模擬授業検討会の覚書
2009年 井上好文先生からの学び
(1)授業開始直後、プリントを出す場面で混乱があった。指示されたプリントを多くの先生が探せなかったのだ。
見つからない人がいるという前提があれば、予備のプリントを持って黙って渡すという手も打てる。
(2)プリントが出せた人に「出せました」と言わせるなら、「見つからない人は手を挙げなさい」というフォローも想定できる(叱責ではなく、フォロー)。
(3)教室で「教科書P60」と指示するなら「忘れた人は手を挙げなさい」も想定できる(これも叱責ではなく、フォロー)。
(4)「教科書 P60 2番」
この一文にわずかな間を入れるのは、本来「教科書を出しーP60を開きー2番に注目する」の3つの行動を含んでいるからだ。
「一時に一事」の指示の原則を知り、なおかつ、この場合は3つの指示内容を含んでいると分かっていれば、わずかな間を置いて3分割して言える。
(5)「教科書 P60 2番」
SHOW-TELL が原則だから、教科書やプリントを見せながら話す。
見せながら話すから「視覚優位」の子にも対応できる。
(6)SHOWしてからTELLをする。このコンマ数秒の時間差が大事である。
(7)全員起立させての本読みなどは、全体の空気がよどんでいるなら行うのもいい。
しかし、そうでないならやる必要もない。なぜやるのかの意味が大事。
(8)「できた人は○をつけておきなさい」という指示を出すなら、「できていない人はどうするんですか?」
「確認の原則」「全員の原則」で言えば、「できた人は○」と指示すると同時に「できていない人は写します」を想定する必要がある。
実際は確認を怠って、できていない子への対応を見落としてしまうが、「ほぼ大丈夫」に当てはまらない数人の子から授業は崩れる。
細心の配慮をするというのは、さまざまな可能性を想定して手を打っておくことだ。
(9)「できました」は、高学年や中学生は言わない。
言わない子が多いと分かっているなら最初から言わせなければいい。
言わせるなら全員にきちんと言わせないと「教師の指示は守っても守らなくてもいい」と教えることになってしまう。
TOSSでよく見かける行為だからと形式的に取り入れても意味がない。
実際の授業はTOSSの模擬授業のようにスムーズには進まない。
空虚な褒め言葉・なんとなくの机間巡視は、授業行為の意味が意識されていない証拠。
すべての授業行為に「意味」を持たせる必要がある。
(8)「早い」「よくできました」「賢いね」などの褒め言葉は時間調整である。
「できていない子を叱るのではなく、できている子をほめる」
「できている子を褒めるのは、できていない子がやり終えるまでの時間調整」。
(9)教師が教材文を覚えるのは自慢するためではない。
教材文を覚えれば、それだけ子どもに目を配ることができるから。
大事なのは子どもに目を配ること。
黒板に書く・教科書を読む・1人の子の指導をする、といった場面で、いかに他の子の様子に目を配れるかが、教師の力量。
せっかく教材文を覚えても、子どもに目を配っていないなら何の意味もない。
(10)舘野校長先生の学校の公開研究で、椿原先生が授業されたときのことを思い出した。
子どものノートを次々に見ながらの「よし!」「そうか!」という言葉が印象的だった。
「よし!」の「し」、「そうか(よくがんばった!)」の「か」の部分がささやくような無声音だったからだ。
ささやかれる方が、集中する。
無声音を有効に使える方が、対応力があるのだと勝手に思っている。
(11)これまで、授業開始の15秒のポイントは「インパクト」だと思っていた。
しかし全く逆、基本は「低刺激」。
(12)だから、いくら高学年や中学生相手の授業でも、丁寧な授業を組み立てなければいけない。それが「易から難」の展開だ。
(13)授業開始前から授業は始まっている。
大事なポイントは、チャイムが鳴ったと同時に授業を始めるための「逆算」の思考。
担任ならば、前の授業の終了時に次の時間の用意を出させてから放課にする。
(14)専科の場合は早めに教室に行って準備を促す。
いつも準備の遅い子がいる。
いると分かっているのなら、手を打てばいい。
黒板を写すのが難しい子のノートには放課中にあらかじめ書き写せるように伝えておくという方法もある。
授業開始前に「所持物」の確認をしておくから、全員参加の授業が可能になる。
授業開始前から「確認の原則」も「個別評定の原則」も始まっている。
そして「褒める」行為=「激励の原則」も始まっている。
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