〜 語彙と感情表現 〜
なんでも「ヤバイ」で済ませてしまう若者の語彙に、永田氏は異議を唱える。 P147〜151
◆全てが「ヤバイ」という符牒で済んでしまう世界は、便利で効率がいいかもしれないが、その便利さに慣れていってしまう事は、実はきわめて薄い文化的土壌のうえに様々の種を蒔くことに等しいのであるかもしれない。
◆ある感動を表現するとき、たとえば「good!」一語で済ませてしまうのではなく、そこにニュアンスの異なったさまざまな表現があること自体が、文化なのである。「旨い」にしても、「おいしい」「まろやかだ」「コクがある」「とろけるようだ」などなど、どのように「旨い」かを表すために、私たちの先人はさまざまに表現を工夫してきた。それが文化であり、民族の豊かさである。
そうだね。
グルメリポーターが「うん、おいしいです」と言うだけでは、明らかに失格だよね。
◆短歌は、 自分がどのように感じたのかを表現する詩形式である。歌を作り始めたばかりの人の歌には、悲しい、嬉しいと形容詞で、自分の気持ちを表そうとするものが圧倒的に多い。作者は「悲しい」と言うことで、自分の感情を表現できたように思うのであるが、これでは作者が「どのように」悲しい、うれしいと思ったのかが一向に伝わってこない。
◆(斎藤茂吉の「死に近き母」には)悲しいとか寂しいとか、そのような茂吉の心情を表す言葉は何一つ使われていないことに注意してほしい。にもかかわらず、私たちはそのような形容詞で表わされる以上の、茂吉の深い内面の悲しみを感受することができる。考えてみれば不思議な精神作用である。文章の上では何も言われてない作者の感情を、読者はほとんど何の無理もなく感受することができているのである。
◆ 短歌では作者の最も言いたい事はあえて言わないで、その言いたいことをこそ読者に感じ取って もらう。単純化して言えば、短詩型文学の本質がここにあると私は思っている。
三田誠広も同じようなことを書いていたはずだと探してみた。
「『驚いた』と書いたら小学生の作文だ」と書いてあった。
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小説の初心者はですね。どうも「描写」ということができないんですね。
驚いたということを書く時に「驚いた」って書いちゃうんですね。「私は驚いた」「彼は驚いた」とか、「少年は物音に驚いた」とか書くんです。
これは説明にすぎないんですね
小説というものは「表現」によって進行していくものです。だから、主人公が驚いたというシーンでは、どういうふうに驚いたかということを、できれば視覚的に読者に訴えるようなイメージで書く必要がある。
「天気の好い日は小説を書こう」三田誠広 朝日ソノラマ (P62)
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三田氏は「説明しないところが俳句の極意」とも書いている。
「心情」を直接表現せず、行動描写や情景描写で示している。
だから「描写」を読み取れ、と言うわけだ。
かつて言語技術教育学会で市毛先生が「小説は『描写』の読みが大切だ」というようなことを言われたが、その時はピンとこなかった。
『描写』を意識し始めたのは、1998年にこの本を読んでからだ。
『描写』を削って要約した文学作品は何の味もなくなるのだと考えるようになったのである。
その頃から、小学校の作文指導でも「楽しかったです」で終わらないようにと声をかけてきた。
なんでも「すごい」で終わらせず、その場に最適な言葉を考えさせてきたが、語彙の指導はそんなに簡単ではなかった。
さて、今回、「ヤバイ」が出てきたので、この単語こそ「ヤバイ」と思った。
◆大造じいさんは銃を下ろした時、なんと思ったでしょう・・「やばい」
◆兵十は銃を落とした時、なんと思ったでしょう・・・・・「やばい」
という解答があり得るからだ。
褒め言葉もけなし言葉も「やばい」、
感激するときも後悔するときも「やばい」。
「すごい」以上に、威力のある単語だ。
自身の微妙な感情を「やばい」「すごい」「うざい」「別に」「楽しかった」のような一言で済ませてはいけない。
分かっていても、なかなか手ごわい。
ついでながら「good!」で思い出した。
学校に送られてきた「英語情報 2017冬号(日本英語検定協会)」に「CLASROOM ENGLISH!!」の連載があり、大木優喜子氏がほめ言葉を紹介していた。
日本語でもこれくらいのバリエーションでほめていきたいと思い、キープした。
いつも「すごい」「上手」「がんばったね」だけでは、おそまつであることが、よく分かる。
(1) Good(良い)の他にも使える一言褒め言葉(Goodの類義語集)
Very good! とても良い!。 Teriffic! 大変良い。
Fantastic! 素晴らしい!。 Well done よくできました!
Great! とても良い。 Wonderful 素晴らしい!
Excellent! 優秀!。 Close 惜しい!
Awesome! とても良い Superme! 素晴らしい!
Perfect! 完璧! Wow! わあすごい
・・・12のバリエーションだが、日本語訳だけみると同じものがあって7種類になってしまう。
そこには微妙な差異があるのだろう。
①よし ②すごい ③うまい ④さすが ④すばらしい ⑤完璧
⑥上手 ⑦驚いた ⑧感激した ⑨素敵 ⑩最高 ⑪合格 ⑫惜しい ⑬あと少し
で13種類か。
(2) Good job(よくできました)の他にも使える表現
Much better! 前より大変良くなりました。
keep up the good work! その調子でがんばってください
Thats great idea! とても良いアイデアですね。
I know you can do it! あなたならできます
Great teamwork! とてもよいチームワークです
Thats an interesting point 面白い点ですね
Good try! よい試みです。
Great effort! 大変良い努力です。
Thats a good guess! 良い推測です。
・・・コメントは、これぐらい微細でありたい。
①努力を褒める ②結果を褒める ③成長を褒める ④試みを褒める ⑤発想を褒める ⑥協力を褒める
などが観点になるか。
(3)生徒の具体的な態度、能力を褒める表現
※生徒一人一人を褒める時には、具体的に何が良かったのかを示す。
You make lots of effort to speak English in class!
あなたは授業で英語を話す努力をしています。
Your writing skills have improved so much!
あなたのライテイング能力はとても進歩しました。
Im impressed by your speaking skills!
私はあなたのスピーキング能力に感心しました。
(4)その他の生徒一人一人を褒める表現
You work very hard!
あなたはとても一生懸命勉強しています。
You worked very hard in class today!
あなたは今日の授業でとても一生懸命勉強しました。
I love having you in my class!
あなたが私のクラスの生徒でうれしいです。
・・・(3)はピンポイントの褒め方、(4)は総括した形の褒め方と言えるだろうか。
通知票の所見みたいなレベルになってきた。ありきたりの褒め言葉ではなく、その場でのその子に対するオリジナルな言葉かけをしていきたい。
「あなたは努力や成長をしています」という客観パターンと「私はあなたの努力や成長に感心しています」の主観表現のパターンがあることが分かる。
(5)クラス全体を褒める時の表現
※クラス全体を褒めることによって、生徒との間にチームワーク・統一性が生まれます。
Thank you for sharing your ideas!
みんなのアイデアを話してくれてありがとう。
(注 「おたがい意見を出し合ってありがとう」という意味かな?)
Everyone worked very hard today!
今日はみんなとてもよくがんばりました。
・・・授業のまとめや帰りの会の最後のお話でみんなに伝えたいメッセージという感じ。
熱い語りバージョンもあるだろうが、毎日のことだから、さらりと褒めるのが基本形だろうか。
語彙の「微差」は「大差」になる。
しっかり語彙のインプットに励みたい。
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