今さら、大学入試問題の傾向に驚くなんて
昨夜8月24日、テレビ朝日で林修さんが、大学入試問題(国語)の解説をしていた。
大学入試センターが昨年公開した試作版を取り上げたのだが、出演者が複数の資料と本文との関連を問う問題に驚いていた。
「これが、国語の問題なの?」とも。
確かに、従来の「次の問題文を読み、設問に答えなさい」とは全く違い、情報量が圧倒的に多い。
しかし・・
出演者と違い、現役高校生は驚かないと思う。
それは、現行の小中学校の学力調査問題と同じようなタイプだからだ。
大学入試問題の変わりぶりに驚くなら、学力調査問題についても言及すべきだろう。
文科省は小中学生に、このような問題が解ける力を求めているのだから。
過去の自分のダイアリーを探ってみると、以下のように、2020年2月に書いていた。
(記述問題を入れるか入れないかで揉めていた時期だ)
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センター試験に代わって2020年度から行われる大学入学共通テスト(国語)は、これまで行われてきた全国学力調査問題と傾向が酷似していた。
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「大学入試が求めるもの」
①複数の種類の実用文を読ませる
②複数の文章を組み合わせて考えさせる
③大量の情報を処理させる
④最大200字程度の文章を20分程度の短時間で書かせる
⑤多くの条件を踏まえた文章を書かせる
⑥誰かの立場で文章を書かせる
難波博孝氏(広島大学大学院教授) 東京書籍発行「教室の窓 Vol.55」
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この点について難波氏は次のように指摘していた。
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実はこの方向性は、文科省がずっと追い求めてきたことであった。
小学校・中学校関係者の方ならすぐわかるだろうが、今まで10年以上行われてきた全国学力・学習状況調査のB問題と共通テストのここまで傾向はそっくりだからである。
文科省は10年かけて、共通テストの基盤をつくってきたといえる。
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2018年11月、朝日新聞に掲載されたコメントも、同様の趣旨だ。
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文部科学省はこれまでも高校までに教える内容を決める学習指導要領で「思考力、判断力、表現力」を身につけるよう学校に求めてきた。
だが、高校では大学入試に向けた勉強に重点が置かれがちだ。
そこで大学入試も、より学習指導要領の内容に合わせるよう大きく変えることにした。
朝日新聞 進学特集「20年度入試から共通テスト」2018/11/5朝刊
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授業を変えるためにゴールを決めた。
大学入試を変えるというウルトラCを決行したのだ。
さて、同様の指摘は「全国的な学力調査に関する専門家会議」の委員である田中博之氏も述べている。
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(2017年の大学入試試行調査は)全国学力・学習状況調査の問題と、とてもよく似ています。これは偶然ではなく、意図的に合わせているのです。つまり、記述力が全国学力・学習状況調査から大学入試まで一貫して問われる必須の学力になる、という画期的な出来事が起きようとしています。だからこそ、小中学校では一層B問題的な学力観を重視すべきなのです。
「総合教育技術」2019.11月号 P43
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・・・「記述力が全国学力・学習状況調査から大学入試まで一貫して問われる必須の学力になる、という画期的な出来事が起きようとしています」であったはずなのだ。
大学入試にまでつながる「PISA型読解力」が、土壇場になって混乱してしまったが、我々の意識を延期するわけにはいかない。
学力テストを、無理矢理やらされているテストと捉えているようでは、PISA型読解力が身につくわけがない。
学力テストで問われているような内容を授業の中で行わない限り、PISA型読解力向上は望めないし、国際的な場で日本の生徒は活躍できない。
さて、直近の文科省のPISA読解力の見解は?
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読解力についていえば、前回までは、「読解力」の定義は、書かれたテキスト(本や新聞など出所や校正・校閲がしっかりした書きもの)の中から「情報を探し出す」「字句の意味を理解する」「統合し、推論を創出する」「内容と形式について熟考する。」等でありました。つまり「従来型」の範囲内での「読解力」を問うものだったといえるでしょう。
今回からは、オンライン上の様々なデジタルテキスト(ブログ、投稿文、宣伝サイト、メール文)など、文責が誰にあるのか、出所が定かであるのか、校正・校閲がしっかりなされているのかなどが一見明確ではない文書について、「質と信ぴょう性を評価したり」「矛盾を見つけ対処したりする」ことも求めており、問題自体もその7割がPC使用型調査のために開発された新規ものとなっています。つまり、前回までの「読解力」の調査からは大きく変化しているということです。
OECDの責任者であるシュライヒャー局長も、現代社会においてデジタルの世界で求められる読解力に焦点を当てたこと、「フェイクニュース」が広がる世界での読解力がより重要な能力になっていることを明確に言及しており、今回のPISA調査は、これまでの「読解力」の範囲に加え「情報活用能力」をも求めていることは明らかだと思います。
初中教育ニュ-ス(初等中等教育局メ-ルマガジン)第373号(令和元年12月24日臨時号)
【矢野 文部科学省大臣官房審議官(初中教育担当) 特別寄稿】PISA調査2018とGIGAスクール構想
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この審議官の言葉が一次資料なら、求められる読解力は
1 「情報を探し出す」
2 「字句の意味を理解する」
3 「統合し、推論を創出する」
4 「内容と形式について熟考する」
5 「質と信ぴょう性を評価する」
6 「矛盾を見つけ対処する」
となる。これを
◆これまでの「読解力」に「情報活用能力」を加えたもの
◆新たな読解力(読解力と情報活用能力のハイブリッド型)
と呼んでいる。これがまさに新学習指導要領の先の課題ということになるだろうか。
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毎年、学力調査問題が公開されても、世間の関心は結果だけで、設問内容がどうかは問題にならない。実際、勤務する市内は学力調査の結果についての関心が薄く、多くの教員は、その問題内容を知らない。
大学入試問題になると、今回のようにマスコミの話題になりやすい。
保護者や大人社会が、いまだに国語のテストを「次の問題文を読み、設問に答えなさい」パターンだと思っているとしたら、そこはきちんと情報提供して、日本人の常識をバージョンアップさせてほしいものだ。
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