信半疑だった自分の気持ちを言い当てたように奈須氏が書いている。

◆ それでもなお、いまひとつ実感がわかない、確信が持てないという人もいるでしょう。天童中部小のようなユニークな実践だからこそ現れた特殊な姿ではないか、という疑問をお持ちの方もいるかもしれません。特別な学校だから、優秀な子供だからという、よくある物言いです。正直、私は聞き飽きました 『個別最適な学びと協働的な学び』P110

 

・・複線型授業はこれまでも(それこそ40年以上前から)先進的に取り組まれてきたが、定着はしていない。それはあくまで先進的な学校の取り組みでしかなかった。

 「複線型授業」「自由進度学習」「自己決定学習」「自己調整学習」に全ての学校で取り組めるのか、本当に浸透するのか、「パラダイムシフト」に対する各校・各自治体の本気度が問われている。

 先の資料に次のように書いてある。

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◆【学校改革の方向性】

・学校は、子どもたちを自立的な学習者として育てられていないのではないか。GIGAス クール構想がもたらした新たなインフラを生かすことにより、教師による一斉指導から 脱し、学びを一人ひとりの子どもに委ねられるとともに、子ども同士、そして教師も、 いつでもクラウドを介してつながれるようになったので、自由な選択の下での多様な授業の組み立てが可能となり、子どもたちが授業を楽しいと感じるようになってきた。

◆自由進度学習

単元内自由進度学習は、単元指導案に相当する情報を子どもに開示し、単元の学習計画 をまるごと一人ひとりの子どもに委ね、子どもが自立的・個別的に学習を展開する教育方法である。我が国でも、すでに40年以上の実践の蓄積があるが、従来はアナログで行われていたため、学習材の準備等の負担がネックとなっていた。GIGA スクール構想に伴うインフラの変化により、この点が飛躍的に改善され、実践が広がりを見せている。

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・・・とはいえ、明治図書の月刊誌が特集を組んだように、令和の日本型学校教育を目指して「子供主体の授業」を試みた多くの先生が、うまくいかなくて困っている。

 「振り子の揺り戻し」になるか、「パラダイムシフト」が起こるのか、今の自分にはよく分からない。

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