テスト問題の意味を教えないと汎用的な技能が身につかない。
テスト対策のテクニックとしてしまうと読解力の向上につながらない。
・・・ということは漠然とわかっていたが、どう説明していいか分からなかった。
生成AIに頼ってもいいけど、まずは文献で探ってみた.
「使える『国語』の考え方」橋本陽介 ちくま新書(2019初版)p114〜121
中学校一年生の学習指導要領「書くこと」の記述の引用があった。
ア 目的や意図に応じて、日常生活の中から題材を決め、集めた材料を整理し、伝えたいことを明確にすること。
イ、書く内容の中心が明確になるように、段落の役割などを意識して、文章の構成や展開を考えること。
ウ、根拠を明確にしながら、自分の考えが伝わる文章になるように工夫すること。
エ、読み手の立場に立って、表記や語句の用法、叙述の仕方などを確かめて、文章を整えること。
オ、根拠の明確さなどについて、読み手からの助言などを踏まえ、自分の文章のよい点や改善点を見いだすこと。
これらを踏まえて、次の5つを留意点として挙げている。
①どういう順番で論じるか
②指示詞や接続詞への注目
③事実と意見の区別
④主張と根拠の確認
⑤抽象的な記述と具体的な記述
「これらの項目は国語の試験問題でも頻繁に問われている」として、具体的な設問が紹介されている。
◆文章の一部分を切り抜いて、どこに入るかを問うのは、①の「どのような順番で論じるか」を問う問題
◆傍線部の理由を問うのは、④の主張に対する根拠を問う問題
◆②指示語や接続詞を問う問題については、以下のように詳しく解説されていた。
✳︎文章とは連続したものなので、個々の文章や段落を互いに関連づける必要がある。互いに関連づけられることによって、全体の意味が連続しているように感じられ、スムーズに理解することができる。そのような意味の連続性が見いだせないと、読者は理解することができなくなる。文章において、意味が連続していることを、言語学ではテクストの結束性と呼ぶ。
✳︎接続詞の分類とは、前と後がどういう関係でつながっているかを示す記号なのである。このため、教師側からすると、文の展開がどうなっているかを読み取れているかどうかは、接続詞を空欄にして埋めさせることによってある程度測ることが可能になる。
✳︎順接では、ある叙述Aから帰結として言えることを導入し、逆接ではそれに反対することを導入する。何か論を導入したら、それに対して説明が必要になるので、説明の接続詞が使用される。「論理的な文章」を書くためには、文の展開をスムーズに行わなければならない。
◆⑤抽象的な文言に傍線を引き、具体的な説明としてふさわしいものを問う問題は、選択肢の場合は、具体例を参考にしつつ、別の言い方に変えている。
・・・私なりに整理すると、テストでは次のような読解スキルを問うている。
だから、授業はこれらの読解スキルを磨くように展開しないといけない。
①論述の順番
②語のつながりを示す指示詞
③文のつながりを示す接続詞
③事実と意見の区別
④主張と根拠の区別
⑤抽象と具体の往復
指導と評価の一体化だから、授業で指導していないことをテストで問うわけにはいかない。
しかし往々にして、授業は授業、テストはテストになりやすい。授業とテストで同じ教材を使うから授業中、そのまんまテストの問題を扱うのちょっと難しいからだ。
授業とテストで別の教材を使うことがスタンダードになったら、汎用的な読解スキルの意識はもっと高まるだろうか。
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