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December 02, 2023

「伝記」についての考察(3)

 ~宇佐美寛氏の「言葉の解釈規則(コード)」を踏まえて~

 5年の教科書(光村)の『やなせたかし・・アンパンマンの勇気』
 やなせたかしの「困難」をマーキングしていくと、やはり、その苦労に感じるものがある。
・5歳で父が病死して、おじ夫婦に引き取られる。
・さみしさや辛さを吐露できず内気な少年になる
・就職して1年で徴兵された。
・戦場で飢えに苦しむ
・帰国すると弟が戦死していた
・漫画家になったが、なかなかヒット作が出ない
・・・これらのすべての逆境が、「アンパンマン」につながっている。
◆さまざまな逆境があったから「アンパンマン」が生まれた。
◆逆境がなければ「アンパンマン」は生まれなかった。
 共感しなくても、感動しなくても、この流れは理解できる。
 筆者はこの流れになるように仕組んできたと考えられるからだ。
 宇佐美寛氏は「だから悪い」を例にして次にように言う。
 「だから わるい」の文章が指し示している事実を知らしめるのが授業である。しかし、感動〈共感〉を目指すべきではない。感動させることを目指すから、どこまでが文章に書かれている事実かには注意しなくなる。 「問題意識集3」P113
 また、林家三平の「新作落語」を例にして次のように言う。
 笑わない伝統派であっても、この落語のどんな特性がおかしくて他の客が笑っているのかは知らねばならない。三平が、どこをおかしく作ったつもりなのかは知っていなければならない。知っていなければ批判する資格はない。p108
 宇佐美氏は、この部分で「言葉の解釈規則(コード)」の説明をしている。P108.109
 要するに、この落語で笑わない人でも、そのようなコードは知っていなければならない。どこがおかしいのかは知っていなければならない。しかし、そのコードは採用はしなくてもいいのである。(中略)
 コードを認識することと採用することとは、区別すべきである。国語科の読解指導で指導するべきことは、コードを認識させることであって、採用させることではない。
 20代で「解釈コードの増殖」などの論文を読んだ頃は、十分理解できていなかった。
 今、やなせたかしの伝記にあてはめて、ようやく腑に落ちた。
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 共感しない読者であっても、この伝記のどんな特性に他の読者が感動しているのかは知らねばならない。筆者が、どこを共感ポイントに作ったつもりなのかは知っていなければならない。知っていなければ批判する資格はない。
 国語科の読解指導で指導するべきことは、筆者のねらう共感ポイントを認識させることであって、共感させることではない。
=============== ===
 これまでの自分なら「筆者はこの流れになるように仕組んできたと考えられる」のような推定はしなかった。そんなことはどこにも書いてないからだ。
 しかし、宇佐美氏の論文を読み返してみて、筆者がどこを共感ポイントにしたのかをきちんと理解し、言語化すべきだと思った。
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