~関根眞一著(教育開発研究所)~
この時期になると、謝辞を述べる保護者もいるが、手厳しい保護者もいる。
手厳しい保護者というのは
「最初は我慢していたけど、もう我慢の限界なんだろうな」
「最初は期待していたけど、もう落胆ばかりなんだろうな」
と思う。
日々忙しい先生に保護者対応のスキルまで求めるのは酷だ。
ただ、そのスキルがないために苦情が減らず、保護者を味方に付けられないのだとしたら損失は大きい。
対応が悪い教師・対応を知らない教師は、保護者を怒らせる。あるいは失望させる。
そうならないために、「未然防止」として、少しは知っておくと良い。
著者の関根氏は苦情・クレーム対応アドバイザー。
裏表紙には、本書の肝である2つの言葉が提示してある。
①ひとまずすべて「苦情」として受け止めることができいれば対応の失敗は最小限となる。
②言わずにいられない保護者の気持ちの「落としどころ」が見つかるかどうかがポイントになる。
・・・①は「最悪を想定する」の意味。保護者の電話や来校する理由を軽く考えない方が誤解がなくて済む。
そして②はわざわざ電話や来校した苦労に報いる結果を出さないと、さらに不満が増えてしまうという意味。「電話してよかった・来校してよかった」と思ってもらえれば、それ以上悪い方向に進まない。
保護者が不満を持つ多くの原因は学校サイドにあるとして、次の11点を挙げている。P34
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1、教師が保護者の話を最初から真剣に聴かないことがある。
2、申し入れは嫌なものだと頭から否定している教師がいる。
3、相手の申し入れを苦情と考えていない。
4、苦情対応の能力が、教師は一般人より劣ることを認めたくない。
5、話の腰を折り、言いわけや正当性を主張する。
6、詳細を調査しないで話を終結させようとする。「時間をいただけますか」が言えない。
7、時系列に添った正確なメモをとらない。
8、多少でも自分に非があると、独力で穏便に解決しようとする。
9、上司への報告が遅く、対応が自分の判断能力内に留まる。
10、事が大きくなるまで幹部に相談をしない。
11、苦情の対応事例等を学ぶ場がない。つくらない。研究しない。
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・・・我々教師は苦情・クレーム対応専門の職員ではないから、その対応スキルに特化して技量を磨く暇はない。
ただし、この11項目の指摘を真摯に受け止めるべきだろう。
なお、次の様子は、学校ではよくある光景だ。
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多くの教師が保護者を、管理職のいる職員室近くの応接室ではなく、教室に連れていき、二人きりになる。さらに「どこに座りましょうかなどと、保護者に尋ねてしまう。通常、担任がセッテイングしておくべき場の設定でさえ決定できず、挙げ句は主導権を保護者に委ねるときもある。保護者も、校長室の隣の応接室なへ通されたなら、軽々しい発言はつつしみ、いい加減なことは言えないし、悪態もつけなくなるだろう。
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この後、保護者が座ったらお茶ぐらい出すべきで、お茶は問題解決の最適な小道具なのだと書いてある。
私もかつて明らかに問題がありそうな懇談の場合は校長室を使わせたが、担任が自分の判断で教室で済ませることが多かった(しかも担任1人で)。
今思えば、明らかに問題がありそうな場合は2名で聴くのが基本だろう。
また、私自身、担任として1人で自宅を訪問したこともあるが、明らかに問題がありそうな場合は2名で行くのが基本だろう。
自分自身もそうだったから自戒を込めて書くが、何でも1人で済まそうとすると事態が悪化する。
事態が悪化してから、管理職に報告されても、手が打てない。
だから、先の「多少でも自分に非があると、独力で穏便に解決しようとする」「上司への報告が遅く、対応が自分の判断能力内に留まる」「
が大きくなるまで幹部に相談をしない」は、まさにその通りだと思う。
今年度、保護者対応で苦労された先生方、お疲れさまでした。
みんなで事例を共有して、苦しむ教師を減らしていきましょう。
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