汎用的な読解スキル(2)
(2)物語作品の指導過程
①自分がどういう気持ちかを他人と比較する。
②自分と違う意見が存在することを知る。
③他者を通じて自分を知る・自分の感情を知る。自己表現のリスクを知る
これを「かわいそうなぞう」に当てはめると
①自分は「かわいそうだ」と思ったとして、他人はどう読んだかを知る。
②「仕方ない」というような自分と違う意見が存在することを知る。
③自分と違う感じ方をする他者(の割合)を通じて、自分の相対的な位置を知る
ということになる。
「かわいそうなぞう」については、 北川達夫氏の講演記録のメモが残っていた。
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例えば6年生の教科書に日本でも知られている「かわいそうな象」があります。
これを読んで20人が全員泣いたら,「ああ,みんな泣くんだな」と,それを教えるためにします。
6 年生ぐらいだと,たまに1 人ぐらい冷笑する子がいます。「動物がこんなことできるわけない。これは作り話だよ」と。
そのとき,19 人の泣いた子たちは「ああ,20 人いたら19 人泣くんだ」と,自分との共通性の感覚を知ること。
「20 人いたら1 人ぐらい笑う子がいるんだ」というのを知ること。
そして笑った子は,「ああ,20 人いると19 人は泣くのか。だけれども,自分はそれを笑ったんだな」という,その認識だけです。
この比較というのは,読解教育で文学をテキストにする場合,特に初等教育では絶対に行わなければならないこととされています。
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国際社会では、自分の常識と他者の常識は違うから、この話を読んで「泣くかどうか」は誰にも強制されない。
「自分は泣いたけど、この話で泣かない人もいるんだ」と知ることが、①や②にあてはまる。
③の自己表現のリスクというのは、ほとんどの子が「悲しい」と反応しているのに「悲しくない」と宣言することのリスクだと理解した。
「内心の自由=自分が思うこと」は誰にも制約を受けないが、批判や嘲笑を受けるかもしれない、しかし、そのリスク(批判)を恐れず、自分は貫いてほしいのだ。もちろんリスクを背負いたくなければ黙っていればいい。
「ごんぎつね」なら、「読後感(自分はどう思うか)」の対立もあり得るので、ぜひお互いの意見を交換してみてほしい。
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