視点の再考(2) 視点と動作の方向
大森修先生の『発問の定石化』では、「話者・視点」の前に、「位置」の指導がある。
「この絵は、どっち側から描いたのか」といった指導があって、「風船が下りてきました」「きつねがやってきた」のような方向性を検討させる指導がある。
「来る」と「行く」「あっち」と「こっち」「下ろす」と「上げる」などの表記の違いによって見方・見え方が違う。
読者が頭の中に描く世界がガラッと違ってくる。
①くまさんが ともだちのりすさんに ききにいきました。(はなのみち)
・・・「聞きました」というフラットな表現に対して、「聞きに行きました」と「聞きに来ました」がある。「くまさんが聞きに行ったんだよね」「くまさん」から「りすさん」に矢印を向ければ、移動の向きが分かる。
②まてまてまてとおじいさん おいかけていったら おむすびは~ (おむすびころりん)
・・・「追いかける」というフラットな表現に対して、「追いかけていった」と「追いかけてきた」がある。
「おじいさん」から「おむすび」に矢印を向ければ、転がっていくおむすびを追いかけるおじいさんの状況が分かる。作品を語っている位置から「おじいさん」も「おむすび」も離れていく。
③「ここへ おいでよう。」
「よし きた。くものくじらにとびのろう」
くじらは、青い青い空のなかを、げんきいっぱいすすんでいきました。
「おや、おひるだ」
「では、かえろう」
しばらくいくと、がっこうのやねがみえてきました。
くものくじらは、また、げんきよく、青い空のなかへ かえっていきました。(くじらぐも)
・・・「くじらぐも」は、「学校」に近づいてきて、子どもたちを自分の上乗せ、学校から遠ざかる。
そして、再び学校に戻り、子どもたちを下ろして去っていく。
「ここ」「すすんでいきました」「かえろう」「かえっていきました」が位置や方向を表している。
「話者」「視点」「作品舞台」といった概念の前に、言葉のもつ「方向性」を押さえておく必要がある。
それは、矢印を示すことで、明瞭になる。
※話者(登場人物)の「視点」を検討させることによって、次のような観点で「確かな読み」が成立すると鶴田清司氏は述べている
(『現代教育科学』1988年5月号)。
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・動作方向を明確化する(きた・いった)
・指示代名詞を意識する(こちら・あちら)
・描写の型を意識する(内の視点・外の視点)
・能動態と受動態のちがいに注意する(する・される)
・時制に注意する(現在形・過去形)
・文末表現に注意する(断定、推量、推定の助動詞等)
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・・・最後の「文末表現」は、登場人物の気持ちを外から語っているか、中にまで入っているかと極めていう重要な問題につながっている。
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